411.深化篇:立体的な描写を心がける

 今回は投稿が後れて申し訳ございません。

 しかし内容はかなり重要なので、皆様にはぜひ身につけていただきたいと思います。

(『ピクシブ文芸』『小説家になろう』連載時)





立体的な描写を心がける


 小説は「一次元」の芸術です。

 しかし小説は読み手に世界観・舞台を示さなければなりません。

 文字が縦方向に並んでいるだけなのに、風景や背景を読み手が思い浮かべられるようにする必要があります。

 ここまでは理解できている書き手が多いのです。

 ただし、アイレベルが固定された状況を述べているだけであることが多くなります。

 つまりたいていの書き手は「二次元」の風景や背景を書いているだけに過ぎないのです。




立体的な描写はほとんどなかった

 小説はともすれば「二次元」の描写にとどまってしまう可能性が高くなります。

 とくに「文豪」の小説を読んでいると、そのほとんどが「二次元」で描写されていることに気づくでしょう。

 だから横と奥行きの「二次元」で書いてしまいがちなのです。

「文豪」が活躍していた当時、航空機やヘリコプターに乗って大空の上から俯瞰で世界を見るなんてことはほとんどできませんでした。

 登山が趣味だったり住んでいる場所が高地だったりすれば、俯瞰で眺めることは当たり前に書けます。

 でもそんな「文豪」はそうはいなかったのではないでしょうか。

 もちろんすべての「文豪」の作品を読んだことはありません。

 しかしあまり「高さ軸」を感じない作品が多かった印象はあります。




立体的に書ければ評価が高まる

 ですが、現在日本であればロープウェイやエレベーターやエスカレーターに乗ったり、アクアラングを背負って海に潜ったり、地下鉄に乗ったりと、比較的容易に立体的な移動が可能ですよね。

 であれば、小説も「立体的」つまり「三次元」を意識して書きましょう。

 たったそれだけのことで、あなたの小説は何段階も上に評価されます。

 あなたの小説には「平面的」なことだけしか書かれてはいませんか。

「立体的」なことが書かれていますか。


 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』は宇宙空間が舞台の戦争小説です。

 しかし戦闘シーンはほとんどが「平面上」でしか繰り広げられていません。

「立体的」に戦闘をしたシーンは帝国領内の「アムリッツァ星域会戦」においてヤン艦隊が恒星風を作り出して立体的に行動した場面と、自由惑星同盟領となったイゼルローン要塞を巡るイゼルローン回廊攻防戦くらいです。

 他は「平面上」での戦闘しか語られていません。

 こう書くと意外に思う方が多いと思います。

 そのくらい「立体的」に物事を捉える意識を持つことは難しいのです。




ブルース・リーとジャッキー・チェン

 個人対個人のアクションシーンであっても、つい「平面上」でのみキャラを動かしてしまいがちです。

 戦いながら身を屈めての足払いや、壁を使った三角跳びで頭部に蹴りなどを見舞ったりすることがまずありません。

 これはブルース・リー氏とジャッキー・チェン氏の映画の違いで説明できます。

「ブルース・リー氏の映画」は格闘技・ジークンドーの開祖である本人が、基本的にはワンインチパンチやハイキック、代名詞とも言えるヌンチャクなど見栄えのする技を放って観客を楽しませました。

