第6話 翔和と健一とD組の実行委員


 朝食の時。

 いつもように綺麗な姿勢で料理を口に運ぶ凛を眺めながら、ふいに浮かんだことを聞いてみることにした。



「そういえば凛は、何の競技に出るんだ?」



 凛は箸を止めて、もぐもぐと咀嚼してゆく。

 食べ途中に話しかけてしまったから、急いで食べているみたいだ。


 ……まぁ、口に物を入れながら話すのは行儀が悪いってことなのかな?


 学校の体育祭は二日間かけて行われる。

 そして競技は組対抗リレー・野球・ソフトボール・バスケ・テニス・バレーボール・卓球・サッカー・ドッジボールと多くあり、野球は男子で、女子の場合はソフトボールだ。

 そして体育祭は全員参加が義務付けられていて、一人一種目は必ず出ないといけないというルールがあった。


 だから、俺も一つは出ないといけないし、凛の応援に行くならどの競技に出るのか事前におさえておこうと思ったわけである。


 凛にこれは来て欲しいって言われた時に、行けないと嫌だからな。

 それに凛のことだ、何種類か出るに決まっているのだろう。


 彼女は食べ終わると、



「全部出ますよ」

「全部!?!?」

「はい。その予定です」



 当たり前みたいに、澄ました顔でそう言ってるけど……。

 流石は凛だなぁ~。

 きっと凛のクラスは彼女を全ての競技に投入して、優勝をとるつもりなんだろう。


 まぁ、最も確実で現実的な手ではある。

 これは腕がなるし、気合も入って——


 ってあれ? 

 凛はなんだか不機嫌じゃないか……?



「あー、凛。なんか、不満でもある感じ……?」

「勿論、あります」

「勿論って……。やっぱり疲れが出て——」

「たくさん出たら、翔和くんの応援が出来ないじゃないですか!!」

「そ、そういうことね」



 凛は頬を膨らませぷんぷん怒り、でも、怒りながらも俺の隣となりにそっと寄り添う。

 俺の胸に手を置き、撫でてと言いた気に頭を傾けてきた。

 要求されるがままに撫でると、頭をぐりぐりと動かすもんだから、なんだかくすぐったく感じる。


 サラサラな髪が首元に当たるんだよなぁ……。

 チクチクというよりは、むず痒くそれでいて様々な感情を煽ってくる。


 俺はそんな気持ちを抑え、彼女の頭をポンポンお叩いた。



「まぁ元気出せって」

「はぁ……。体育祭の実行委員に全ての種目、このままでは翔和くんの応援時間が分身でもしない限りとれません」

「断ればいいんじゃないか? 凛ばかりが働くのもどうかと思うし」

「誰かがやらないなら、やるしかないじゃないですか」



 諦めたようなため息混じりに、凛はそう言ってきた。

 言い方から察するに、クラス全体が一枚岩というわけではないのだろう。


 真面目な性格の凛だから、なんとか行事を成功させようと思っているんだろうな……。



「何かあったら言って。微力だけど、手伝うからさ」

「ありがとうございます。その時は言いますね」



 嬉しそうに微笑む彼女の頭をもう一度撫でた。

 ……大変だったら言えばいいのにな。



「それはそうと……翔和くんの出場競技は決まりました?」

「いや、まだかなぁ」

「決まったら隠さずに教えてくださいね?」

「隠さないよ」

「もし隠しても体育祭実行委員ですから、調べようと思えば調べられますけど……」

「いやいや、職権乱用はやめような?」



 トーナメントは当日、くじで決めるみたいだけど。

 出場登録は事前だもんな。

 勝ち進んで競技の重なりが出てもいいように、それぞれの競技で多めに枠があるんだっけ……?


