第27話 決断

         3

 さっきのことが頭から離れない。

 本当にあんなことがあるなんて思いもしなかった。

 ネットでイマジナリーフレンドという存在を知ったとき、ウチとは関係のない、どこか遠い世界の話のように思っていた。

 なのに、

 まさかこんな身近で起こっていたなんて―――

 ミズからのメールを思い出す。

 例の防衛本能の話。

 ミズは『あくまでも創作の中の設定だから現実にあるかは分からない』と言っていた。

 でも現実にもあった。

 根拠は映画館で二人分のチケットを見せてきた浩一。

 たぶん矛盾を生まないためにチケットを二枚購入したんだと思う。

 こういうとき―――つまり、友達がイマジナリーフレンドを持ったとき、どうすればいいんだろう…。

 とりあえずミズに相談を―――

 いや、駄目だ。

 浩一と仲が良かった頃ならともかく、今のミズではおそらく話にならない。

 ミズはイマジナリーフレンドや、その保持者に対しての偏見などはないと思う。

 でも、ただでさえ過敏になっている浩一の話となれば、どうなるか分からない…。

 今よりもっと距離を置くようになる可能性だってある。

 それは絶対駄目だ。

 ウチ自身は浩一とどう接していくべきなんだろう…。

 気づいていないフリをして、今まで通りに接する?

 …まるで何事もなかったみたいに?

 それが理想的―――と言うか、正しい接し方という気はする。

 でも―――。

 ウチには無理…。

 だって、浩一のそんな姿を見ていられる自信がないから。

 じゃあ、もしこの事実を浩一に突きつけたとしたら…?

 ネットで調べた限りでは、大人になってからイマジナリーフレンドを持つことは普通ではないという見方もあるらしい。

 一方で、病的なものではないという見解もあって、必ずしも治療(という言い方は適切ではないかもしれない)の必要性はないという意見もあった。

 ウチは前者の意見を支持したい。


 だから、

 話してみようと思う。


 本当はウチみたいな素人がどうこうするような問題ではないのかもしれない。

 専門家に任せるのが一番なのだろう。

 そんなことは百も承知している。

 だけど。

 それでも。

 ウチは、

 浩一の話を聞いてあげたかった。

 彼の身に何があったのか。

 どうして今になってイマジナリーフレンドを持つようになったのか。

 そのきっかけになるような出来事がきっとあったはずなんだ。

 ウチには話を聞いてあげることくらいしかできないと思う。

 それでも、きっと、ウチにしかできない支え方があるのだと信じて…。


 このときのウチは知る由もなかった。


 ウチのこの決断が“あんな結末”の引き金になるということを―――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます