99.実践篇:中高生男子向けバトル小説

 目標としていた100本連載まで残り2つとなりました。

 そこで標的別の2タイプを紹介することにしました。





中高生男子向けバトル小説


 中高生のとくに男子が好むのは「バトルもの」です。

 とにかく主人公の周りに事件イベントが起き、主人公もピンチに陥って、それを跳ね返そうと頑張って、奇跡的な要因を素にして勝利を収め、大団円ハッピー・エンドを迎えます。

 鉄板すぎるくらいの鉄板設定です。それでも中高生男子はこの手の話を支持します。

 なぜ支持されるのでしょうか。





主人公が事件に巻き込まれる

 主人公がヒロインやパートナーとともに事件イベントに巻き込まれれば、状況がいっぺんに説明できます。

 誰が主人公で、誰がヒロインやパートナーなのか。

 そして彼らに襲いかかる事件イベントとはどんなものか。

 敵となりライバルとなるのはどんな人物なのか。

 起承転結の「起」に必要な情報がすべて揃います。


 「主人公が事件イベントに巻き込まれる」のは「冒頭で『なぜ』を提供する」ことにつながり、「これからなにが起きるのかな」と読み手をワクワクさせるのです。

 事件イベントの起きない小説はありえません。

 何も起こらない文章を読んであなたは感動するでしょうか。

 きっと途中で読むのをやめてしまうと思います。

 だっていくら読んでも何も起こらないんですよ。


 ただ単に設定だけが語られ続けます。読み手は小説で設定資料集が読みたいのではなく、物語を読みたいのです。

 そして物語には「起承転結」や「序破急」といった構成が必要になります。

 そのためにまず「主人公が事件イベントに巻き込まれる」ことになるのです。





主人公が窮地ピンチに陥る

 「主人公が事件イベントに巻き込まれる」ことで「主人公が窮地ピンチに陥る」のです。

 ここで読み手をハラハラ・ドキドキさせます。

 主人公へ感情移入してもらうポイントです。


 事件イベントが起こって巻き込まれたのが起承転結の「起」であるなら、「主人公が窮地ピンチに陥る」のは「承」に当たります。

 ここでどれだけ劣勢に立たされるかで主人公の置かれた立場の深刻さが明らかになるのです。

 実力に差がありすぎると突き抜けてしまいパロディーと化してしまうので、主人公陣営が精いっぱい頑張れば乗り越えられるくらいの「窮地ピンチ」に陥るようにしましょう。

 この段階で主人公の協力者を出しておくと起承転結の「転」に進んだときの唐突感がなくなります。状況次第では「起」の段階から出しておいてもかまいません。

 そのときから主人公の協力者となるのか「承」の段階で協力者に名乗り出るのかは展開次第です。





窮地ピンチを跳ね返そうと頑張る

 主人公陣営は「窮地ピンチ」からの脱出をかけて動き始めます。

 ここで「どんなことを始めるのかな」と読み手に興味を持ってもらうのです。


 「起承転結」でいえば「転」の始まりです。

 ここから主人公陣営の逆転劇が火蓋を切ります。


 主人公陣営が「窮地ピンチを跳ね返そうと頑張る」ことで、読み手本人も頑張っているような疑似体験を得られます。

 この時点で読み手はもう主人公に没入しているはずです。

 読み手はまたしてもワクワクしてきます。

 でも「窮地ピンチの真っただ中」ですからハラハラ・ドキドキもしているのです。

 そのため小説投稿サイトで連載している小説の場合、ここがひとつの「評価」と「ブックマーク」を得られるポイントになります。

 この時点の反響が薄いのなら、これまで書いてきた小説の内容がそれほどよくなかった、という目安にもなるのです。





奇跡的な要因を素にして勝利を収める

 こうして始まった逆転劇は、主人公陣営と協力者の手によって道が切り開かれます。

 読み手のワクワクが一気に満たされていき、ハラハラ・ドキドキが立て続けに起こるのです。もう興奮が抑えられません。

 そして平時では思いもつかないような、ある種「奇跡的な要因」を素にして主人公陣営が勝利を収めます。

