第三話  期末テストまであともうちょっと

 中間テストと期末テストの一週間前からは、吹奏楽部は自主練習期間に入る。ここは部活によって期間が変わる。

 練習してもいいけど、練習せずにそのままおうちに帰ってもいい日が一週間前からテスト前日まで。テストの日が始まったら、終わるまでは部活自体やっちゃだめな日。こっちは全校生徒決まってる。

 テストは毎日午前中に終わるのが三日間。最終日も部活やっちゃだめ。

 ……私は普段練習頑張ってるので、自主練習期間はほとんど部活を休んじゃってます。で、でもちゃんとテストで点数取ってるから……いいよね……?


 今日から自主練習期間。今日の授業が終わり、帰りの会も終わると、私は荷物をまとめて帰る準備。

 ……すぐに準備できたので、早速帰ることに。

「あら、雪乃さん。雪乃さんは今日もう帰るのかしら」

 ドアの前で知尋ちゃんと渋滞しちゃった。

「うん。知尋ちゃんは?」

 とりあえず私たちは廊下へ出た。

「わたくしも帰るわ。体が休まる貴重な一週間なのだから」

「テスト前なのに休まるの?」

「テスト前だからこそよ。習い事は夕方からだから、本来部活で学校にいるこの時間は自由に時間が使えるの」

「そうなんだ」

「だからお友達と遊ぶときはどうしてもこの時期になってしまうけれど、ちゃんと成績を取っているから、お父様もお母様も許してくれているわ」

 確かに今の知尋ちゃんの顔は、いつもよりもちょっと穏やかな……気がする。

「知尋ちゃんが友達と遊ぶときって……どんなことしてるの?」

「一緒に絵を描いたり、お買い物をしたり、お茶したり……かしら」

 たぶん、私の想像してるお絵描き・お買い物・お茶よりもっとすごいのだと思う。

「そうだわ。雪乃さん、急だけれど、今日わたくしと遊ぶというのはいかがかしら」

「えっ? いいの?」

「ええ。フルートとファゴット、あとオーボエも、いつも苦楽を共にしている仲間。雪乃さんはわたくしの家にはまだいらしたことがないわよね?」

「うん、ない。見てみたいな、知尋ちゃんの家」

「ではわたくしの家でお茶しましょう。昨日お父様が紅茶をいただいたの」

 うん、やっぱり想像してるのよりすごいお茶になりそう。

 と、ここで私の左肩がぽんぽん。このリズムでわかる。

「じゃな、雪乃、林延寺」

「ばいばい」

「ごきげんよう」

 流都くんはいつものように手をちょっと挙げて、軽やかに去っていった。

「雪乃さんには雪乃呼びなのね」

「うん。去年文化祭で一緒にリーダーやってから、仲良くなって」

「なるほど……では参りましょう」

 知尋ちゃんが歩き出したので、私も歩き出すことに。背筋ぴしっとしてるなぁ。

 私たちが歩いている間、いろんなところからちょこっと視線を感じるような。知尋ちゃんかわいいからだと思う。

「じゃね雪乃知尋~!」

「ばいばい」

「ごきげんよう」

 敬ちゃんが小走りで通り過ぎていった。廊下走っちゃ先生に怒られちゃうよ?


