第3章 ロシアンナイト

3-① 即席コンビ結成

注:この物語はフィクションで(以下略)

※キャラ紹介、2章完結時点で更新してますので御参照下さい。


「結城だ、神楽坂係長…………そうか、河童は排除できたんだな。え、1人こっちに連れてくる? どういうことだ? ん~………詳しい事情は戻ってきたら聞く。では、帰り道気をつけて」

 朝9時に掛かってきた神楽坂からの連絡を切る結城。

「向こう片付いたんですか?」

 山川が聞いた。

「ああ、河童は全部できたらしい。で、どういう訳だか狙われていた女性、桐生弥生さんをこっちに連れてくるそうだ」

「は?」

 山川が間の抜けた声を出す。

「事件の影響で村に居づらくなったとか言ってるんだが。まあ、詳しい話は帰ってきてから聞けばいい」

「今からなら昼過ぎには帰ってきますかね」

 長谷部の言葉に、

「いや、河童に協力していた村人を長野県警に連れていくとか言ってたから、夜になるだろうな」

 と答える結城。

「そういえば三島さんと凪野の野郎も見当たりませんね。あ、凪野はまた遅刻か」

 長谷部が一係執務室をぐるっと見回しながら言った。

「三島は内閣府だ。古巣の内閣調査室に行ってる。ウチにも関係あるきな臭い話があるそうだ。凪野は本庁、課長に呼ばれてる。御使い絡みの話があるんだと」

「へ~」

 二人の欠席理由を聞いて山川は思った。

『きな臭い話か……それにしても坂崎さんたち戻ってくんの夜かぁ、長谷部君と二人きりの時に事件は起きて欲しくないな』

 今ここに残っているのは山川と長谷部の二人、結城は管理職なので動ける人数としては数えない。

 別に長谷部が嫌いという訳ではないが、長谷部の方から敬遠されている気がする。川原とか三島などのワンクッションがないと、どう接すればいいのか分からないのだ。

「とりあえず事件が起きるまで待機だ」

 その結城の言葉を聞いて、山川は三階の射撃練習場に向かった。

 妖精事件の時には何の役にも立たなかった。ただ不可思議な状況に慌てふためくだけだった。

 あの時、九堂が間に合ったから良かったものの、そうでなければあの子を死なせていた。

 鍛えなければ。その思いを胸に、標的に狙いを定めP226の引金トリガーを引く。


 執務室に残った長谷部は、パソコンで今までの事件のデータを見ていた。

 その胸に渦巻くのは、自分は役に立っているのかという思い。

 前の職場である機動隊で不祥事を引き起こして零課にトバされた。以来半年、役に立ったという自信がない。

 捜査は坂崎と三島が仕切り、いざ荒事になれば二係のメンツが出てくる。この恵まれた体しか取り柄がないのに、二係の連中には足下にも及ばない。

 結城は実質的な責任者として辣腕を振るい、川原は各種データの整理など裏方業務で役に立っている。

 そして山川がやって来た。坂崎の一般警察時代の後輩で刑事のイロハを教えた弟子のような存在らしい。

 ソイツは当たり前のように坂崎の隣に立っていた。新宿署の鬼警部として機動隊の自分ですら名を知っていた坂崎と仲良く談笑している。

 階級も巡査部長、問題ばかり起こして巡査長にすらなれない自分とは雲泥の差だ。歳は大して変わらないのに、妬ましい。

 まあ要するに気に入らない相手と言うことだ。サシで話したいとは思わない。他のメンツが帰ってくるまで何も起きないように、と長谷部は願っていた。


 だが、そういう時に限って仕事は来るモノである。

「二日前、江東区新砂の下水処理場に人間の手足が流れ着いた、複数のな。検死・司法解剖の結果、大型の生物に食いちぎられた形跡があると分かった。身元だが、年齢はバラバラだが全て成人男性、そしてかなり不潔な生活をしていたようだ。一緒に流れ着いた上着の袖やズボンの裾などが、垢と皮脂まみれだったそうだ」

 結城がそこまで説明した段階で山川が呟く。

被害者マルガイはホームレス?」

「私もそう思って本庁のデータベースを調べてみた。そうしたら本所署と深川署からの報告で関連がありそうなのがあった」

 長谷部が身を乗り出して聞く。

「どんな報告ですか?」

「隅田川川岸の遊歩道に住み着いているホームレスが最近居なくなっているらしい。パトロールしている警官からの報告だが、見かけたことのあるホームレスがポツポツと姿を見なくなっているとのことだ」

「誰かがホームレスを連れ出すか拉致するかして、大型のに食わせている? そして食い残しが下水で流れた……」

 山川の推測に結城が頷く。

「そう見るのが妥当だろう。でだ、山川、長谷部、お前ら二人で組んで捜査に当たれ。取りあえずは隅田川のホームレスに聞き込みだ」

 結城の言葉に長谷部が、

「お、俺たち二人でですか?」

 と声を上げた。

 山川も声こそ出さなかったが渋い顔をしていた。

「そうだ。今ウチに居るのはお前ら二人だけなんだから仕方ない。戻ってき次第、他のメンツも向かわせるから、行ってこい」

 有無を言わさぬ結城の言葉に、不承不承ながらの、

「「了解しました」」

 がハモった。

 こうして即席コンビは結成された。

 

即席コンビ結成 終了

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