154.応用篇:ウケる小説を書くには

 今回は「ウケる小説」についてです。

 どういった読み手層を主要層と捉えるのか。

 それによってウケるものは変わります。





ウケる小説を書くには


 あなたはどういう目的で小説を書くのでしょうか。

 読み手にどんなことを感じてもらいたいのでしょうか。

 どんな読み手を想定しているのでしょうか。


 まずこの三点を明らかにしておくべきです。




どういう目的で書くのか

 今から書こうとしている小説は「どういう目的で書こう」としていますか。

 出版社の「小説賞・新人賞」に応募するためでしょうか。小説投稿サイトへ投稿するためでしょうか。友人知人に読んでもらうためでしょうか。誰にも見せることのない日記にするためでしょうか。

 この中で今最も活発に行なわれているのが「小説投稿サイトへ投稿するため」です。

 小説投稿サイトでは出版社が「懸賞金付き企画」をいくつも立てています。そちらに投稿して一攫千金や「紙の書籍化」を狙っている方もいるはずです。

 そういった企画に載せないで、自分のペースで自分が書きたいジャンルの小説を投稿している人もいますよね。自分の妄想が他の人に読まれて評価されれば嬉しいというのは「自己承認欲求(通常『承認欲求』と呼びますが、皆様にわかりやすいよう『自己』を付けて書いています)」を満たす行為です。

 そういうことも含めて「どういう目的で書こう」としているのかを明確にします。それによって書くべきことが決まるからです。

「懸賞金付き企画」ならジャンルやお題や分量が設定されています。それに適う小説を書くことが求められるのです。「恋愛もので『夏』を活かした八万字〜十二万字前後の小説」といった具合に。

「小説賞・新人賞」でお題があるものはまず見ません。小説投稿サイトの「懸賞金付き企画」であれば必ずお題が設定されています。そのうえで分量を守る必要もあるのです。指定された分量より多すぎてもダメ、少なすぎてもダメ。きちんと設定されている分量に合わせましょう。

 分量は「エピソードをどれだけ盛り込むか」でコントロールします。書き慣れてくればひとつの「エピソード」はいくつの「場面シーン」に分けられて、「一場面シーン」を何千字でまとめられるのかがわかってきます。

 つまり分量は計算して調整することができるのです。




どんなことを感じてもらいたいのか

 書き手は「あらすじ」を作る際にまず「この小説を通じて読み手にどんなことを感じてもらいたいのか」を明確にする必要があります。

 読み手を感動させたいのか、楽しませたいのか、謎解きに頭をひねってもらいたいのか。それによって書くべき内容が変わってきます。

 たとえば感動させたいと思っていたとします。そのためには日常の楽しい「エピソード」をまず出して、突然悲しい出来事が起こる。主人公は苦しめられますが前向きでひたむきに解決を探るのです。そしてあるとき潮目が変わって主人公は救われます。こういう「エピソード」を作れば読み手を感動させられるのではないでしょうか。

「感動させたい」を代表するものとして「難病もの」が挙げられます。いつもと変わらない日常の「エピソード」が示されます。そしてある日突然病魔に蝕まれます。どんなにツラくても頑張ればきっと元の生活に戻れる、そう信じて闘病生活を前向きでひたむきに過ごしていきます。そして手術で難病が克服されたり手術が間に合わずに死んでしまったりするのです。「難病もの」は基本的にこういう流れになります。「お涙頂戴」エピソードの鉄板な流れです。

 このように、とりあえず箇条書きでいいので「エピソード」を列記していきましょう。

 その中でどの「エピソード」を用いればよいのかは、次に示す「どんな読み手を想定しているのか」で選択されます。




どんな読み手を想定しているのか

 小説を書くとき、読み手のことが頭から抜けてしまうことがあります。あなたの小説はどんな人に読んでもらいたいのでしょうか。年齢や性別、学部や職業によって、書くべき内容が異なってきます。

 小学生に法律事務所の話をして喜々として読んでくれるでしょうか。(江戸川コナンなら喜々として読むことでしょう)。高齢者におとぎ話をして喜んでくれるでしょうか。

 年齢によって基礎知識が異なるため、知識の及ぶ範囲も考え合わせる必要があります。

 また男性にBL小説を読ませようとしていませんか。ほとんどの男性はBL小説を読まないんですよ。女性が百合小説を読むのとはわけが違うのです。性別によっても好んで読むジャンルや状況シチュエーションは異なります。


