139.応用篇:読み手が喜ぶような小説を書く

 「小説を書くことが好き」なのは当然ですが、同様に「読み手が喜んで読みたくなるような小説を書きたい」という意欲がなければ書き手として成長できません。

 それには「面白い」「楽しい」小説を目指すべきです。というお話です。





読み手が喜ぶような小説を書く


 書き手には「小説を書くことが好き」という強い意志が必要です。

 ただそれだけでも駄目で、「読み手が喜んで読みたくなるような小説を書きたい」という強い意志もなければなりません。

 「読み手が喜ぶような小説を書く」というのはとくに商業ライトノベルには不可欠なものになります。

 読み手は読んでいて面白くない・楽しめないような連載小説の続刊を買うでしょうか。

 面白くもなければ楽しめもしない。

 そうわかっている小説なんて買うに値しません。


 読み手はそういう書き手の名は終生覚えているもので、その後どんな新シリーズを開始しても同じ書き手の小説を買わなくなるのです。





書くのが好きだけではダメ

 一年に長編小説を三本、四本、五本と書くためには「小説を書くことが好き」であることが不可欠です。

 でもそれだけでは読み手を無視した「自己満足の小説」を書き続けてしまう罠に陥ってしまいます。

 これはとくに「小説を書くことが好き」という気持ちが強すぎると陥るものです。


 文章を書くのが楽しくて仕方ない。それは大いに結構なことです。

 でも小説は日記ではありません。

 日記は誰に見せるでもなく、後日自分が読み返して「ああ、あのときにあんな出来事が起こったんだな」と思い返す材料になります。

 そんな「日記を他人に読まれる」なんてことを考えたことがありますか。

 たいていの人は頑なに拒むものです。

 後日の自分が読むことはよくて、他人に読まれるのは嫌。

 マンガのあだち充氏『タッチ』でヒロインの浅倉南が主人公の上杉達也に日記を読まれたのではないかとひどく気にする場面が出てきますよね。

 そのくらい他人に読まれるのが嫌なものが日記なのです。


 では小説はどうでしょうか。

 ただ文章を書くのが楽しくてしょうがない。

 「小説を書くのが好き」で一年に三本、四本、五本と長編小説を書いていく。

 それをすべて小説投稿サイトに上げますか。


 たいていが「自分の書きたいものを書いた」小説であり「他人に読まれると恥ずかしい」なんて気持ちが湧いてきませんか。

 湧いてくるようならそれは「小説の形をした日記」だったということです。


 いくら日々のルーチン(コンピュータのプログラムで繰り返される命令文の塊のこと。ラグビーの五郎丸歩選手で話題になった「ルーティーン」と同じ言葉です)で小説を書いてきたからといって、日記のような気持ちを抱いていたのでは元も子もありません。


 小説は読み手がいることを想定して書かなければ意味がないのです。

 ピアノの演奏で『猫ふんじゃった』を演奏するのは自宅でならいくらでも弾けますよね。

 しかしコンクールで演奏するとなれば自宅とはまるで異なる心持ちになるはず。

 審査員にどう聞こえているかを考慮しなければならないからです。

 審査員をうならせられなければ賞を獲ることなどできません。

 小説もそれと同じです。





読み手を意識して小説を書く

 小説は「読み手がいる文章」です。

 ピアノの発表会に審査員がいるのと同様。

 だから小説を書いているときは、読み手の存在を強く意識する必要があります。


 どう書いたら読み手に伝えたいことが伝わるのか。

 読み手の感情に訴える文章が書けているのか。

 読み手が「面白い」「楽しい」と思ってくれるような小説になっているのか。

 これらを絶えず意識しながら書く必要があります。

 ピアノのコンクールに向けて本番さながらの練習をする行為に似ているはずです。


 審査員にはどう聞こえているのだろうか。

 曲をよどみなく弾けているだろうか。

 リズミカルで躍動感のある演奏ができているだろうか。

 そこを意識しながら練習していますよね。


 商業ライトノベルは読み手の熱烈な支持があったればこそ飛ぶように売れていきます。

 主要層である中高生がなけなしのお小遣いからライトノベルを買ってくれるのです。

 書き手は読み手に感謝する心を持つべきでしょう。

 そんな読み手がせっかく買ったライトノベルの質が低かった。

 もう二度と同じ書き手の小説は買うまいと心に決めます。

 その後、よほどの大ヒット作でも生まれない限り、新作を買ってくれることもなくなるのです。


 小説投稿サイトでも同じです。

 たとえば「女性向け恋愛小説」に強い『エブリスタ』にファンタジー小説を投稿しても読み手が求めていません。

 ファンタジー小説の後に「女性向け恋愛小説」を投稿しても取り返すことはまず無理でしょう。

 逆に「女性向け恋愛小説」を書いた後に、ファンタジー小説に恋愛を絡めた小説を投稿すれば、読まれる可能性が高くなります。

 ですのでファンタジー小説なら元来強い『小説家になろう』『カクヨム』へ投稿すべきです。

 そうすればミスマッチは起こりません。

 だから各小説投稿サイトごとに強いジャンルを把握して、そのジャンルを外さないようにしてください。





読み手が喜ぶような小説を書く

 ここまでで、小説には読み手がいて彼らが評価してくれるから小説は支持されていることがわかりました。

 であれば「読み手が喜ぶような『面白い』『楽しい』小説を書く」べきです。

 わざわざ流れに逆らって読み手を無視した「自己満足の小説」を書いてしまう必要なんてありません。

 そんなヒマがあるなら、読み手を意識した長編小説を書いたほうが、はるかに理に適っているのです。


 読み手は自分が好む作品を多く掲載する小説投稿サイトを利用しています。

 『小説家になろう』『カクヨム』ならファンタジー、『エブリスタ』『アルファポリス』なら女性向け恋愛小説、『pixiv小説』なら二次創作、『ピクシブ文芸』なら成年女性向け小説が鉄板です。(『ピクシブ文芸』はサービスを終了しています)。

 それ以外はどこに投稿してもランキングに食い込むのは難しいのですが、読み手の分母が大きい『小説家になろう』に投稿しておいたほうが読まれやすくはなります。

 確実に読んでもらいたいのなら逆に分母が小さい『ピクシブ文芸』をオススメしたいところです。

 ただ本当に読まれない小説投稿サイトなので、途中で心が挫けるかもしれませんが。


 読み手は小説投稿サイトで読みたい作品を検索して読みます。

 つまり読みたいと思っている人に「読むと『面白い』『楽しい』小説」を提供するのです。

 そうすればひじょうに喜ばれます。

 閲覧数も増えますし、評価も高まりますし、ブックマークも増えます。

 その結果フォロワーさんになってくれるかもしれません。


 フォロワーさんが集まれば「紙の書籍化」も近づいてきますよ。





最後に

 今回は「読み手が喜ぶような小説を書く」ことについて述べてみました。

 毎日小説を書いていると日記のように感じて他人に読ませるのが恥ずかしいような小説を書いてしまうことが往々にしてあります。

 そうならないよう、読み手を想定して小説を書く。簡単なようで忘れがちです。

 そして読み手が読みたいと思うジャンルの小説を書いて「面白い」「楽しい」と思ってもらえるように心配りをしましょう。

 小説投稿サイトによって読まれているジャンルが異なります。

 読み手の読みたいジャンルに強い小説投稿サイトに投稿するという基本を忘れないようにしてくださいね。



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