107.実践篇:小説同人誌を電子書籍にして販売するには

 実践篇のラストとして「小説同人誌を電子書籍で売る」方法について考えてみました。





小説同人誌を電子書籍にして販売するには


 「小説同人誌」を作りたいんだけど、「紙の書籍」にすると在庫管理がたいへんだし、儲けが出るのか心配だ。

 だから「小説同人誌」を作るのはどうも気が引けるという方は多いと思います。

 そこで今回は「小説同人誌」を「電子書籍」にして販売してはいかがでしょうかというお話です。





小説同人誌の電子書籍を作る

 小説同人誌を作るのは意外と手間がかかります。『pixiv小説』には「PDF出力」機能があるので、無料で連載小説をPDF形式に変換できます。

 電子書籍のフォーマットとしては前述の「PDF」のほか「ePUB」という形式があります。

 電子書籍販売サイトでは「PDF」と「ePUB」のどちらかには対応しているので、とりあえずこの二つに留意しておけば「小説同人誌の電子書籍」を作れるでしょう。

 またPDF形式やePUB形式のリーダーアプリは無料で公開されているものもありますので、買い手にコピーしたデータを売ればいいだけです。在庫を気にする必要もなくなります。





小説同人誌の電子書籍を売るには

 出来あがった「電子書籍の小説同人誌」を読み手に売りたいんだけど、どうすればいいのかわからない。

 私もそうなので本コラムをお読みいただいている皆様もわかりませんよね。

 そこで商業作品で用いられる有名なところをいくつか挙げてみます。


■iBooks(2019年5月時点では「ブック」アプリに名称変更されました)

 Appleが運営する電子書籍機能です。『iBook Author』を使えば電子書籍形式に変換してくれるので、それを投稿または頒布することになります。現時点で縦書きには対応していないのが難点です。

 それでも日本で最も売れているスマートフォンであるiPhoneで手軽に読めるという利点は魅力的ではないでしょうか。

(2019年5月時点でmacOS/iOS向けワープロアプリ『Pages』が縦書き機能と『ブックストア』へのダイレクト投稿ができるようになっています。こちらを使えば、『iBook Author』を使わずに掲載完了までできます)。


■kindle direct publishing

 あの世界最大規模のインターネット通販サイトであるAmazonが展開する「電子書籍販売機能」です。

 mobi形式という特殊な形式のファイルが必要なのと、kindle direct publishingに投稿すると他の電子書籍販売サイトには投稿できない「独占契約」が必要になります。

 Amazonの利用客の多さは認めていますが「独占契約」はあまりにも高飛車な気がしますので、Amazonプライムを契約していなければあまり意味がないかもしれません。


■楽天koboライティングライフ

 こちらは日本国内でのインターネット販売サイトである「楽天」が展開する「電子書籍販売機能」です。

 一般的なePUB形式で投稿できるため利便性が高いのが魅力でしょう。また電子書籍端末のkoboは利用者も多いため、ある程度の部数を売りやすいのも特徴です。

 300円以上の販売価格なら印税は70%と一般図書と大差ないのも利点かもしれません。


■DL−MARKET(2022年現在サービスを終了していますので中略致します)


■PUBOO(すでに閉鎖が決定しているため、中略致します)


 他にもいろいろあります。ですがこのうち同人誌の販売が可能なところは少ないのです。インターネットで検索して「ここは小説同人誌が投稿できるんじゃないかな」と思うところを利用するようにしてください。





USBメモリやSDカードやCD−Rの形にして即売会で販売する

 盲点になりがちですが、同人誌即売会は必ずしも「紙の書籍」を売る必要がありません。

 USBメモリやSDカードやCD−Rなどに電子書籍データを入れて販売する手段もあります。

 場合によっては一般参加者にUSBメモリやSDカードを持参してもらって、そこに電子書籍データをコピーしていけば、書き手はUSBメモリやSDカードの在庫を気にすることなくいくらでも販売できるのです。

 さまざまな機種で閲覧できるPDF形式(DRMをかけておくこと)か、自炊のePUB形式が一般的に用いられます。


 この手段は同人誌即売会に「紙の書籍」を買いに来た人たちにはウケません。データでもいいので、という方向けだと割り切りましょう。


 最も怖いのは、買い手が持ってきたUSBメモリやSDカードにウイルスやマルウェアが潜んでいる可能性があることです。下手をすると即売会中にPCが感染して大損を食らうかもしれません。なのでできれば売り手がUSBメモリやSDカードを用意して、ウイルスやマルウェアが含まれていないことを確認したうえで頒布してください。





即売会に足を運ぶ

 電子書籍販売サイトで「小説同人誌」を販売しているから同人誌即売会に行かなくてもいい、というわけではありません。

 できれば同人誌即売会にサークル参加をしてUSBメモリやSDカードで販売するのが望ましいのですが、大きな即売会になるほど抽選の倍率が高いためなかなか受からないのが現実です。

 そんなときには一般参加して小説同人誌を販売している方々と名刺交換でもしてついでにUSBメモリやSDカードを配ってまわれば人脈が広がり、「合同編集の小説同人誌」で声がかかるかもしれません。


 自分の作品に注目してもらいたいなら「合同編集の小説同人誌」に参加するのが最も手っ取り早いのです。


 営業活動は1GBのUSBメモリ代や1枚のCD−R代がかかるくらいであまり損をしませんしね。ついでに他サークルの「小説同人誌」を買ってあげればなお印象が良くなるはずです。

 即売会に出かけるのは面倒だからという理由で行かない人は、出版社から商業ライトノベル化を依頼されることもまずないと思っていいでしょう。

 社交性があるか。人脈があるか。出版社はそこも見ているはずです。


 最低限の社会的マナーのある人は、出版社の編集さんと面談した際の印象もよくなります。

 わざわざ「付き合いづらい書き手」と契約したがるような奇特で物好きな編集さんはまずいません。





最後に

 今回は「小説同人誌を電子書籍にして販売する」ことについて述べてみました。

 世はインターネット全盛期です。インターネット上で電子書籍を販売すれば在庫を抱える心配がありません。

 特段赤字になるわけでもないので、これからの商業小説は電子書籍に置き換わる可能性があります。

 そのとき企業がネット配信へ移行するより前に活動していれば、交渉のうえで大きなアドバンテージを得ることになるのです。

 せっかくインターネット上の小説投稿サイトで連載しているのですから、その流れで電子書籍を出版するのは親和性が高くて良いでしょう。

 ぜひ電子書籍の利用も検討してみてください。



 なお実践篇は今回が最後になります。次回からは応用篇としてさらに一歩踏み込んだ書き方をしていく予定です。


 とくに「これから小説を書こう」と思ってくれる方が多くなるようなコラムにしていけたらと思います。

 もう少しこのコラムは続きますので、今まで以上に期待に応えられるようなものになるよう努力していくつもりです。

 ここでコラムを連載するようになってから、私の中でもかなりの意識改革が起こっています。

 「ここはこう書けばよかったな」と気づくことが多く、「これをもっと深く理解していれば、今まで以上にいい作品になったのにな」と後悔する点も多いのです。

 このコラムに書いた以上、皆様のご期待に添える小説の連載ができるよう準備しつつ、まずは『和語辞典』の編纂を進めていきたいと思います。

 『和語辞典』については「和語辞典」のタグを付けてありますので、どんな感じになるのかなと思われた方は検索していただけると助かります。

(『pixiv』の小説機能を用いてすでに投稿してあります。見やすいのは「新・和語辞典」のシリーズ名を付けたほうなので、暇がございましたら覗いてみてください)。



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