第16話 映画館2

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 途中、いわゆるベッドシーンというものに内心ドギマギしてしまった(よく『R15指定』で済んだなと思うほどだった)けど、それ以外は普通に楽しめる内容の映画だった。

 スタッフロールまでしっかり見届けると、やがて館内が明るくなった。

「あー面白かったぁ。やっぱり大画面だと迫力が違うねっ! 余は満足じゃっ」

「うん。確かに迫力満点で見応えあったよ。内容も、まぁ、悪くはなかったし」

「でしょでしょ? 良かった。本当はちょっとだけ心配だったんだ。えへへ…☆」

 そう言いながら、こちらをのぞき込む黛麻友―――。


「―――っ!」


「んー? どうしたの、コウくん?」

「あ、いや…ちょっと疲れただけ、だよ」

「ごめんね。…無理させちゃったかな」

「大丈夫、本当にちょっとだけだから…」


 僕たちの間に“そういう感情”があってはいけない。

 二人の関係が成り立たなくなってしまうから。


 それは、例え


 僕はきっと映画館という空間が持つ独特の雰囲気に飲まれているのだ。

 上映中、隣の席のことがやけに気になって、横目で様子をうかがってしまったのだって、きっとそのせいだ。

 つい、ベッドシーンのときも見てしまったけど、黛麻友はなんてことなさそうな顔でスクリーンからの光を反射させていた。

 この、一見、純真無垢な『猫のような少女』も内心ではドギマギしたりしたんだろうか…。変な気持ちになったりしたんだろうか…。

 そんなやましいことを考えてしまう自分に嫌悪する一方で、やっぱり僕も男なのだなと改めて思った。


         ※

「ところで、この後のこと何も決めてなかったよね。どうする?」

 僕が問うと、黛麻友は「ビシッ!」という音がしそうなほどの敬礼をしながら言った。

「とりあえず、わたしはパンフレットを買ってくるよっ!」

 パンフレット…。マジか。

 僕が思ってた以上に黛麻友はこの映画のファンだったらしい。それか、見た映画のパンフレットは欠かさず買うタイプなのかも知れないな。

 て言うか、この後っていうのは、お昼とか、その後の話…。

 まぁ、いっか。

 また改めて聞こう。

「コウくんはどうする? 買う? パンフレット」

「いや、いいよ。僕は遠慮しとく」

「そっかー。じゃあ、ちょっと行ってくるね。コウくんは待ってて」

「僕は喉が渇いたから、外の自販機で飲み物でも買ってくるよ。君も何か飲むならついでに買っとくけど?」

「おっ、コウくん気が利くぅ。じゃあ、適当にお茶をお願いします」

「了解。じゃあ、エントランスで待ち合わせってことで」

「はーい」

「行き違いになったりしたら面倒だし、もし僕が遅くなっても勝手に探し回らないように。君、迷子になりそうだから」

「分かったよぅ。でも、わたしだって子供じゃないんだから迷子になったりしないもん」

「よし、じゃあ解散。また後で」

「後でっ! ビシッ!」

 今度は口に出して言ってるよ…。

 黛麻友は売店に向かってぽてぽてと歩いていった。

 結構混んでいるみたいだから時間がかかるかもしれないな…。

 映画館から少し離れた所にある自販機に向かうつもりだったので地味に助かる。

 インターの敷地内で、僕のお目当ての飲料が買える自販機はあそこにしかないからなぁ…。

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