 ハラハラ・ドキドキが一挙に解消されて読み手に痛快さを感じさせるのです。

 「奇跡的な要因」は主人公ひとりで成し得るものではありません。

 ヒロインやパートナーそして協力者の力を借りて初めて達成できます。


 「誰かが欠けても成立しない要因」だからこそ「奇跡的な要因」となるのです。

 「起承転結」でいえば「結」の前半に当たります。

 そしてここが最も「評価」と「ブックマーク」が寄せられる場面であり、最も読み手の記憶に残る場面になるのです。

 ここまできておいて「評価」も「ブックマーク」もそれほど付かないようなら、その小説は読み手の需要に即していなかった、ということになります。


 小説投稿サイト『小説家になろう』で異世界転生ファンタジー以外のジャンルを投稿しても「ブックマーク」はあまり増えません。

 それほど『小説家になろう』は異世界転生ファンタジー症候群が蔓延しています。

 それ以外のジャンルを書きたいなら『エブリスタ』か『カクヨム』に投稿したほうが反応がよいはずですよ。


 ですが『小説家になろう』でもジャンル別ランキングが集計されていますから、そちらでランクを獲ることもできます。





主人公周りはどうなったか

 「奇跡的な勝利」を手にした主人公陣営はそのあとどうなったのでしょうか。

 「奇跡的な勝利」の余韻を読み手の記憶に定着させるためにも「そのあとどうなった」かを書いていきます。

 とくに「主人公がどうなった」は小説全般に求められる終了条件です。「起承転結」でいえば「結」の後半にあたります。

 ここでどれだけ読み手の「心に痕跡を残す」ことができるかで小説の評価全体が左右されるのです。


 バトルものであれば「奇跡的な勝利」による痛快さを快いものとして読み手の心に定着させるようにしていきましょう。

 悲劇バッド・エンドにしたくなるかもしれませんが、総じて中高生男子は大団円ハッピー・エンドを求めています。

 周りの人たちを生かすために主人公が死んでしまうような展開は今の中高生男子にはウケません。


 自己犠牲も「テーマ」のひとつになりえますが、それを前面に出してしまうと中高生男子は連載途中で脱落していきます。


 もちろんまったくダメというわけでもないのです。

 すでに「面白い小説の書き手」として認知されていれば、悲劇バッド・エンドになっても中高生男子は離れずについてきます。

 でもこれから小説を書いて「面白い小説の書き手」と認識してもらいたい段階では、やはり大団円ハッピー・エンドにしたほうがいいのです。





最後に

 今回は中高生男子が最も好む「バトルもの」の主な展開を述べてみました。

 これはテンプレートではありますが、テンプレートだからこそ読み手は安心してあなたの小説を読んでくれます。

 海の物とも山の物ともつかない小説は初見で切られる、と思ったほうがよいでしょう。

 読み手はワクワク・ハラハラ・ドキドキしたいから「バトルもの」を読もうとしています。

 そして上記のテンプレートはそれを最も単純化した展開なのです。


 連載第一回の中で主人公とヒロインやパートナー、できれば敵やライバルを登場させて事件イベントを起こします。

 このベタ展開で初見の中高生男子を惹きつけられれば、半ば成功したも同然です。

 あとは下手を打たずテンプレート通りに展開していけば、必ず中高生男子から評価されます。


 テンプレートに依存しないバトル小説を書きたいんだ。

 そうお思いになるのはひじょうによい気概をお持ちです。

 でもそれは読み手がいなければ成立しません。


 フォロワーがたくさんいる状況になって初めてテンプレートを破るべきなのです。

 どこまでフォロワーが増えたらテンプレート破りをすべきかはひとつのバクチになります。

 この見極めがうまくできた書き手だけが成功を掴むのです。

 「ランキングに載る」ことを目安にするとよいでしょう。

 できればランキングの1ページ目には入っておきたいところです。



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