 凛なら見放題だろうけど、職権を利用してして事前に知るのはルール違反だよな、きっと……。

 しかも、凛ならバレないようにやることも可能だろうし……。



「たしか今日、話し合いがあるみたいだから、ちゃんと言うよ」

「ふふっ。待ってますね」



「楽しみです」と上機嫌な様子を見て、俺は思わず苦笑した。


 うん。決めた。

 彼女が不正を働かなくても済むように、決まったら隠さずに伝えよう。


 そう思ったのだった。




 ◇◇◇




 蚊帳の外ってこういうのを言うんだろうなぁー。


 俺は目の前で行われている話し合いをぼーっと眺めながら、そんなことを思っていた。

 体育祭はクラス対抗ということもあるから、熱が入っているんだろう。

 話し合いもどこか、ピリッとした雰囲気があった。


『どの競技に誰が出るか?』

『プログラムが重なっている場合はどうするのか』

『応援歌とか作る?』

『勝つためにどうするか?』


 みたいな話が出ている。


 まぁこういったクラスの話し合いは、スクールカースト上位……いや、この場合はクラスカースト上位と言うべきだろう。

 そういう分類の人達によって話が進んでゆくものだ。


 だから、俺みたいに運動が得意ではない人は、空気と化し行く末を見守るというスタンスを貫いている。


 現に俺が所属している1年D組の話し合いも、所謂カースト上位達が白熱していた。

 主に陣頭指揮を執っているのが、体育祭実行委員の二人である。後はそいつらが属しているグループメンバーが中心って感じだ。


 放置していれば勝手に決められ、俺らの意見は無視されるのがオチだが……。

 その中には健一がいるわけで、周りが暴走して嫌な気分にならないように上手くコントロールしながら話を進めていた。


 ……健一も苦労人っていうか損な性格をしているよなぁ。

 気遣いが半端ないし……。



「んじゃ、まぁこんな風に決めることが多いんだが……。やるからには、楽しく後腐れなくやろうって言うのがスローガンだなっ!」



 健一が教卓の前でそんなことを言い、ニカッと爽やかな笑みを浮かべた。

 その言葉に反応した体育祭実行委員がため息をつき、やれやれといった様子で肩を竦める。

 それから、眼鏡の真ん中を押し上げ口を開いた。



「そういう加藤の博愛主義なご高説はごもっともだよ。けど、それは詭弁で妄言だ。やるからには勝つって言うのが当たり前の考えで、総当たりでもないトーナメント方式なのだから仕方ないだろう?」



 鼻につくような喋り方は、見るからに神経質そうだ。

 彼が喋り出すと、何故かシーンとなりみんなが聞く姿勢に変わる。


 インテリ眼鏡で黒髪で高身長…………そして、イケメン。

 そんな絵にかいたような優等生っぽい男がF組の体育祭実行委員である中丸達也なかまるたつやである。

 見た目と性格が想像通りって言う人物なわけで……言動から自信家であることが窺える。


 ちなみに、健一と同じリア充グループの一人だ。


 実際、中丸の自信通りスペックはかなり高いらしい。

 関わり合いがないから、そこまで知らないが……成績もよく、バスケ部の一年生レギュラーらしい。


 これは、あくまで伝聞なんだけどね。

 一学期はまともにクラスメイトなんて覚えていなかったし、顔と名前が一致したのは夏休み明けだもんなぁ……。


 俺は自分の情けなさに肩を落とす。

 そして、ため息をつくともう一度、前で話す健一に視線を戻した。



「かーっ! 中丸は頭がかてぇなぁ~」

「加藤が緩すぎるんだよ。勝つために最善を尽くすのに、仲良しごっこは必要ない」

「いやいや~、そんなことねぇぜ? クラス仲良しはいいことじゃねぇか」

「勝負で情は不要の産物だよ。有無を言わせないリーダーシップが必要だと、僕は思う」

「リーダーシップね~」

「他人事のような反応だが、クラスのリーダーは加藤だよ」

「はい……? 今のは中丸がやりたいからの発言じゃねぇのかぁ?」

「違う。僕が言いたいのはリーダーの理想像だよ。残念ながら、僕は体育祭実行委員でやることも多い。それに、言い過ぎてしまう僕にはクラスを引っ張るほどの器を持ち合わせていない。だから、加藤が纏めるのに適していることがわかる」