 つまり主人公本人がひじょうに強いから、「平面」つまり「二次元」で正統派な戦い方をしていてもじゅうぶんに勝ててしまうのです。

 対して「ジャッキー・チェン氏の映画」はある程度腕に覚えのある若者が「その場にあるものは椅子でも竹竿でもなんでも使って」戦います。

 先ほど述べた不意をついた「足払い」や「三角跳び」などもフル活用して、敵を「立体的」に攻めて勝つのです。

 つまり「達人」は「平面的」、「腕に覚えのある程度の人」は「立体的」に攻撃しなければ勝てません。

 またジャッキー・チェン氏のアクションは「高さ軸」をひじょうに有効的に用いています。

 頭蓋骨を骨折して再起不能とまで言われた『サンダーアーム/龍兄虎弟』での事故では木を飛び移る際に捕まった木が折れてジャッキー・チェン氏は高所から落下したのです。

 それでも「立体的」に動くことにこだわりを持ち、観客の視線を釘付けにしてきたのが彼の真骨頂でもあります。

 同作では飛行機から熱気球に飛び移るという神業さえ見せました。

「立体的」に動くことで映画は最高にスリリングになります。

 J.K.ローリング氏原作の映画『ハリー・ポッター』シリーズも空を飛ぶなどの「立体的」な動きが組み込まれており、観客を熱狂の渦に巻き込んだのです。




マンガも立体的に動くと盛り上がる

 ジャッキー・チェン氏の映画、『ハリー・ポッター』シリーズの映画はいずれも映画であり、観ているだけでワクワク感を味わうことができます。

 では「立体的」に動くことは映画やアニメでしか有効ではないのでしょうか。

 違いますよね。

 マンガだって「立体的」に動かなければダイナミックさを読み手に感じさせられません。

 さいとう・たかを氏『ゴルゴ13』において、デューク東郷はさまざまな場所から狙撃を行ないます。

 ビルの上からというスタンダードな狙撃は当たり前すぎて新鮮味がありません。ビルから飛び降りながら狙撃することもあるのです。

 桂正和氏『ウイングマン』では広野健太がウイングマンに変身して、空を飛びながら戦います。

 いずれも「立体的」に動くことでワクワク感を与えてくれます。

 マンガは絵だから「立体的」に動かすことも可能だ。でも小説は文字だけだから「立体的」になんて書けない。

 そうお思いの方もいらっしゃるでしょう。




小説も立体的に描写すべき

 まず結論から言っておきます。

「小説も立体的に描写すべき」です。

 小説の評価は、読み手の脳内イメージにどれほどの広がりを持たせられるかで左右されます。

 一般的な「平面上」でのみ動かすと、読み手は脳内に平面の「地図マップ」を思い浮かべるのです。

 まるで囲碁や将棋の盤面を頭の中でイメージしているようなものといえます。

 そこに「高さ軸」の描写を加えることで、小説も「立体的」な芸術になるのです。

「高さ軸」を書くだけですが、効果は絶大。

 読み手は脳内に「空間スペース」を丸々思い浮かべて、どこからどうやって動いていくのかをイメージするようになります。

 まるでマンガを読んだり映画を観たりしているかのごとく、読み手の脳内に「立体空間」が広がり、思わずワクワクしてしまうのです。


 前述しましたが、ほとんどの小説は「平面的」にしか動かせていません。

 ですが「立体的」に動かせられれば、それだけで俄然面白いアクションが期待できるのです。

「異世界ファンタジー」小説を投稿したり連載したりしている方で、なかなかブックマークや評価が伸びないなと感じるようでしたら、キャラを「立体的」に動かしてみましょう。

 魔法を炸裂させるときも、空中から叩きつけたり上空に向けて放ったりするのです。

 馬上から槍で歩兵を貫いたり薙ぎ払ったり、空を飛ぶ魔物へ向けてジャンプしながら斬り伏せたりしましょう。

 それだけで読み手の脳内イメージは「平面」の「地図マップ」から「立体的」な「空間スペース」へと変化します。

 まったく同じ内容の小説も「立体的」な「空間スペース」で繰り広げられるだけで、イメージが明確になってくるのです。

 イメージが明確になれば、物語の中身は同じでも「面白さ」は格段に増します。

 なにげない町中のシーンでも、空を見上げて猛禽が飛んでいる姿を描写することで、「立体的」な「空間スペース」が生まれるのです。

 池に潜ってナマズを捕まえるのも「立体的」な「空間スペース」が生じます。

 なにも難しいことはないのです。

 描写をするときに「高さ」を意識すること。

 ただそれだけで小説の評価は弥増いやまします。





最後に

 今回は「立体的な描写を心がける」ことについて述べました。

 小説を書いているとき、ふと抜けてしまうものが「高さ軸」です。

 世の中は「平面的」な「二次元」で出来ているわけではありません。

 「高さ軸」を持つ「立体的」な「三次元」で構成されています。

 だからあえて「高さ軸」を意識して書き、読み手の脳内イメージを意図的に「地図マップ」から「空間スペース」へとアップグレードしてしまうのです。

 そうすれば面白さは何倍にも膨れ上がります。



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