590.明察篇:異世界ファンタジーのレシピ
今回は「異世界ファンタジー」についてです。
現在の「剣と魔法のファンタジー」世界は、J.R.R.トールキンの『指輪物語』を土台にした
しかしそれだけが「剣と魔法のファンタジー」だと思ってしまうと世界が狭くなります。
異世界ファンタジーの創作レシピ
異世界ファンタジーの多くは「剣と魔法のファンタジー」です。
その基本は
『D&D』から派生してゲーム・ブックの『火吹山の魔法使い』、TRPGの『Tunnels & Trolls』、そしてわが国では『ロードス島戦記RPG』『ソード・ワールドRPG』が生まれました。
派生のほとんどが『D&D』を基にして作られています。
『D&D』が「剣と魔法のファンタジー」に与えた影響は計り知れません。
人間以外の人類が存在するか
『D&D』の基となったのはJ.R.R.トールキン氏の小説『指輪物語』です。
主人公は人間とは異なる人類、亜人ホビットのフロド。他にエルフ、ドワーフ、オーク、トロールなどの亜人が登場します。
とくに味方となるプレイヤー・キャラクターに亜人のエルフとドワーフが登場するのは、「剣と魔法のファンタジー」において現在ではすっかり「お約束」となっているのです。
敵モンスターとしてオークやトロールが出てくるのも半ば定番になっています。
また「剣と魔法のファンタジー」では最初の敵がゴブリンであることが多い。
これは多くのTRPGに登場して知名度があり、ホブゴブリンやトロールを中心として集団を形成しているため、最初の敵として重宝するからでしょうか。
人間であっても民族や種族が異なれば、亜人のような特徴が生まれてきます。
密林に住むアマゾネスは弓で獲物を狩猟する種族です。
あまり「剣と魔法のファンタジー」には登場しませんが、男勝りな女性キャラの第一候補になります。
他にも砂漠の民族や島国の民族などがパッと思いつくでしょう。
「SF」とも重なりますが、「剣と魔法のファンタジー」に宇宙人を登場させるのも「あり」です。宇宙人がファンタジーに出てきても剣と魔法にはなんの影響もありません。友好的な宇宙人もいるでしょうし、侵略を狙う宇宙人もいるでしょう。
「宇宙人」イコール「SF」と脊椎反射していませんか。異種族のひとつと考えられれば登場する民族や種族が増えるのでオススメです。
人類を超越する者が存在するか
人類が生態系の頂点に位置すると固定観念で決めてしまうのは、選択の幅を狭めます。
たとえば神や天使や堕天使、悪魔や妖魔、妖精、ギリシャ神話に登場する
これらに比べたら人類なんて蟻と大差ありません。
しかし人類は時として神や悪魔、巨人やドラゴンとさえ戦わなければならない状態に追い込まれます。もちろん普通の武器では傷ひとつつけられません。討伐するには超越者である神や悪魔の武器を使用するパターンが最も多いのです。
超越者を倒さなければならないとすれば、いかにして倒すのか。それを考えるだけでワクワクしてきませんか。
超常の力が存在するか
「剣と魔法のファンタジー」でありながら「魔法」という超常の力が存在しないというのはまず考えられません。「魔法」がないならただの「剣のファンタジー」になってしまいます。
「魔法」は大きくソーサリーやウィザードなどの魔術師が用いる「魔法」と、プリーストやクレリックなどの僧侶・神官が用いる「奇跡」に分けられます。
他にもサイキッカーつまり超能力者が用いる「超能力」も超常の力と言えるでしょう。
しかし「剣と魔法のファンタジー」において「超能力」が出てくることはかなり稀です。「超能力」はどちらかというと「SF」に属する能力になります。
ですがこちらも「超能力」イコール「SF」と直結してしまうと選択の幅を狭めてしまうので、「剣と魔法のファンタジー」で「超能力」を使ってもよいでしょう。
力の源としては「魔法」は「万能なる力の源泉マナ」を用い、「奇跡」は「神官の祈りの強さ」を用います。「超能力」は意識せずに発動させられるタイプと、集中力を高めて発動させるタイプに分けられるのです。意識を集中させないと発動させられない「超能力」は効果も絶大でしょう。
「超常の力」があるということは、社会インフラに組み込まれていることがありえます。