「ははっ。それは光栄だなぁ~」

「だが、そう思うと同時に、加藤にはさっき言ったような勝利に貪欲な理想の指揮官であって欲しいとも思っている」



 言葉はやや上から目線な中丸だけど、彼の言いたいことはわかる。

 勝利を狙うなら、切り捨てる時は切り捨て勝ちに貪欲であることは重要だろう。

 中丸が所属しているバスケ部は県内で一、二位を争う強豪だから、余計にそういった考えが根強いのかもしれない。


 そんな中丸の事情を理解しているであろう健一は、静かに首を横に振った。



「悪いが中丸。俺が率いるなら、なおのこと“楽しく”がモットーだな」

「だが、加藤……」

「そうカリカリすんなよ。だってよ、恐怖政治のような圧迫は軋轢しか生まねぇ。それに何と言っても————勝っても嬉しくねぇーから」



 健一の言葉に顔を伏せていた人たちも顔を上げ、前を見る。

 さっきまでは、『飛び火は勘弁』って感じで我関せずを貫いていた人もこぞって前に視線を移していた。

 どうなるんだろうと、様子が気になっている……そんな視線だ。


 健一は、みんなの視線が集まってからゆっくりと口を開いた。



「だってさ。楽しみたくないか? 高校一年のこの面子で、いられるのもクラス替えまでなんだし、ギスギスした関係なんて嫌だろ?」



 健一の言葉にみんながうんうんと頷いた。



「体育祭は、文字通り“祭”なんだぜ? 馬鹿みたいに騒いで、馬鹿みたいに楽しんで、それで勝てればなお良い。それでいいじゃねぇか。それに俺は、やるからには適当にやるつもりはねぇよ。楽しみながら勝つ方法をとるつもり」

「加藤、そんな方法はあるわけない。夢と理想だけでは……」

「まぁ中丸が納得しないのもわかるし。もし、負けた時の責任の所在が欲しいなら簡単だ」

「簡単……?」

「負けたら“全責任は俺”ってだけ」



 ——出来ることなら楽しみたい。

 それはみんなが抱える当たり前の心理の流れ。

 でも楽しめないのは、楽しめる相手がいなかったり、嫌な思いをする可能性があったり、疎外感を感じたりするからだ。


 特にスポーツを嗜む体育祭のようなイベントは『お前のせいで負けた』と責任の押し付け合いが起きることが多い。

 けど、健一がこう言うことで多少の抑止力にも繋がるというわけだ。


 さらに健一は畳みかけるように言葉を連ねてゆく。



「いいじゃねぇか。じゃあ、負けたら俺の責任! 他の誰のせいでもない、試合に負けたら、とにかく俺が悪い。俺の作戦ミスだからってことにしとけよっ」

「それだと……加藤に申し訳ないだろう。指揮官を勝たせるのが選手の役目だというのに」

「面倒くさい性格だな中丸は!! いいんだよ、特に気にせず楽しめば!」



 健一はそう言って、中丸の胸に拳を当てる。

 すると中丸は返すように健一の胸を軽く小突くいた。


 それを見ていれば二人の仲の良さがなんとなく伝わり、微笑ましさから緊張感が和らいでくるのを感じた。


 健一はこれで男子の話は終わりと言いた気に、「こっちに注目!」と手をパンッと一回叩く。



「クラス全体が楽しめるように男子の配置は決めてゆくから、そこんとこよろしくな! あ、でもこの競技はどうしても無理つうのがあれば、遠慮なく言ってくれ。作戦なんかは、考え次第伝えるからっ」

