第6話『レイジVSキング』

 獅子の雄々しい遠吠えが天高く響き渡る。


「おいおい、そんな大声出したら俺たちのことがバレちまうだろうが」


 レイジが相変わらず気だるそうに言う。


「黙れ、今すぐに貴様を殺してやる」


 獅子となったキングはその屈強な爪でアスファルトを掴み、抉る。

 たてがみが夜風になびき、その雄々しさが強調された。


「やれやれ」


 レイジは肩を竦めると、刀をぶらぶらとさせる。


「その余裕面、今すぐぶち壊してやる!」


 キングがアスファルトを抉りながら突進して来た。

 その迫力に、智志は立ちすくんでしまう。


「相棒、ボケっとしてんな。死にたくなかったら、下がっていろ」


 レイジに言われ、智志は半ば呆けながら後退った。


「死ねえええええええええええええええええぇ!」


 獅子となったキングが飛びかかる。


「怠惰の世界」


 レイジが先ほどと同じ結界を展開した。

 それに捕らわれたキングの動きが鈍る。


「……小癪な」


 しかし、ジリジリとレイジに肉薄して行く。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォ!」


 雄々しい咆哮を発し、その結界を切り裂く。

 勢いそのまま、レイジの身も引き裂こうとした。

 キィン、と金属音が響く。

 寸前の所で、レイジが刀で受け止めた。


「パワーでオレ様に敵うと思うなよ?」


 キングがにやりと笑う。

 その言葉通り、徐々にレイジが押されて行く。


「レイジ!」


「騒ぐな、相棒。うるせえから」


 レイジは鬱陶しそうに言った。


「死ねぇ!」


 キングが更に力を込めると、レイジは力負けをし、刀を弾かれてしまう。

 手放すことは無かったが、体勢を崩し、無防備な姿を晒す。


「終わりだ」


 キングが酷薄な笑みを湛え、必殺の一撃を繰り出す。


「終わりはお前だ」


 体勢を崩したように見えたレイジが、ひらりと舞う紙のようにキングの一撃をかわす。

 キングは勢い余り前につんのめる。

 逆に彼が無防備な体勢となった。

 その背中に、容赦なく刀が突き立てられる。


「ぐああああぁ!」


 キングは悲鳴を上げ、必死にもがく。


「無駄だ。体の重心を押さえているから、逃げられねえよ」


 レイジは欠伸をしながら言う。

 圧倒的優位に立ちながらも決しておごり高ぶることなく、心底ダルそうに。


「お前の能力の高さは認めるよ。けど、その傲慢な性格のせいで足下をすくわれるんだ」


「黙れぇ!」


 キングは尚も脱出を試みようともがくが、レイジはその隙を与えない。


「とりあえず、まあ、黙れ」


 レイジが手の平をキングに置く。

 淀んだ光が放たれキングを包み込む。


「ぐっ……」


 直後、それまで激しく抵抗していたキングが力を弱め、ぐったりとした。


「……強い」


 智志は素直にその言葉を漏らしていた。


「――そこまでだ」


 低く通る声に全員引かれた。

 紫のローブを纏う男がそこに立っていた。


「夢前……さん」


「今宵の戦いはそこまでだ」


「おい、神父野郎、邪魔するんじゃねえよ。オレ様はこの怠惰野郎をぶっ殺さなくちゃ気が済まねえ!」


「その気持ちは痛いほど分かるが、近隣住民が警察に通報したようだ。お前が派手に吠えたせいでな」


 夢前があくまでも冷静に語ると、猛っていたキングは苦虫を噛み潰したような顔になる。


「それに、お前の今の戦い方は危険だ。まだシンクロ率が低いから良いが、今後はもっと主のことも尊重してやれ」


「黙れ、神父野郎」


 キングは吐き捨てるように言う。


「おい、いい加減に離しやがれ」


 それから、レイジを睨んだ。


「全く、どこまでも傲慢な野郎だ」


 レイジが刀を引き抜くと、キングはおもむろに立ち上がり、身震いした。

 その体が収縮し、元の人間の姿になる。


「教会に来い。治療をしてやろう」


「ちっ」


 不服そうながらも、キングは大人しく夢前に付き従う。


「じゃ、じゃあ僕らはこれで失礼します」


 丸夫は最後までペコペコとしながら、夢前とキングの後を追った。


「どうだった、相棒? 七王戦の戦いを見て」


 呆然としていた所で、レイジに問われる。


「……お前、強いんだな」


「あいつがバカなだけだよ」


「ていうか、さっき夢前さんが言っていた『シンクロ率』って?」


「ん? あぁ……説明するのが面倒くせえ」


 智志はガクリと肩を落とす。


「とりあえず、さっさと帰ろうぜ」


「お前は本当に怠惰だな」


「まあ、お前の裏人だからな」


 そして、二人もまた並んで夜道の帰路に着いた。




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