 男性はあまり恋愛小説を読みません。でも恋愛小説の書き手が男性であることはよくあることです。

 だから男性の書き手が自分の感覚で男性向けに恋愛小説を書いてもなかなか受け入れられないと思います。

 恋愛小説が強い小説投稿サイト『エブリスタ』『アルファポリス』でもランキング上位は「女性向け恋愛小説」で占められているのです。

 男性向け恋愛小説は純愛ものより不倫とか横恋慕とかいった不道徳なものが受け入れられます。渡辺淳一氏『失楽園』なんてまさに「不道徳の極み」と言えるでしょう。

 また「成人向け小説」に流れやすいのも男性の特徴です。スポーツ新聞や写真週刊誌には「成人向け小説」の連載が多く、性風俗などエッチな写真や情報も入っています。

 これらは皆「読み手として成人男性を想定している」からです。


 このように「どんな読み手を想定しているのか」が明確になると、反響がよくなる「エピソード」は限られていきます。

 もし「読み手を想定していない」小説を書いたらどうなると思いますか。結果は「誰にも読まれなくなる」だけです。

「帯に短し襷に長し」とでも言いますか、書かれた小説を読んでも誰のために書かれたものかわからなくて「自分が読んでもいいのだろうか」と判断に迷います。

 よって誰も手を出そうとしなくなるのです。

 せっかく三百枚を書いたとしてもまったくの徒労に終わります。

 小説を書くときは必ず「どんな読み手を想定しているか」を明確にすべきなのです。




想定する読み手を研究する

 あなたがすでに五十歳で「中高生を想定する読み手」に設定したライトノベルを書こうとしたとします。

 あなたにはご自身が「面白い」「楽しい」と思う「エピソード」があるはずです。

 その「エピソード」は想定する中高生が「面白い」「楽しい」と思ってくれるでしょうか。

 正直に言って五十歳と中高生の感覚はまるっきり異なります。

 五十歳が「自分はこれが面白くて楽しい」と思って書いたライトノベルを、中高生は「面白くもないし楽しくもない」と判断するのです。

 だから書き手と読み手の年齢が近いほど「面白い」「楽しい」の感覚が近づいていきます。

 では五十歳の書き手がライトノベルを書いてはいけないのでしょうか。そんなことはありません。

 ただし攻略法を踏まえる必要があるのです。


 たとえば今子ども向けに『うんこ漢字ドリル』が流行っていますよね。なんでも「うんこ」に結びつけて学ばせる漢字のドリルです。これは子どもが「うんこ」に対してたいへん興味を持つことを書き手が研究して理解していました。そうして生まれた『うんこ漢字ドリル』は案の定大ヒットを飛ばしています。

 おわかりですね。読み手のことを研究して「想定する読み手はどんなものに興味があるのか」を知ることが、五十歳がライトノベルを書くときに応用できるのです。


 まず中高生が普段触れるものを片っ端から調べてみましょう。

 どんな小説が支持されているのか。今なら渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が大ヒットを飛ばしていますよね。『このライトノベルがすごい!』の2013年度から2015年度まで三連覇して殿堂入りしたライトノベルです。だったら同書を穴が開くまで読み込んでください。

 佐島勤氏『魔法科高校の劣等生』も長期にわたって支持されていますよね。だったらこれも購入して読みまくるのです。

 川原礫氏『ソードアート・オンライン』や鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』など今の読み手ががっつりと食いつく小説はとても多い。でも五十歳なら毎月自由になるお金は中高生と比べられないほどたくさんありますよね。

 無ければタバコをやめるかお酒の量を減らすかしてでも捻出すべきです。

「中高生が興味を持つ」ものを研究するために「大人買い」して自分に投資することを優先しましょう。


 中高生は小説だけでなくマンガもよく読みます。今流行っているマンガはなんなのか。それを研究すれば「どんな物語に興味があるのか」がわかります。

 今の中高生は尾田栄一郎氏『ONE PIECE』をそれほど読んでいません。連載がとても長いのも一因ですが、主因は今の中高生の感性に合わなくなってきているからです。『週刊少年ジャンプ』なら少し前は藤巻忠俊氏『黒子のバスケ』、今は堀越耕平氏『僕のヒーローアカデミア』が牽引しています。最低でもこの二つは全巻買って読みこなしましょう。


 こうやって「想定する読み手を研究する」ことで、書き手の感性が「想定する読み手」に近づいていきます。

 なにが好きでなにが嫌いなのか。なにを知っていてなにを知らないのか。芸能人は誰が好きで誰が嫌いなのか。なにに興味があってなにに興味がないのか。なにを面白いと感じてなにを楽しいと感じるのか。どんなテーマがウケているのか。

 これが体感できれば、五十歳でも売れるライトノベルは必ず書けます。





最後に

 今回は「ウケる小説を書くには」ということをテーマに述べてみました。

 「どんな読み手に」「どういう目的で」「どんなことを感じてもらいたい」のでしょうか。

 それを明確にすることで、あなたの小説は見違えるように読まれる作品に生まれ変わります。

 この三点を踏まえないで書いた小説は、どこか「自己満足」を感じさせるものです。



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