「「「お~っ」」」



 盛り上がる男子達。

 これが一致団結という状態なのだろう。


 だが、クラスメイトの半分……いや、主に女子生徒の頭の上に『あれ女子は?』とはてなマークを浮かべていた。



「じゃあそういうことで女子の方は、任せたからな! 上手く勝って、ルールを守って楽しく体育祭を。そして、一学年総合優勝のポイントを稼いでくれ。以上!」

「ちょ、ちょっと! なんか扱いが雑じゃないかな!?!?」



 突然のフリに、さっきまで様子を見守っていた女子が困ったような声をあげ、健一に詰め寄った。


 茶髪のポニーテールが特徴の女子生徒——彼女の名前は相野谷紗香あいのやさやか

 女子側の実行委員で、全体的にすらっとしていて健康的な見た目の人物である。


 とにかく明るく、誰にでも分け隔てなくハイテンションなのが彼女で、その裏表のない性格が男女共に人気があり、知名度も高く、なんと言っても顔が広い。

 一学年全員が彼女と一回は会話したことがあるという噂があるほどだ。


 後、彼女のことで知っていることがあるとすれば……。

 運動が大好きらしく、よく色々な部活の助っ人をしているとか、体力お化けとか言われているってことぐらいか。

 ちなみに勉強は…………クラスの平均点を落としている存在と言えばわかりやすいだろう。



「雑って言われてもなぁ。女子の方の作戦は立てづらいんだよ……。色んな制約もあるし。はぁ、俺にもう少し頭があれば……。ここは相野谷が頑張ってくれ。女子代表なんだから」

「それウチに言う!? かとけんのことだから、こっとん関係で動けないんでしょ!」

「まぁな。何と言っても俺は彼女一筋。すべては彼女が優先だからな!!」

「かっこつけるなぁ~! ウチの頭じゃ無理だからねッ!!」



 いや、無理って断言せずに頑張れよ。

 と、俺は頭の中でツッコミを入れた。


 まぁ、あんまり作戦とか立てるタイプではなさそうだから、向いてないんだろうけど。

 見るからに猪突猛進で突っ込んでいきそうだし。

 体育祭実行委員に立候補した時も一言目が「面白そう!!」だったもんなぁー。


 みんながみんな生温かい目を相野谷さんに向ける。

 すると、中丸が額に手を当てて、嘆息した。



「確かに、相野谷が作戦を立てると碌なことにならなさそうだよ。頭が幼稚園児に任せるのは、僕としては不安だ」

「ちょっと、まるまる!? 変なこと言わないでよね! ウチだってやるときはやるよ~」

「はぁ……。人のこと言えないだろう。それに僕を変な呼び名で呼ぶなと何度も……」

「えぇ~、まるまる可愛いのにぃ。じゃあ、“なかたつ”って呼ぶ~」

「それもやめてくれるかな、君が言うと……なんだか卑猥だ……」

「どこが!?!?」

「いや~、二人の漫才は相変わらず面白れぇな~」

「漫才ではない!」「面白い? 照れちゃうなぁ~」



 怒り気味の中丸に対して、相野谷さんは何故か照れ笑い。

「私、お笑いに向いている?」なんて、のんきで的外れなことを言っている。



「『やるときはやる』って言ってたけどよ~。ちなみに相野谷だったら、作戦はどんなことを考えるんだぁ?」

「ふっふっふ~。聞いちゃう? ウチに聞いちゃうのかなぁ~?」

「全く君は……。早く答えてくれよ」



 テンション高いなぁ……。

 正反対な性格をした実行委員を見ていると、少しおかしくなってくる。


 中丸も苦労してそうだな……。


 相野谷さんは得意そうに、もったいぶった様子で一同を見まわしてから、人差し指を前に出し、やたらドヤ顔で決めポーズをとった。



「“ガンガン行こうぜ!”って感じかな!」

「「………………」」

「攻めの姿勢。攻め続けることが守りにも繋がるんだよっ!!」

「「………………」」

「えーっと……あれれー? なんでみんな黙ってるのかなぁ? もしかして眠い?」



 いや、みんな呆れてるんだよ。

 運動が得意な相野谷さんのことだから、多少はマシな話が出ると思ったけど、肩透かしにあった気分になっているんだよ、みんなは……。


 クラスのそんな様子に気が付いたのか、相野谷さんは手をポンと叩き、うんうんと頷く。


 でも、何だろう。

 やっぱりダメな気がしてしまうのは、俺だけだろうか?