 げた箱にやってきた。

「あれ、流都くん」

「ん? 雪乃に林延寺? 部活は?」

 靴を履き替えようとしてる流都くんがいた。

「テスト一週間前になると帰ってもいいよ期間になるから、帰るところだよ」

「そうなのか! バックギャモン部もそうだけど……林延寺は?」

「わたくしも吹奏楽部ですもの。雪乃さんと同じよ」

「あれ、そうだったっけ?」

「そうですわ」

 私たちは靴を履き替えた。

「あ、あのさー」

 靴を履き替え終えた流都くん。

「お、俺も一緒に帰って……いいか?」

 私は知尋ちゃんを見た。

「ええ。では一緒に帰りましょう」

「まじか!! 林延寺と一緒に帰るの初めてだ!」

 私たちも靴を履き替えた。


「へー、雪乃と林延寺にはそんなつながりがあったなんてな」

「ファゴットはフルートとオーボエとは仲良しなんだよ」

「切っても切れない関係とはまさにこのこと。そういうこともあり、今日遊ぶことをお誘いしたの」

「遊ぶ? 雪乃と林延寺、今日遊ぶのか?」

「うん。お茶? するんだよね」

「わたくしの家をまだ見たことがないと言っていたから、わたくしの家でお茶することにしたの」

「へ、へぇ~……」

 左から順番に、私・流都くん・知尋ちゃんで並んで歩いてる。間違いなく初めてのこの三人での下校。

「そ、それさ。俺も混ぜてくれるとか……だめか?」

「お茶に?」

 流都くんはうなずいている。知尋ちゃんを見ると、

「ええ、構わないわ」

「おっしゃ!」

 流都くんのガッツポーズが出ました。

「雪乃さんも、それでいいかしら?」

「うん、もちろん」

 流都くんのガッツポーズがこちらに向けられました。

「今の時間ならお母様がいるわ。お友達のお顔を見ていただくいい機会になったわ」

 お母様、かぁ。どんな人なんだろう。小学校の授業参観とかですでに見てたりするのかな?

「そういえば林延寺って、なんで吹奏楽部に入ったんだ?」

 あ、それ私も気になる。

「音楽の部活だったから、かしら。オーケストラ部はなかったから、吹奏楽部を選んだだけだったわ。音楽は好きよ」

「そっか。雪乃はなんとなくって感じだったよな?」

「うん。吹奏楽部って音楽のだよね~って思って、ふらっと。ファゴットなんて全然知らなかったけど、今は吹奏楽部に入ってよかったと思ってるよ」

「へー」

 知尋ちゃんは実は部活熱がそれなりにあるみたいで、なんていうか、気合入ってるというか。

「流都くんは、どうしてバックギャモン部に入ったの?」

「バックギャモンは家に古いのがあって知ってて、部活の一覧表でそういう部活があるのにびびったのと、モノポリー部とかドミノ部とかいろいろ回ったけどバックギャモン部の雰囲気がなんかよかったから、とかかな。大会に出たりよその学校との交流も結構してたりってのもおもしろそうだった」

 なんか、こう、男の子が語ってる姿って……こう、かっこいい、というか……。

「あーでも雪乃や林延寺がいるんなら、俺も吹奏楽部入ってたらよかったかなー。バックギャモンはやっててもバックギャモンがうまくなるだけだもんな~。楽器できんのはかっこいいって!」

「楽器できると、いいこと結構あるよね?」

「ええ。お話のきっかけとしては申し分ないわ」

「知尋ちゃんは知り合いいっぱいいそう」

「お父様やお母様のつながりでいろんな人と交流があるわ。お父様も積極的にいろんな人と交流を持つようにしなさいと言っているわ。部活や習い事のない休みの日は、お父様やお母様に連れられていろんな人と会う時間になっているわね」

「なんか林延寺は別次元のやつって感じだ……」

 すごいなぁ。それで部活もあれだけ頑張ってるんだもんね。

「ち、知尋ちゃん、私たちで手伝えることがあったら、なんでも言ってね!」

「急にどうしたのかしら?」

 それでも知尋ちゃんは特に表情が変わってなかったけど、

「なんていうか、知尋ちゃんそんなに頑張ってるんだなって思ったら……こう……お手伝いしてあげないと、知尋ちゃん疲れて倒れちゃったらどうしようって……」

 あれ、知尋ちゃんちょっと笑ってる。

「お心遣いうれしいわ。雪乃さんは部活を一緒に続けてくれるだけで充分よ」

「そ、そう? じゃあ、部活頑張る」

「ええ」

 髪が風になびいて……こんな優雅な雰囲気、私には出せません。

「お、俺も同じクラスなんだからさ、手伝えることがあったら……な?」

 流都くんもずいっと来た。

「ありがとう。必要になったら川音さんも呼ばせていただくわ」

 なんか、こう、友情っていう感じがして、これ、いいなぁ。

「……ち、知尋!」

 突然流都くんが少し大きい声を出した。

「って呼ぶから、ち、知尋も俺のこと、流都って呼べ!」

 あ、これ見たことある。去年の文化祭のあれだ。

「わかったわ、流都」

(呼び捨てだっ)

