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「話が早くて助かるのじゃ」


 アリシアはどかりと席に着きなおすと、自らの胸に手をやって口を開いた。


「私はアリシア・ルル・マグナよ。エターナル大教会の現主教を務めているわ。悠久の魔女様に魔力を供給している最大の功労者と思って頂戴。ちなみに、私は小人族で立派な大人――この見た目を馬鹿にする奴は全員後悔させてやるから、覚悟しておきなさいっ!」


 最後の口上は、どうやら俺に向けられた言葉らしい。


 生意気な子供にしか見えなかったが、実は年上なのか?


「アリシア殿は百二十七歳じゃよ?」


「バ、ババ――すげぇ年上じゃねぇか!」


 人は見た目によらない――というか、普通の人間じゃなかったらしい。


 小人族の寿命が分からずピンとこないが、思わず口を滑らすところだった。人間換算だと、アリシアはどれぐらいの年齢になるんだろう?


「合法ロリって奴じゃな? 素直に百歳越えであの美肌は羨ましい限りじゃ」


 タルサは笑いながら同意を求めてくるが――それをアリシアがめちゃくちゃ睨んでいる。


「どういう意味か知らないけれど、悪口に聞こえるわよ?」


「くくく。妾の国の誉め言葉じゃ」


 タルサはアリシアの視線を受け流し、ミーナへと視線を向ける。


「さて、簡易的じゃが、アリシア殿がどのような立場の人間か理解できたじゃろうか? 魔術や願いによる戦いが真価を持つこの世界では――魔力を供給し、信者をまとめ上げる教会とは国の大きな資産じゃ。悠久の魔女殿ほどの唯一神がおる国の場合、それは農業や軍事力よりも国力を高める要素となろう」


 タルサは腕を組み、さらに言葉を続ける。


「世間知らずなシュウ様とミーナ殿のために話すが、この国は他国から〝奴隷国家〟と呼ばれておる。それはこの国の成り立ちから生まれた言葉なのじゃが――」


「その俗称を使うのはやめなさい!」


 怒声に顔を上げれば、アリシアがタルサを睨みつけている。


 先ほどまでよりもその声色は真剣で、本気でタルサに怒りをぶつけていた。


 そんなアリシアに、タルサは薄くため息をつく。


「これも妾にとっては誉め言葉じゃから、落ち着いて続きを聞いて下され。そもそも、アリシア殿が気に食わなくとも、エターナルが奴隷国家と呼ばれておるのは事実じゃろ? それに、妾はそれが侮蔑の言葉だとは考えてはおらん。むしろ、それは誇るべきじゃと妾は思うのじゃが――そういう意味で捉えてくださらんか?」

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