第12話 あの話2

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「ちょっとちょっとぉ! 変な沈黙はやめてよぅ。なんか気まずいぢゃん」

「君が照れるなんて珍しいからさ」

「別に照れてなんかないよぅ。ただ少し恥ずかしいだけだもん!」

 それは大体同じ意味だと思う…。

「それにしたって、たかだか映画に誘うくらいのことが恥ずかしいだなんて、君らしくないよ。一体どういう風の吹き回し?」

「もちろん変な意味はないよ? でもこれにはわけがあるんです…。それはそれは深いわけが……」

 言い方からして、大したわけじゃないことは明白だった。

 でも、そのわけっていうのを聞かないと、いつまでもアピールされそうだ…。

「どんなわけか聞かせてよ」

「それはですねぇ―――」

 待ってましたとばかりに黛麻友は話し始めた。

 彼女が語ったわけについては少し―――いや、ほぼ割愛させてもらって要点だけを述べておこう。


・見たい映画があるが、一般的にあまり女の子が好むような作品ではないので一緒に見に行ってくれる女友達がいない。

・男友達を誘うのは色々と抵抗がある。

・家族などにも心当たりがない。

・「お一人様」は嫌。

・コウくんなら心配ないから付き合って。

・えへん☆(ドヤ顔)


 結局、黛麻友が照れてた―――じゃなくて、恥ずかしがってた(どっちでもいいか)理由はよく分からない。

「一緒に行ってくれるよね?」

 別に嫌というわけではない…

 ただ、少し迷っていた。

 僕はあのシリーズをちゃんと見たことはないんだ。

「行こうよ映画っ! ねっ? ねっ?」

 うっ…。

「そこまで言うなら…まぁ、行ってもいいかな…」

 て言うか、こんな風にねだられたら断れるわけがない…。

「ほんとっ? やったぁ! じゃあ決まりだね! えへん☆」

「なんでそこで「えへん」なのさ」

「なんでって…。「えへん☆」なものは「えへん☆」だからだよっ」

「それ、答えになってないって…」

 そう言いながらも、黛麻友のあまりに嬉しそうな笑顔を見て僕は、

 なんだか照れくさいような。

 でも温かいような。


 そんな気持ちになっていた―――。

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