第67話 幸せになるための条件


 ねぇ、幸せになるための条件ってなんだと思う?


 素敵な恋人に巡り会って、結婚して、子供を授かって、仲睦まじい家庭を築くこと?


 やりがいのある仕事に就いて、夢中に働いて、何か大きなことを成し遂げること?


 たくさんお金を稼いで、美味しいものをお腹いっぱい食べたり、素敵な服を着たりして、贅沢な暮らしをすること?


 ぜんぶ幸せの形だと思うけど、絶対に必要な条件ではなくて、条件を満たした後に掴み取れるかもしれない「結果」の例だよね?


 じゃあ改めて、幸せになるための条件ってなんなんだろう?


 わたしは思うんだ。


 その答えはたった一つしかないんじゃないかって。


 それはね、


「生きてる」ってこと。


 例え今、どれだけ辛くて、苦しい状況であったとしても、生きていなければ幸せになんてなれるわけがない。


 


 過去のわたしが自ら「死」を選択しようとしたように、死を迎えれば楽になれると思うことがあるかもしれない。


 けど、幸せになれるわけでは決してないんだ。


 ただ自分という存在が消えてしまうだけ。


 残された人に多くの悲しみを押しつけて。


 でも生きてさえいれば、幸せになれる可能性は、まだある。


 限りなくゼロに近い状況だったとしても。決してゼロではない。


 きっと、あるはずなんだ。


 わたしは思う。


 あのとき、死なないでよかった。


 生きてて、よかった―――。


 今、わたしは、自分が生きてきた「軌跡」と「奇跡」に―――自分の「人生」に、感謝と誇りを持てるようになった。


 だからわたしは、今日も、こう言うのだ。


「えへん☆」


 始めは意味もなく使っていただけのその言葉は、今、確かに「生きることへの誇り」という意味をともなって、抜けるような晴天の空へと溶けていった―――。



                  完

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幸せになるための条件 日暮 絵留 @higurasieru

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