【完結済】木曜日には血の雨が降る 〜日本人女子高生とアメリカ軍士官の物語〜

作者 人形使い

149

53人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

この作品は、前回のカクヨムWeb小説短編賞・最終選考、SF週間ランキング最高3位を記録した『ユリシーズ・ミッチェル中尉の告白』の長編作品にあたります。前回の短編賞でSFというジャンルを賑わせたのは記憶に新しいものです。伊藤計劃先生の『虐殺器官』オマージュ作品というワードにひかれた私は読み進めることになったのですが、一万字弱に刻み込まれた近未来の世界観は決して『虐殺器官』に依存するものではありませんでしたし、「BBシステム」の存在が作品を自立させていました。

そして長編となって帰ってきたのです。

女子高生が登場したのです。アメリカ軍士官と女子高生、関係の薄い二つの言葉が作品中で違和感なくすらりと脳内に入ってきてしまったのです。『虐殺器官』を国際軍事謀略サスペンスと表すのなら、此方は国際軍事言語感染とでも言えばいいのでしょうか?女子高生の生活とソルディスタンでの戦闘、高校でのいじめとBBシステム、遠いように感じる二つの出来事が繫がれた瞬間の驚きは、炭酸水を頭からかぶった程でした。

オマージュ作品……であることには違いありません。世界観には確かな共通点があります。しかし、それだけでもないのです。「言語生命体」と文中で表された X は私たちの中にも存在しているのではないか、そう思ってしまうほどに身近な作品なのです。

とにかく読んでいただきたいのです。『虐殺器官』を読んだことのある人はより鮮明に、読んだことのない人はより新鮮に味わえると私は思うのです。

★★★ Excellent!!!

あらすじにもあるが、この作品は伊藤計劃作「虐殺器官」のオマージュである。言語による虐殺等の類似点はあるが、MGSV等の複数の作品からも影響を受けている。

この作品はSFミリタリーであるが、それにしては特異な点がある。それは兵士の戦場と女子高生の日常が同時に綴られ、二つの相容れないとも思える世界が結び付く点である。
この作品で重要な要素は言語である。もっと言えば言語生命体、ソルド語である。
そして、最新通信システム「BBシステム」。
虐殺の言語と人を繋げる技術により、二つの世界は一つに結び付く。

言語生命体。それは人を侵食し伝播する。

★★★ Excellent!!!

 伊藤計劃『虐殺器官』のオマージュということだが、残念なことにというべきか幸いなことにというべきか、私はそれを読んでいない。一編の全く新しい作品として読んだわけだが、『虐殺器官』を知っているかどうかなどは全く以ってどうでもいいことのように思われた。
 裏を返すと、この作品はそれだけ『立っている』と言えるだろう。

 国家、言語、宗教、人種、思想など、それぞれ独自に存在する『異質なもの』が接触するところには、必ず摩擦が起こる。
 人間は互いの文化を尊重することによって相手を受け入れて行く。
 この中で『兄弟』として共に戦ってきた米軍と自衛隊のように。

 互いを受け入れる中で重要な鍵となる『言語』。これを尊重できるかできないかで、友好になるか憎悪に変わるのかも決まると言っていい。
 もしも、その『言語』を兵器として使うことができるのならば……?

 本作では非常に温度差のある二つのホームを読者は行き来することになる。
 片方は戦場、もう片方は日本の高校。
 一見何の接点もない二つの場所が、一人の米軍士官によって結ばれる。

 紛争地で『BBシステム』という通信システムを駆使し、リョウヘイという名の自衛隊員らとともに命をかけて戦っていた彼、ユリシーズ・ミッチェル。
 片や、日本の高校で壮絶ないじめの中心にいた女子高生と彼女の幼馴染の男子生徒。リョウヘイの娘・雪菜と、BBシステム開発者の息子・碧の二人である。

 2034年8月10日木曜日、羽田・成田両空港で起こった自衛官70人による銃乱射テロ。
 2034年11月9日木曜日、アメリカ全土で20000人の死者を出した『血の木曜日事件』。
 そして、学校での壮絶な『いじめ』。
 これらはすべて繋がっている――。
 『血の木曜日事件』の半年後に雪菜と碧の前に現れたユリシーズの口から語られる驚愕の事実。

 重い題材ながらも、丁寧な… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

女子高生の日常いわゆるSNSでのいじめと、戦場そしてアメリカで起きた虐殺の絶妙な〈harmony/〉。私たちは言語を用いることで複雑な思考を可能としたが、言語によって思考を支配されているという見方もできる。
複雑な感情は、言葉によって単純化される。
…そして言語は時に人を操ることすらできる!

