エピローグ2
222
「ミーナが目を覚ました」
「本当ですか!?」
「もう問題ない。今は悠久の魔女様と感動のご対面中だ」
受話器から聞こえるロウさんの声に、俺は胸をなでおろす。
「本当に、良かったです。よければ――ロウさんもこれから来ませんか?」
俺の誘いに、ロウは笑った。
「俺は飲まないし、面倒事は御免だ。ヘッドは当然だが、どうせタルサだって酒癖悪いんだろ? アイツら本当は馬鹿なくせに、普段は優等生ぶってるからな。多少のガス抜きは必要だろうが、それに付き合わされる方はたまったもんじゃねぇ」
ロウの言葉に、今度は俺が笑った。
酒癖が悪いというか、あの二人はわざと酔っぱらって栓を外している節がある。
「断った俺が言うのもアレだが、ウチの連中もよろしく頼む」
ロウとの通話を終え、俺は今日も受付をしているコメットさんに礼を言うことにした。
「電話を貸して下さってありがとうございます。……それと、こんなに騒いですみません」
「いえいえ。私たちは慣れてますし、実はここでの飲み食いは協会の収益にも貢献するものですから――もっと飲み食いしていってくださいね!」
額面通りに受け取って良いのか怪しいが、にこりと笑うコメットさんに救われた。
俺とコメットさんが受付の中から神ランキング協会を見渡せば、そこはもはや祭りのように騒ぐのんべぇたちでごった返していた。
そこにはリザードマンたちの姿もあり、いつもより盛況だと一目でわかる。
タルサが「今日は全て妾の奢りじゃ!」と宣言したせいで、あちこちで飲み比べ勝負が始まり、当然のように賭け事が行われ、その取り締まりでメリッサさんが金を集めている。
ヘッドさんは二回戦で茹蛸のように顔を真っ赤にして敗退していたが、タルサは準決勝まで進み、広場の中央でサイクロプスさんと飲み比べ中だ。
体格的にタルサが不利だと思うが、そんな俺の心配はどこ吹く風だ。
タルサがジョッキを傾けるたびに、そのたわわな胸が揺れて歓声が巻き起こっている。
……まったく、
「アイツら、いつまで飲む気なのよ?」
俺と同意見の声に目をやれば、壁際でアリシアが腕を組んでいた。
アリシアはあまり酒が飲めないらしいが、祝杯の場というところで駆けつけてくれた。
……悠久の魔女が蘇ってから、すでに一週間が経過している。
そして、国民の批判や不安を抑えてくれたのはアリシアだった。
アリシアはこの国のために、今回起きた騒動をオブラートに包んで公にし――その結果、悠久の魔女様が蘇ったと宣言したのだ。
混乱は間違いなくあったが、エターナルはまた元の平和な国へと戻りつつある。
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