第44話 遺書

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 お墓参りの後、わたしはコウくんと初めて出会った場所を訪れていた。

 久しぶりに来た裏山は今日も静けさに包まれていて、あの頃から何も変わらない…。

 季節は何度か巡っても、流れる空気はずっと残留し続けていたんじゃないだろうか…。

 そんな風に感じるほど、何もかもが同じに思えた。

 季節もちょうどあの頃と同じくらいだから余計にそう感じるのかも。

 あまりにも何も変わらないものだから、今にも彼の声が聞こえてくるんじゃないかと思って。

「コウくん…」

 呼びかけてみたけど、当然、返事はなかった。

 わたしは鞄の中から一通の封筒を取り出した。

 くしゃくしゃになったその封筒にはわたしの筆跡で『遺書』と書かれている。


 コウくんと初めて会ったあの日―――

 わたしは死のうとしていた。

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