 私は流都くん、だもん。なんか、知尋ちゃんだから様になってるっていう感じ。

(私が流都、なんて……だ、だめ、似合わないなっ)

「よ、呼び捨てにしろって意味じゃなかったけど、でもうれしいから! よろしくな!」

「よろしく」

 知尋ちゃんが右手を出した。

 流都くんの視線は知尋ちゃんの右手に向けて止まってる。

「よ、よろしく、な!」

 流都くんと知尋ちゃんの固い握手が交わされた。

(私のときは、なかったなぁ……)

 男の子と握手した記憶も……うーん……。

 知尋ちゃんはいかにも慣れていますという感じだった。すっと手も引いて、表情も普通。

 対する流都くんは、手がそのまま止まったまま、表情もなんだかぎくしゃくしてるというかなんというか。あ、手が引っ込んだ。

(たぶん、私も……流都くんと手をつないだら、あんな感じに……緊張しちゃうと思う)


 知尋ちゃんの家は学校からそんなに遠くなくて、もう着いちゃっ……

「ここよ」

「お、おっきぃ……」

「うわさには聞いてたけどさ……」

 おっきぃ。

 塀がずらーっ。門扉もどーん。『林延寺』の表札もかっこいい文字。

「さあ、入って」

「おじゃまします」

 私たち二人は、大きい門扉をきぃっと開けてくれた知尋ちゃんに続いて、林延寺さんの敷地に入りました。

 芝生があるお庭……おうちもあれ三階建てなのかなぁ。


 玄関に着いて、また知尋ちゃんがドアを開けてくれて、それに続いて入る。

「ただいま帰りました」

「おかえりなさいませ」

 まさか……マンガやアニメの中でしか見たことなかったけど……

「これはこれは。お友達もご一緒でございましたか」

 どう考えてもお父さんな感じはしない。ということは……

「あ、え、えと、初めまして。桜子雪乃です」

「どうも、川音流都ですっ」

「二人ともクラスメイトよ。雪乃さんは部活も同じでファゴットパートを担当しているわ。流都はバックギャモン部よ」

「左様でございますか。よきご学友に恵まれております知尋様のことを思うと、わたくしめも大変うれしく……ああこれは申し遅れました。わたくしめは林延寺家に仕える執事をさせていただいております、神條かみじょう大治郎だいじろうと申します。なにとぞ、よろしくお願いいたします」

 スーツ姿。整った短い髪。優しそうな表情。身長が高くて背筋がぴしっとしてて。そう。紛れもなく執事のおじさまだっ。

「おおげさよ大治郎さん。お二人ともこの家にはまだ来たことがなかったみたいだからお茶に誘ったの。大治郎さん、お茶の用意とご案内をお願い。わたくしはお父様にお電話しなければならないから」

「かしこまりました。ではお二人方、こちらへ」

「少し待っててちょうだいね」

 帰って早々何の電話をするのかな。なんてちょっと思いながらも、大治郎さんに連れられて私と流都くんは移動した。


 大治郎さんのてきぱき度はとんでもなくて、あっという間にティーセットが準備された。

 カップもポットも、テーブルクロスもイスもあれもこれも……本当に私と同じ学校に通っている女の子の家なのかな……。

「こちらは昨日、英知えいち様がお友達からいただいたというお紅茶でございます。ダージリンを中心に独自のブレンドをなさったとかで、英知様も気に入っておられました。お客様にお出しする初めての方がこんなにかわいい方たちと知ったら、英知様もお喜びになられることでしょう。どうぞお召し上がりください。砂糖やミルクもございますので、なんなりとお申し付けください」