「あっ! わかった! もしかしてみんな“行き過ぎはダメ”ってことを心配しているのかな!? だったら、作戦は“命大事に”しよっか!!」

「「………………」」

「うーん。作戦が分かりづらかったかな? えーっとね、みんなでズバっとやって、ダダダダって走って、頑張ればいいんだよッ! 大丈夫! 人は死なない限り、やれば何でも出来るんだから~。あ、そうだ。よかったら、みんなで練習する?」

「「「「「——————っ!?!?!?」」」」」



 みんなの口がぽかーんと開いている。

 中には、相野谷さんの言葉に恐怖を感じたのか青ざめている人までいた。


 ってかその前に体育祭に命を懸けるような出来事があってたまるか……。

 スポーツ少女の相野谷さんは、噂によると凛と同じぐらい運動能力が高いらしいからな……。

 加減を知らなそうな分、もしかしたら凛よりも凄いのかもしれない……いや、たちが悪いのかもしれない。


 まぁ、そんな人基準にされて特訓にでもなったら————想像するだけで恐ろしいよね。


 不安を抱えた女子一同は、口々に会話をし始める。


『やばいよ、デスマーチが始まるよ』

『でも流石にそれはないんじゃない?』

『あ、でも……紗香って、体力お化けで有名だったような。それに、余裕とか言ってフルマラソンを走るっていう噂もあるし……」

『それマジ?』

『……うん』

『そんな人間の訓練って死ぬやつじゃない……?」

『そうだね……。これは加藤君にお願いするしかないかも」

『確かに! 加藤君と中丸君がいれば、ストッパーとして上手く機能しそう』

『そうね……。紗香に任せたら、全てが…………』

『『終わる』』


 そして————



「「「「お願い加藤君!!! 私たちも楽しみたい(死にたくない)」」」」



 相野谷さんという恐怖により、クラスの心がひとつになった瞬間だった。



「しょうがねぇなぁ~。じゃあなんとか考えてみるわ~。ただ、みんなにも手伝ってもらうからな!」



 面倒くさそうな態度をとりつつ、はにかむ姿を健一は見せてきた。

 イケメンの照れ……そんな顔を見ていれば、男であっても見惚れてしまうほどである。



 けど————これも健一の誘導なんだろうな。



 どうしてもこういう勝負事は熱くなりやすい。

 話し合いもそうだし、イベントごとは熱量の差が大きく出やすいものだ。

 それによってクラスがギクシャクすることも、終わった時に禍根を残すこともある。


 だから健一は、話し合いを柔らかく、上手く会話形式に持ち込みコントみたいなやり取りをさせつつ、みんなを誘導していたのだろう。

 二人の実行委員を上手く利用して、それを気づかせないように自分も道化になりつつっていうのも…………健一らしいなって素直に思うよ。


 でも、方法はどうあれ、雰囲気作りや人心掌握つうのは健一の十八番だもんな。

 昔からよくやるよ、大変なのは自分なのにさ。


 俺がそんなことを思いながら健一を見ると目が合い、『黙っとけよ?』と言わんばかりにウインクをしてきた。


 心配しなくても言わないよ。

 言う相手もいないし……って、うん?


 なんかニヤニヤと……その笑み……ものすごく嫌な予感が……。



「まぁ作戦を決めるのは、俺と翔和で頑張るから任せてくれ! なっ、翔和」

「…………え?」



 名指しの突然の指名に、俺の口から裏声に近い間抜けな声が出た。

 不意打ちの不意打ち……俺はこんなこと聞いていないぞ……?


 その気持ちはクラスの面々から『なんでお前?』という視線が俺の元に集まる。

 いやいや、『なんで!?』って俺が言いたいよ。


 俺が健一に不満を伝えようと視線を送ると、「俺は頼りにしてるぜぇ!」と親指をグッと立ててきたのだった。

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