第61話 ある別れの真相2

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 あの後、どうやって家まで帰ったのかよく覚えていない。

 眠ったままの啓介くんに、

「うん。分かったよ…。別れよう」

 そう告げて。

 病室を出たところまでは覚えている。

 本当は別れたくなんてかった。

 啓介くんの回復を願っているし、それまで待ち続けたいとも思う。

 それでもわたしは啓介くんと別れることを選んだ。


 なぜ啓介くんは、あのような伝言をわたしに遺したのか―――。


 わたしにはそれが痛いほど分かった。

 だから、その気持ちをんであげたいと思った。尊重したいと思った。

 そもそもわたしには、彼の気持ちを無視して自分の考えを優先させる権利などない。

 のだから…。


 啓介くんがわたしに別れを告げたこと。

 わたしが上原さんを遠ざけたこと。

 この二つは同じなのだ。


 相手のことが好きだから。

 大切だから。


 だからこそ。

 関わりを絶たなくてはならなかった。

 きっと啓介くんは、意識を取り戻したわずかな時間で、自分がただでは済まないということを悟ったのだろう。

「死」を覚悟していたかもしれない。

 そしてそんな状況にも関わらず、彼は、わたしの重荷にはなりたくないと考えた。(もちろん、重荷だなんてわたしは思わない)

 だから別れを切り出し、自分のことを忘れさせようとしたのだ。

 それでも

 咄嗟にそんなことを考えるなんて、なんとも彼らしい…。

 とにかく、

 こうしてわたしは初めての恋人である啓介くんと別れることになった。


 きっとあのときの上原さんも、このときのわたしと同じ気持ちだったのだろう。

 彼女は、例えクラスのみんなに相手にされなくなっても、わたしと友達でいたいと本気で思ってくれていた。


“わたしのためにそこまで言わせちゃって”「ごめんね」。


 あのとき分からなかった「ごめんね」の意味がやっと分かった。

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