「あ、ありがとうございます。いただきます」

 作法とか知らないけど……飲んじゃえ。

 ……今までに味わったことのない味なのか、これは……なんて言ったらいいんだろう。でもおいしいのは間違いないと思う。

「おいしいです。なんていうか、初めての味ですっ」

「それはようございました。流都様はお口に合いましてございますか?」

「お、俺紅茶の良さとかよくわかんないや、はは。ミルク入れてみてもいいですか?」

「もちろんでございます。私がおつぎいたしましょうか?」

「お願いします」

 ひとつひとつの動作が画になる大治郎さん。小さなポットからミルクが。

「お菓子もお持ちいたしますので、しばしお待ちください」

 大治郎さんはポットを置くとそう言って、そのままこの広いお部屋から出ていった。

 ちょっと緊張が解けた。

「ゆ、雪乃~。林延寺知尋って、やっぱすごいやつだったんだなー」

「うん。こんなすごいおうちに住んでたなんて、びっくりしちゃった」

 私と流都くんはとりあえずおしゃべり。


「お待たせしてしまったわ」

「おかえりなさい」

 知尋ちゃんが戻ってきた。座る姿も優雅。

「お父さんにどんな電話してたの?」

「今日雪乃さんと流都が家にいらしたという電話よ。その都度伝えるようにしてあるわ」

「きっちりしてるなー。厳しい父さんなのか?」

「怒るとか叱るといったことはまずしないわ。お父様から友達が来たら伝えるようにと言われて、それを実行しているだけよ」

「じゃあ、知尋ちゃんがいい子っていうことなんだね」

「それは知らないわ。わたくしのことより、この紅茶、どうかしら」

 知尋ちゃんは紅茶の入ったポットを持って、自分のカップに注いだ。

「たぶん、おいしいと思う」

「お、俺はよくわからない。ミルク入れてもらったら飲みやすくなったかも」

 私たちが思い思いに感想を言うと、知尋ちゃんはちょっと笑った。

「それ、お父様にそのまま伝えてもいいのかしら?」

「すごくおいしいです」

「奥深い味わいでした」

 すぐに私たちは感想を訂正したら、さらに知尋ちゃんは笑った。

「わかったわ、そう伝えておくわ」

 知尋ちゃんの言う友達とのお茶会って、つまりこういう感じのことなのかなぁ。

 流都くんとのボードゲームで遊ぶのも楽しいけど、こういうのも、なんていうか……独特の雰囲気? それこそ流都くんが言うみたいに深い味わい? とにかくこのゆったりとした雰囲気は私も好きかも。


 しばらくおしゃべりしていると、大治郎さんがお菓子を持ってきてくれた。今日のお昼に知尋ちゃんのお母さんが近所のお母さんたちと一緒に焼いたスコーンだって。

 ハーブな香りがして、これもおいしかった。ちゃんとおいしかったからっ。

 知尋ちゃんの提案で、大治郎さんも一緒に混ざっておしゃべりすることになった。

 大治郎さんからはおうちでの知尋ちゃんの様子や林延寺家全体のことなどを。私たちからはクラスや部活での知尋ちゃんの様子をしゃべった。大治郎さんは楽しそうに聞いてくれたけど、小さいころの話をしだすと、知尋ちゃんはちょっとてれた様子でとってもかわいかった。


