第10発 復讐
(この物語に登場する"事実"及び"固有名詞"並びに"具体的な内容"はすべて架空のものであることを、再度強調しておきます)
(取材協力者の方々ありがとうございます、とうぜん文責はすべてわたし作者のみにあります)
ベッドで天女ベアトリーチェと一緒に裸で添い寝をしながら、男はある事実を語った。男は、幼少期の頃は、まだ良い社会だったと回顧する。そして、ちょっと長くなるよと言い、そして穏やかに語る。
Ⅰ.80年代 女子大生ブーム
日本の社会がおかしくなったきっかけは、何だったのだろうか。そのきっかけは恐らく80年代以降のテレビ放送にある。当時のNHKはある程度しっかりとしていた。しかし、80年代にあってまず民放が、女子大生ブームを捏造した。そんなブームはもともと無かったが、視聴率を上げるために民放がブームを捏造し、その社会への影響は大きかった。本来、学問を修めるために学び舎で学ぶ神聖な学生として扱うべき女子大生。その水着姿が、大学名ブランド付きでテレビに放送され始めたのだ。この時点で、女性の商品化が公然と始まるのだ。それからしばらくして、民放の深夜番組が昼にも放送されるようになってきた。
この時点で子供だった男子も女子も、その伸びやかで緩やかな成長段階からすると、いくぶん無理があるキツイ放送が、テレビを見ていると唐突に、それも何度も何度も目に飛び込んでくるようになった。これが、子供たち本来のあるべき夢や希望を蝕んでいった。夕方には、子供たちの裸での入浴シーンが「子供向け番組」という触れ込みで流れていた。子供向けアニメもまた性を面白おかしく取り上げていた。スカートめくりがないアニメを探すほうが困難である程であった。
Ⅱ.90年代前半 女子高生ブーム
この頃の中学校や高校の教育は完全に崩壊していた。学校も予備校も、授業で不必要なくらいに話す内容は脱線の繰り返しで、先生たちの話す内容は猥褻な小話ばかりであった。ゆとり教育が行われ、先生たちは妄想のような世界の披露を競いあっていた。
「いいかい? 将来は機械が自動で働いてくれるから、君たちは勉強なんかしなくていい。労働も不要な世の中になる。勉強なんかよりも、人生には
どの先生も語る内容はこのように共通していた。
そこに、さらなる深刻な問題が生じた。援助交際ブームである。氷河期世代は援助交際の被害者世代と完全に一致する。当時の大人の一部は、当時中学生や高校生だった氷河期世代を、性の対象とみなし、お金で買っていた。しかし国会も警察も、取り締まりには消極的であった。名だたる大きな書店から街の小さな本屋まで、いたるところでロリータ写真集が全裸姿でブックカバーなしで陳列、販売され、電車の車内広告もその宣伝であふれかえっていた。そういう写真集も、さらにまた自殺の方法を扱った本や、違法薬物体験特集の本まで、公然と陳列、販売されていて、未成年が購入しようとすると、ほとんどの店は年齢確認をあえてせず、そのまま販売していた。テレビでも当時の学生服であるセーラー服を着たセクシー女優があの手この手で服を脱ぐ番組が、朝から深夜まで一日中、突然何の前触れもなくテレビに映る状況となった。未成年者が脱ぐような番組も時々流れる状況であった。
Ⅲ.90年代後半 世紀末ブーム
この頃に、阪神大震災や地下鉄事件の、とりわけ被害者軽視の報道姿勢での凄惨な映像を直視させられ、すでに性的に心理的なトラウマを抱えていた子供たちの心には、大人社会に対する恐怖心までをも刻印され、希望を喪失した。当時、凶悪犯罪を含めた犯罪の検挙率は低下し、警察トップも銃撃されては犯人も見当たらない状況となった。その頃、大蔵省のエリート官僚の間では、いかがわしい店でしゃぶしゃぶを食べるのがトレンドであり、ザブン、ドボン、というもっといかがわしいことを意味する隠語まであった。彼らが、企業との癒着の見返りとしての
「頑張って勉強して、大蔵官僚にでもなりたいのかい? わっはっは。きみエッチだねー」
こうして、子供たちは当時の一部の大人から性的に買われ、勉強するのを馬鹿にされ、未成年女子はまだ判断力もない年齢でヌード写真を撮られ、未成年男子はヌード写真を購入すると男らしい、かっこいいという風潮が出来上がっていった。
また、この頃のテレビでは、純粋な恋愛を描いたドラマは皆無で、ほとんど唐突にセックスシーンとなるものばかりであった。子供たちは階段を丁寧に上るように、たのしい恋愛を想像する手段を絶たれていた。
さらに、性病への啓蒙活動が正しく行われなかったのである。本来性病への啓蒙活動は、性を肯定的に描き、その上で、性病にかからない方法を伝えるべきであるはずだ。しかし、性病の凄惨で痛々しい写真の羅列による恐怖心を植え付けることと、コンドームの説明はしないままにコンドームをつけろとだけ教育されるだけの状況であった。
ここに恋愛の一局面としての性と、そこに至るまでの過程が、子供たちに正しく伝わらず、子供たちの心と日常のすべてを滅茶苦茶に破壊したのである。
天女「なるほど・・・・・・そうでしたか」
男「ああ。俺たちの世代は、大人から、勉強することを馬鹿にされ、使い捨ての性商品として買われ、就職活動で否定の言葉を受け続けた。就職できた者もまた使い捨ての労働力として買われたがいずれ捨てられるだろう」
天女「さぞかし、お辛いことでしょう。気は晴れないとは思いますが、一時の気の紛らわしに、一発わたくしめと戯れましょう。ね?」
男「ああ。だがその前にやっておきたいことがある。宰相よ、居るか?」
全裸の女宰相が、ベッドの中の下のほうからすっと上がってきた。
女宰相「パイずりの途中ですが、新しい指令ですか? 陛下」
男「ジパングに向けて、長距離ミサイル攻撃をせよ。誤差はどれくらいだ?」
女宰相「わがミサイルは、現時点で50cm~1mくらいの誤差があります」
男「ピンポイント攻撃を命じる。以下の標的へ、無慈悲なる鉄槌を下せ」
○○経済財政会合 政府○○党経済政策局 ○○工業人事課 ○○テレビ局放送企画局 ○○テレビ局採用課 ○○商社新卒採用チーム・・・
(延々と男は、とばっちりと逆ギレだけで固有名詞を連発する。おそらく相当疲れているのであろう。さらに、「リアルの日本国」とこの物語にある「悪夢の中の日本国」と「帝国と同じ"真の現実世界"にあるジパング」はどれもパラレルワールドの別物であり、明らかにここで男のやっていることは、とばっちりと逆ギレのオンパレードである)
ジパングの官房長官「ただいま、我が国に国籍不明の飛翔体が、512発程度発射されました。イージスシステムにより、すべて撃墜いたしました。国民の生命と安全には直ちに影響は無いものと思われます。このような攻撃には、遺憾の意を表明いたします。只今、米軍と共に、攻撃を仕掛けた国家の特定を急いでおります。特定されれば、直ちに米軍とともに完膚なきまでに反撃することを、大統領と首相との緊急電話会談で確認いたしました」
男「おい、グレートヒェン姉妹を呼べ!」
姉妹「はい、私たち参上しました、今ここに」
男「ジパングの国営放送をジャックしろ。今、俺は、何故だろうか、セックスよりも遥かに気持ちいい心境だ」
(この物語に登場する"事実"及び"固有名詞"並びに"具体的な内容"はすべて架空のものであることを、再々度強調しておきます)
(つづく)
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