★★★ Excellent!!!

史実を絡めた架空歴史を下敷きに、戦争とテロ、悪意の暴走、といったテーマを見事に融合させたSF長編です。
文章と表現が丁寧で非常に読みやすく、シリアスな内容でありながら優しさが心に残る物語でした。
「虐殺器官」のオマージュであるということですが、知らずに読んでも理解に困ることはありません。(もちろん、知っている方はより楽しめることでしょう)

戦争やテロといった重い題材、そこに絡む大国間の思惑という複雑な背景。
アメリカで、また日本で起きた、大量殺戮事件の真相。
SNSが切っ掛けで引き起こされた、凄絶ないじめ問題。

一見すればバラバラに起きたそれらの悲劇は、一人のアメリカ軍士官と、一人の女子高生が出会うことで、徐々につながり、真相が解明されていきます。その真相は驚くべき事柄なのですが――……。
それでもこの物語に描かれているには、大国の思惑と起きてしまった悲劇に翻弄されつつも、友や家族のために戦った人々の生き様であり、その悲劇がもたらした逆境に立ち向かう少年少女の姿でした。

非常に読み応えのある、そして考えさせられる作品です。
SF好きの方はもちろん、ヒューマンドラマが好きな方にもぜひ読んでいただきたいです。

★★★ Excellent!!!

読ませる文体に迫力の戦闘シーン。これが本作の魅力である。
クラスメートのいじめと言語によって操られる人々の姿を描いた本作は、宮内悠介の『あとは野となれ大和撫子』を彷彿とさせる。
もっと続けて書いてもよかったかもしれない。個人的には加奈と雪菜と浩一がこの後どうなるのかがすごく気になる。親に倣って従軍する立場になるのか? わくわく。

★★★ Excellent!!!

本作品は、伊藤計劃の「虐殺器官」のオマージュ作品と言うだけあり、「虐殺器官」の世界観と共通している点が多い。
読んでいるだけで、作者がどれだけ本作品を、「虐殺器官」を愛しているかが分かってしまう。

が、本作品は、「虐殺器官」のコピー作品では決してない。
読者独自の設定や世界観も豊富に入り込ませている。

特に本作品の大きな特徴の1つは、2人の人物の視点から織り成されるストーリーだろう。別々の視点から創り出されるストーリーは、やがて1つに収束する。
その過程が読者の心を激しく揺さぶり、その世界観にいつの間にか引き込まれてしまうであろう。

もう一度言おう。
本作品は、「虐殺器官」のコピー作品ではない。オマージュ作品である。

本作品は、ストーリー、設定、世界観。
どれをとっても、「虐殺器官」のオマージュ作品に相応しい作品である。

「虐殺器官」を並行して読み進めれば、本作品の魅力が一層際立つであろう。
そうすれば、貴方は「人形使いさん」と「伊藤計劃」の作品の世界観から抜け出せなくなるだろう。

★★★ Excellent!!!

まるで「虐殺器官」のような、CODのような、MGSのような……そんな壮絶な世界がここにあります。

その世界や状況を語る文章もまるで既刊されたもののように洗練されており、読者を否応なしに引き込みます。

戦争を主軸においた作品なので残酷描写も多いのですが、反面、並行して進む高校生の青春模様も描かれており、どう工夫したらこのような共存が可能とできるのか、巧みな技に何度も唸らされます。

まるで本物の映画鑑賞……いやFPSをプレイしているようなこの厳しい戦場へ。
あなたも一歩足を踏み入れてみませんか?

★★★ Excellent!!!

背景となる設定と描写が、丹念に考えられているのが伝わってきます。
そして、ここで描かれているのは二つの対象的な物語です。

一つは、近未来での生々しい戦争の『現実』。
もう一つは、自衛官の娘でファザコンを自覚する、女子高生ヒロイン雪菜をめぐる青春群像です。

その二つはどのようにして重なるのか? それは読んでのお楽しみです(^o^)

米国軍人ユリシーズはタフで冷静、それでいて情のある男性で、個人的にとても魅力的なキャラクターだと思います。

★★★ Excellent!!!