現実世界で「電気」という「超常の力」を用いて街灯を点けたり電気機器を使ったりしている。「剣と魔法のファンタジー」で「魔法」「奇跡」が基盤となって街灯を点けたり掃除や洗濯したりすることができるような社会インフラが整備されていても不思議はないのです。
「枯れた技術は普遍化しやすい」というのはなにも現実世界に限った話でなく、「剣と魔法のファンタジー」でも起こりえます。食堂の灯りが「マナ」で発光していても不思議はないのです。
空想動物やモンスターなどが存在するか
ドラゴンや巨人も空想動物だと言えなくもないのですが、強大すぎるためあえて別にしました。
ここではギリシャ神話に登場するペガサスやユニコーン、ロック鳥などを「空想動物」に仕分けました。現実の動物にどのような力を付与するか。ペガサスなら馬に鳥の翼がついた生き物。ユニコーンは一角を有するヤギとして描かれることが多いのです。ちなみにユニコーンの土台は馬ではなくヤギです。ユニコーンの絵をよく見ると偶蹄目であるヤギの特徴が多分に出ています。
勇者ペルセウスが倒したヒュドラや、ミノタウルス、ゴーゴン姉妹(メデューサを含む)や現代社会で紋章に使われることの多いグリフォンやピポグリフ、ワイバーンや双頭の鷲などは「モンスター」に仕分けられるのです。種族で言及したオークやトロールも『D&D』では「モンスター」です。
「モンスター」は神話に登場するものが多くなります。TRPGでは個別に独自の「モンスター」が生み出されており、動く甲冑「リビング・アーマー」や宝箱偽装「ミミック」はTRPG発の「モンスター」です。
不死の者としてスケルトン、ゾンビ、グール、バンパイアといったものが登場するのもTRPGならではと言えます。
世界の誕生過程
「剣と魔法のファンタジー」で世界の誕生は神々が生み出したとされるのものが多い。
日本でも『古事記』においてイザナギとイザナミが濁り水をかき混ぜて日本列島を作り出したという物語になっています。創世神話はそれ以降の文化の醸成にもつながりますから、矛盾が生じないよう慎重に考えてください。
生み出された大地はどのような形をしているでしょうか。『古事記』では島々が生み出されています。ギリシャ神話ではウラヌスが天空を作り、ガイアが大地を作ったとされているのです。この創世神話は地続きのヨーロッパ大陸を考えたとき、矛盾が生じないように配慮されています。
どのような組織が存在するか
「剣と魔法のファンタジー」ではまず封建国家と中央集権国家が存在していることが多い。
封建国家は王国を中心とし「公侯伯子男」の各貴族が封じられている国家形態のことを指します。
中央集権国家は帝国により地方の行政も中央官僚が任じられて執行する国家形態です。
「剣と魔法のファンタジー」で民主共和国家が存在することはかなり稀と言えます。それは世界観の手本が「中世ヨーロッパ」だからです。この頃民主共和国家は存在していませんでした。だからなくて当たり前なのです。(共和制については共和政ローマの三頭政治がその代表です。しかし中世ヨーロッパで共和制を布いた国はありませんでした)。
宗教は世界中で幅を利かせています。そもそもプリーストやクレリック(僧侶や神官)が登場するからには、彼らが信奉する宗教がなければなりません。だから「剣と魔法のファンジー」であれば宗教は切っても切れない関係にあるのです。
商人が所属する商会も世界中に存在します。どんな政治体制であろうとも、商売は国力の源ですからたいていは国家お墨付きで商売をしているのです。
以前にも書きましたが、戦士ギルド、魔術師ギルド、寺院・教会の存在意義はわかるのですが、盗賊ギルドの存在意義がわかりません。盗賊ギルドはいわば「公然の犯罪組織」です。政体が安定しているときに「犯罪組織」を野放しにしているものでしょうか。それとも日本のヤクザのように、国家権力も手を出せない状態なのでしょうか。考えてみると「剣と魔法のファンタジー」世界の理解が深まります。
最後に
今回は「異世界ファンタジーのレシピ」について述べてみました
「異世界ファンタジー」には鉄板の設定が山のようにあります。そのたいていがギリシャ神話・ローマ神話・北欧神話・ケルト神話などを土台にしているのです。
オリジナルのモンスターを作るよりも、ギリシャ神話・ローマ神話・北欧神話・ケルト神話などを参考にしたほうが馴染みやすくなります。
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