「ただいま戻りました」

鈴子すずこ様がお戻りになられたようです。では失礼して」

 大治郎さんは鈴子さん……? のお迎えに行った。

「鈴子さんって?」

「お母様よ」


 大治郎さんが出てからすぐに、知尋ちゃんのお母さんが来たので、私たちはなんかその場に立っちゃった。あ、知尋ちゃんも立った。

「ただいま、知尋。お友達ね?」

「おかえりなさい。クラスメイトの桜子雪乃さんと川音流都さん。雪乃さんは同じ吹奏楽部のフルートパートで、流都はバックギャモン部」

 知尋ちゃんのお母さんは、ちょっとふりふりの薄紫色のブラウスに紫色のタイトスカートで、髪がふわっとあちこちが巻かれてる感じだった。知尋ちゃんと違って黒色の髪。

 知尋ちゃんが私たちを紹介してくれたので、私たちは同時に頭を下げてこんにちはをした。

「初めまして。わたくしは林延寺鈴子と申します。知尋の母です。これからも知尋と仲良くしてね」

「は、はいっ」

 こういうのを……オーラって言うのかな。

「お茶会してるのね。お母さんも混ざっていいかしら?」

 知尋ちゃんが私たちを見てきたので、私は流都くんを見てみると、

「ぜひぜひ! 普段の知尋の話もっと聴きたいです!」

 知尋ちゃんがちょっとてれてるっ。

「うれしいわ。じゃあ着替えてくるわ。大治郎さん、わたくしの分もお願いね」

「かしこまりました」

 そう決まると知尋ちゃんのお母さんはすぐにこのお部屋を出た。大治郎さんも準備に取り掛かったみたい。


 知尋ちゃんのお母さんが混ざって、またそれぞれの普段の知尋ちゃんのお話が始まった。やっぱり知尋ちゃんどこかてれちゃってそう。


「流都くんはバックギャモン部なのですってね。うちの旦那もバックギャモンをするのよ」

「まじっすか!?」

「ええ。また時間があるときにお相手してあげてくれるかしら」

「そりゃもちろん! い、いいよな知尋?」

「わたくしのことは気にせずお父様の相手をしてあげて。わたくしでは弱すぎてつまらないようなの」

「あらつまらなくはないと思うわ。かわいい娘とゲームできるんですもの。でもどうしてかしらね、男の人っていうのは強い人と戦うのが好きみたいなのよね」

「その気持ちわかります! 俺もやっぱ強い人と戦って、白熱するバトルがしたいですから!」

 なんだかいつものおめめきらきらよりももっときらきらさせてしゃべってる気がする流都くん。

「旦那も喜ぶわ。旦那は子供と遊ぶのが楽しい人なの。伝えておくわね」

「お願いします!」

 ……なんだかこうして見てると、今日一日で流都くんはこんなにも積極的に知尋ちゃんやその家族の人たちと仲良くなれてるのって、すごいなぁ。

 だから私もこんなにも流都くんと仲良くなれているのかな。流都くんからこんなに積極的に関わってくれているから、私も流都くんと今こうして仲良くできているのかな。

(私ももうちょっと、積極的にならないといけないのかなぁ……)

「……うわ雪乃、ち、違うぞ! 雪乃とバックギャモンするのも楽しいからな! なんていうかその、強いやつと戦うのと雪乃と戦うのはまた別の楽しみがあるっていうか……だから別に雪乃が強くないからってどうとかそういうのまったくないから! あいや、強くないっていうか、強くても強くなくてもどっちでもいいから!」

「なんにも言ってないよぉ……?」

「げっ! あ、あーはは! と、とにかくそういうことだから、雪乃はこれからも俺とバックギャモンで遊んでくれよな! もちろんバックギャモンじゃなくてもいい!」

「うん。これからも仲良くしてね」

「もちろんっ!」

 とっても楽しいおしゃべりが続きました。


「今日は楽しかったね」

「知尋ってあんなやつだったんだな。もっととっつきづらいやつかと思ってたよ」

 私たちは知尋ちゃんの家から一緒に帰ってる。

「流都くんすごいなぁ。あんなにすぐ知尋ちゃんと、それからお母さんや大治郎さんとも仲良くなってるんだもん」

「すごいかぁ? 俺はいつもみたいにしてただけなんだけどな」

 流都くんはちょっと笑ってる。

「……流都くんが優しいから、今こうして一緒に歩けてるのかなぁ」

 私はちょっとつぶやいちゃった。

「……今雪乃と一緒に歩くことができてるのが俺の力なら、俺は自分をほめてやりたいな」

 親指を立てて、お顔はにかっとしてます。

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