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 私は両親とともに彼の葬儀に出席した。


 式場の中央には供花きょうかに囲まれた彼の顔写真があり、写真の中の彼は学生服で、とても真面目そうに見えた。彼の家族や友人たちが数名訪れており、私は両親と共に何度もお礼を述べた。


 彼の遺体は損傷が激しく、式場でその顔を見ることは無かった。


 出棺しゅっかんの時、彼が小説を好きだったというエピソードが語られていた。


 彼は物語が好きで、自らも筆を取り物語を書いていたらしい。


 ひつぎには何冊かの小説がそなえられていた。


 彼はどのような人だったのだろう?


 彼はどうして私を助けたのだろう?


 彼の好きな小説の題名は何だろう?


 私はそれを知りたかったが、軽々しく口をきける雰囲気ではなかった。


やなぎシュウ〟


 私は彼の名前を、生涯忘れないだろう。

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