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 俺が振り返ると、そこには馬を操る戦士たちの姿があった。


 馬に跨るリザードマンはそれぞれが二人乗りしていて、背中に様々な種族ののんべぇたちを乗せている。そんな軍団を率いるのは、男らしく手綱を操るメリッサさんだった。


「待たせたな!」


 メリッサさんも二人乗りしており、その背にはヘッドの姿があった。


「タルサも説得されちまったか?」


 ヘッドが笑いながら馬から飛び降り、ナイフを構えた。


 投擲されたナイフが正面に迫るゴーレムの水晶を貫き――それを火蓋に戦闘が始まる。


 ドワーフさんが弓を放って足止めしたゴーレムにリザードマンたちが群がって重心を崩しており、その隣ではサイクロプスさんが二回りも大きいゴーレムに正面から斧で斬りかかっている。それを見て血が騒ぐのか、メリッサさんも剣を抜いて雄叫びを上げながら戦地へと赴いていく。まったく、頼もしいったりゃありゃしない。


「行くぞ? お主様?」


 タルサの足元に、魔法陣が生まれた。


 タルサはこの場を彼らに預け、空を飛ぶ気らしい。


「ミーナを頼む」


 俺に背後から抱き着いたタルサを見て、ヘッドが口を開いていた。


「敵の心配とは余裕じゃな? まさか……浮気かぁ?」


「お、俺はメリッサ一筋だっ!!」


「くくくく。知っておるわ!」


 否定するヘッドを笑い飛ばし、タルサは俺と共に上空へ飛び上がった。


 タルサは旋回しながら急降下して、ゴーレムの群れを縫うように避けていく。まるでジェットコースターのような迫力に恐れ慄いている俺のことに気づくと、タルサは背後から笑い声をあげた。密着するタルサの胸が俺の背中にぴっちりとくっついていて――俺はどこに神経を向ければいいのか、まるで分からない。


「と、飛べるんなら、裏口とかいくらでも安全なルートがあるだろうがっ!?」


「いや、時間も無いし正面突破じゃっ!」


 タルサはお屋敷の玄関前に立つゴーレムへと、まっすぐに突っ込んでいく。


「当たるってぇええええっ!!」


「当てているのじゃぁあ!」


「主語は何だよぉおおっ!?」


 タルサは正面に魔法陣を展開した。


 魔法陣を盾に、タルサはさらに速度を上げる。


 タルサは空を飛ぶ勢いのままゴーレムの腹を突き破り、ついでに玄関の扉まで吹き飛ばしてしまった。強引すぎるけれど、清々しい正面突破だと思う。


 俺たちはこうして、お屋敷への侵入に成功したのだった。

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