筆者である人形使い氏曰く、小説を書いたのは短編四作と本作一作とのこと――。
それが真実ならば、まったく以て嫉妬すべき才能である。本作は、メタルギアソリッドでおなじみの小島秀夫監督の盟友でもあった故伊藤計劃氏へのオマージュ。


正直に申し上げると、私は伊藤計劃氏の著作を読んだことがない。
本作は、そんな読んだことのない愚生でもその世界観に没入させられてしまう戦争と平和のまったく異なる色彩模様を克明に描いた作品である。


かたや戦争における凄惨さ、
かたや日常における凄惨さ、


そして、そこに起こる近未来のデバイスがもたらしたミーム汚染が物語の進行にしたがって、徐々に浸透しているということが明らかになる。


この『徐々に』という感覚は、本作においていちばん気持ちのいい部分ではなかろうか。


なにより、本作にはあたかも読者すらミーム汚染に掛けてしまう魅力があるのは間違いない。そのことについては、読み進めていけば自ずからおわかりいただけることだろう。



架空の国家ソルディスタンの歴史や風土、筆者によって作られた近未来的なデバイスと現代となにもかわらない日常の殺伐さ。このあたりの描写にもまた目を見張るモノがあり、今後の活躍にますます目が離せなくなる。
是非ご一読願いたい。

★★★ Excellent!!!

注)これは「ユリシーズ03(下)」まで読んでのレビューである。今後の内容次第で改稿することがあるかもしれないのでご了承いただきたい。


本作は同著者による短編『ユリシーズ・ミッチェル中尉の告白』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887426682)を長編として再構成したものである。

短編の時点で、すでに緻密な世界観とリアルなSF。ミリタリー考証の手腕を見せていた人形使いさんだが、長編として再構成するにあたって「複数人視点の切り替え」での語り口にしたのは唸った。

『ユリシーズ・ミッチェル中尉の告白』は、タイトル通りミッチェル大尉が中東の国ソルディスタン人民共和国で味わった不可思議な体験と、その後に起こったワシントンでの謎のテロの真相を語る内容となっている。

長編はこのユリシーズ中尉の独白をさらに深掘りする形にするのかと思いきや、あろうことかユリシーズ中尉の物語と並行して、日本の一女子高生の物語が語られる形になった。

さぁ、これで短編の方の読者は先が読めなくなった(笑) 一見何の接点もなさそうな両者だが、ソルディスタンでの出来事と大規模テロ……「血の木曜日事件」を通じて、確かに両者には不可分のつながりがあることが明示されてくる。

短編の方を読んでいれば真相になんとなく察しが付くが、二人の物語はまだ佳境にも入っていない。誰にもその先は予想できないのだ。

ソルディスタン人民共和国に隠された秘密とは? 「血の木曜日事件」の真実とは? 軍人と女子高生の未来は?

実に楽しみな作品である。

★★★ Excellent!!!

本作品は「ユリシーズ・ミッチェル中尉の告白」の流れを汲んでいる。
この名に聞き覚えが無い方は是非そちらもご覧頂きたい。

さて、連載中の作品にレビューを書くのは控えていたのだが、読む手を進めるままに書く手も止まらなくなっている。それほどにこの作品は私の脳を浸食した。
本作は前作を、前作は別作の流れを汲み絶え間なく続いている。しかし同時に、作者が述べている様に各作品の根幹にはそれぞれのメッセージが込められているのだ。

作者の知識とその文体が編み出すこの作品は、「読みやすさ」と「読み応え」が整然と並んでいる。このコンテンツに集う皆様は、このファクターを同居させる事がどれ程に難度の高い事かお分り頂けるはずだ。

私は前作を「風」と評した。
今作はさながら「蝶」だ。流麗な文体で舞いながら私達を華麗に翻弄する。作者の「知性」光る鱗粉が散るままに、私達は蝶を追い続けるのだ。

蝶は先を示し舞い続ける。
それは本作品の連載、と言う意味では無い。
作品の源流を辿れ。その「文脈」は未だ続く。その流れを追い、更なる脈流へと私達も続くのだ。

あぁ、また衝動に負けてしまった。

★★★ Excellent!!!

一方はオリエンタルな文化慣習。
一方は21世紀のハイテクネットワーク。

一見無関係に見えるこの二つの絶妙な連関に気付いた時、読者として戦慄が走ると共に物語内でも衝撃的な展開が見事に繰り広げられる。
これだけ高度な作品をカクヨムで読めることの幸運に感謝です! 次話が楽しみですね!