49
注意書きが書かれたのは五年前なのに、その物語は表示され続けている。
そのサイトには
二〇十九年七月十日。
それは、彼の
間違いない。
これは彼の書き残した物語だ。
私はその日から、少しずつ彼の物語を読み始めた。
私が本というものを読み慣れていないからなのか、それとも、彼がやはりアマチュアだからなのかは分からないが、読みにくかったり理解しにくかったりした
しかし、彼の物語は面白かった。
最初は彼が書き残したから読んでいたにすぎなかったけれど、彼という要素を抜きにしても、その物語は面白かったと思う。
それが本当に客観的に
しかし、ヒロインが主人公のために犠牲になろうとするシーンは、私の心に深く残った。
彼は心のどこかで〝自己犠牲は美しい〟と考えていたのかも知れない。
だから、彼は見ず知らずの私を助けたのだろうか?
私はそんなことを考えながら読み進めたが、その考え方は間違っていたのかもしれない。
なぜなら、その物語は犠牲になろうとしたヒロインを主人公が救って幕を閉じたからだ。
彼は自己犠牲を美しいと感じつつも、それを否定することで物語を終えている。
彼の物語を読むことで、私は彼についてより深く知ることができたと思う。
私は次に、彼の書いたもう一本の長編も読むことにした。
通学中に電車の中で彼の小説を読み進めるのは、私の日課になった。
彼の物語を読めば読むほど、彼のことを考える時間は増えていった。
頭の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます