102.実践篇:日常とハーレムを描いた小説
「小説の書き方コラム」の100日連続投稿を達成いたしました。
ネタはここまでで終わりなので、後はペースを落として書きたいテーマが見つかったら書くスタイルになります。
(のはずだったのですが、現在2019年5月まで毎日連載が続いています)。
日常とハーレムを描いた小説
現在のライトノベルでは渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が筆頭ですね。四コマ漫画・かきふらい氏『けいおん!』を挙げるとわかりやすい方もおられるでしょう。
日常の他愛ない会話のやりとりを読ませます。
そのやりとりを傍で見ていることによりその
また「日常もの」は男女どちらかのハーレム状態であることが多いのも特徴です。
ルーツは意外と古い
ライトノベル界で見ればこの手の「日常もの」が最近増えてきたように感じられます。
実際『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が爆発的なヒットを記録して『このライトノベルがすごい!』文庫部門を三連覇して殿堂入りするほど好調です。
ライトノベルでこの手の「日常もの」のルーツとなりうるのは神坂一氏『スレイヤーズ』ではないでしょうか。
「ドラゴンもまたいで通る」通称「ドラまた」という二つ名を持つ少女リナ=インバースが主人公です。
そこにアクの強い剣士ガウリイ=ガブリエフが絡んでのバカ騒ぎが話題となりました。
『すぺしゃる』『すまっしゅ。』や劇場版・OVA版で登場する白蛇のナーガとの凸凹コンビも人気でした。
いちおうファンタジー小説なのですがリナが超越的な魔術師なためどんな困難も魔法で解決。そしてまたバカ騒ぎという流れで延々と物語は続いています。
物語は進んでいくけれども「バトルもの」「成長もの」のようにとくに
ことライトノベルに限れば『スレイヤーズ』が一里塚であったことは間違いないでしょう。
居心地の良い環境
「日常もの」が成立するには条件があります。
その状態を「居心地の良い」と皆が共有していることです。
もし誰かが「居心地が悪い」と感じたら、その環境から自然と離れていきます。「居心地の良い」と思っている人たちだけがひとつところに集まるのです。
これは実際の中学校や高校の部活や友達関係と一緒で、「居心地が良い」から皆がたむろします。
一昔前までライトノベルを読んでいたのは「オタク」と蔑称された人たちでした。
現在の読み手はひじょうに社交的です。
学業も部活も楽しんで、そこで生まれた人間関係でも楽しんでいます。
もはやライトノベルを読んでいるのは「一般の中高生」なのです。
だから昔の感覚で小難しい言葉を並べて粋がっているライトノベルは一顧だにされません。
地の文が少なくて読みやすく、
今のライトノベルにはそれが求められています。
今のライトノベルである『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』も奉仕部が「居心地が良い」と感じていたから比企谷八幡と雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣は適当な距離感を保っていられました。
しかし進学を前にして次第にバランスが崩れてゆき物語は最終局面へと向かっています。
もし『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が俗に言う「サザエさん時空(カツオやワカメが新学期になると元のクラスに戻され永遠に時間が進まない世界)」であるのなら連載はほぼ際限なく続いたことでしょう。
しかし連載はきちんと季節の行事を取り入れてエピソードを作っており「いつかは終わる物語」であることは読み手の誰もが共有していたはずです。
そしてそれが深刻になる前に『このライトノベルがすごい!』で三連覇の快挙を成し遂げました。
ある意味で理想的な形で連載が続いていたため、とくに中高生男子から支持されたのです。
有終の美を飾れるかは読み手が判断してくださいね。
ハーレム
「日常もの」のライトノベルは往々にして「ハーレム」によって成り立っています。
中高生男子が主要な読み手層であれば男子主人公で女子がたくさん出てくる「ハーレム」状態に、中高生女子が主要な読み手層であれば女子主人公でイケメン男子がたくさん出てくる「逆ハーレム」状態になるのです。
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』はどちらかというと比企谷八幡のハーレム状態に近い人間関係となっています。
男子も出てくるのですが「刺身のツマ」のような扱いであり、八幡との対比や依頼対象としての存在のようになっているのです。
女子は雪乃と結衣のほかに顧問の平塚静やクラスメイトの川崎沙希や三浦優美子、海老名姫菜など主要人物は女性になっていますよね。
タイトルも「俺の青春ラブコメ」と言っているくらいなのでハーレム状態になるのは至極当然かもしれません。
まぁ実際に関係線が引けるのは雪乃と結衣だけですが。
賑やかしは女子が固めていて、八幡の対極に葉山隼人を置いているのが特徴ではあります。
「日常もの」で男女のバランスのきちんととれている作品は探すほうが難しいくらいです。
マンガの許斐剛氏『テニスの王子様』、マンガの藤巻忠俊氏『黒子のバスケ』はともに登場する女子の比率がきわめて低くイケメンの割合が多いため主に「BL」二次創作の撒き餌になっています。
ゲームやアニメのナムコ(現・バンダイナムコゲームス)『THE IDOL M@STER』は女子アイドルが多数出てきますが、男子のほうはかなり少数です。
消費者のターゲットを男女どちらに絞るかで、登場人物の性別割合も変化せざるをえません。
そのためには部活だったりアイドルだったりと小さなコミュニティを形成するのは理に適っているといえるでしょう。
同性のみ
四コママンガでアニメが大ブレイクしたかきふらい氏『けいおん!』や読者投稿企画発のアニメ『ラブライブ!』のように女性しか出てこない作品があるのも「日常もの」の特徴です。
どちらも男女ともに支持者自体は多いのですが、相対して男性の支持者が多いと思います。
男子が一人でも出てしまうと恋愛フラグが立ってしまうのではないかと男子視聴者は気が気でなくなりますが、女性しか出てこないということで男子視聴者に安心感をもたらしたのです。
同様にアニメ『Free!』(原作:おおじこうじ氏『ハイ☆スピード!』)やアニメ『スタミュ』のように男性しか出てこないアニメもあります。こちらも恋愛フラグが立たないため、人気の素養は「BL」二次創作にあると見ていいでしょう。
最後に
今回は「日常もの」をテーマに取り上げました。
とくに中高生男子の人気が高いのが「日常もの」の特徴です。
中高生女子に向けた「日常もの」もありますが、男子向けほど人気はありません。
女子のほうが現実でのコミュニティー作りが得意であり、とくに「日常もの」を意識しなくても他人とつながっていられます。
男子は部活でもやっていなければ現実のコミュニティー作りがあまり得意とはいえません。いてもクラスメイトや幼馴染みくらいです。
「日常もの」の作品を媒介にしてクラスの友達とつながりを持つことが多いのも特徴として挙げられます。
「話のネタ」に「日常もの」を読むのです。
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