第78話 助けを求める少女は助けるよね

「そうか、もう行ってしまうのか・・・」


ミノス王は残念な顔をする。

何度も生まれ変わりをしているミノス王、

行動そのものは本当に10歳である、一方でパシパエは少し記憶があるのか、姉キロケーの事に会いに行くがいいと助言をもらった


この世界の理や守護者の存在など、様々な事、キロケーの元なら解決できるのではないかということだ。


来るときは山車に乗せられたが帰りは普通だった、ケンタウルスも街の中で俺たちのことを待っていたようだ。


「おう!待っていたぜ、ここから先はソドムの大地だ、魔物がわんさか出るが、あんたらなら護衛を雇わなくても大丈夫だろう・・とりあえず、ソドムの町がこの先にあるそこを目指したほうがいい」


「お任せするよ!じゃあまずミノスの町で買い物だな」



ミノスの町で買い物をする


驚いたことに野菜や果物が豊富である、ドラゴンフルーツやノパール(ウチワサボテンの実)はまだわかるが、リンゴや西瓜もある、確かに水はけの台地にも育つが水を多く使う作物、この辺りには川はない、それなのに街には池があり用水路の水量は多いい。


「驚いたな・・・あの院の泉の水がここまで豊かにしているのか・・」


「私たちあの泉を見てたけど、あの石は水魔法が込められているわけではないみたいでした」


「うん・・・水魔法ではなかった・・どちらかといえば召喚術・・闇の魔法みたいな」


「あら、よく気がついたわね、ジュリちゃんにムュイちゃん」

シーナは二人を褒めるように頭をなでなでする



「シーナさんは知っているのですか?」



「そうね・・水の魔法で水を生む場合は、空気中の水分を集めるのだけど・・あの石は違うわね、パシパエ様に聞いた話では数代前のパシパエ様が作り出した魔道具でウンディーネの泉にあの魔道具は直接つながっているという事らしいわね」


「それで!優しい気配だったのですね」


「リザードはウンディーネの加護が有ったわね・・ふふ・・ウンディーネの泉の水はどんな作物も豊穣に実らす力があるわ、女神ウンディーネが認めるものにしかその恵みは受けられない、パシパエ様が女神が認める存在ということね」


「ぜひ、この水も研究してみたいところだな・」


ケンタウロスにウンディーネの泉について聞いた


「うーん行けないことはないが・・ニンフが一杯いるぞ・・・男が行ったら大変なことになる」


「あのニンフ族ですか?」

サモンが乗り出した!この気配を消す能力はザックさんともどもすごいな。


「ああ!ニンフ族のほかにヒュドラも出る・・俺はあまり行きたくないがな・・」


ヒュドラ・・・エキドナとテュポーンの娘・・・恐ろしい怪物と前世界では言われているが・・この世界ではゴルゴンの勢力である。


「ウンディーネ様に会えるんですか?ぜひ私たちも行きたいです!」

ジュリとムュイは興奮して俺を見る


「ニンフか・・・楽しみだな・・」

トシイエがつぶやく・・


「トシイエ様!紳士ですよ!紳士」

カエデが釘をさす


「まあ行きながら考えよう、まずはソドムの町に行こうじゃないか」


食料などを買い込み、ケンタウロスの馬車に乗り込む


「さあ!姉さん!たのむぜ!」


シーナが鞭をしならせる!


ビチーン!


「うほ!キタキタ!いくぜ!」


すごい勢いで馬車は走り出した


ソドムの大地・・・まさしく塩の大地だ・・全世界のソドムは禁忌を犯したことにより滅ぼされた町、死海の底に沈められたともいわれている。


微妙にこの世界の種族と前世界の種族はリンクしている・・ソドムの禁忌は同性愛・・・

嫌な予感もするな・・・



ソドムにつくまで時間もかかる、俺たちは野営の準備に取り掛かる


見張り役として


男衆が常時交代で起き続ける・・昨日一睡もしてないんだがな俺は・・・


シーナが結界を張るので、見張りは少なくてもいいのはありがたい。


エビスで買ったスルメを炙り、ミノスで買った牛肉を煮込む、生肉は今日までに食べないとな、数日かかる行動で初日の食事は豪華になる、初日限定の生肉があるからね

グラスで作られたフライパンで肉を焼く、もう一つの鍋には煮込み料理だ!エビス産の干し貝を煮込む・・前世界なら超高級食材だアワビなんて・・・


「いい匂いですね」

サモンが鼻をひくひくしながら言う


「もう少しで出来ますから待っててくださいね」

シャルロットがテキパキと動く、シャルロットはジェニファーから料理の手ほどきをされていて、腕前も中々なものである。

カエデもそれを手伝う


水を作り出すジュリとムュイ

シーナさんは煮込まれている鍋を混ぜながら、じーっと見ている・・魔女だしな・・・


ミュイミュイは意外と器用に包丁を使っている


「お待たせしました~」

カエデの号令とともに次々と料理が運ばれる、当然ケンタウロスの分もである。


「客人すまねえな、俺らは一応草さえあれば生きていけるが、こういった飯もうまいと感じる、ありがてえ」


美味い晩飯を俺達は堪能した。


夜も更ける俊太が見張り役の時間だ

しかし気配を感じて俺は起きた、シャルロットも起きたようだ。


俊太は焚火の番をしながら座っている、隣にはカエデちゃんだ・・邪魔をしたかな


俺の姿を確認したカエデはあわてたように立ち上がり

「あ!起こしちゃいましたか、すみません」


恐縮してテントに戻ろうとする

「いや起きてていいよ、みんなを起こしてもらえるかい?」


俊太もカエデちゃんも感じていないみたいだな、まだまだ修行不足だな


「おお、起きてたか・・まだ遠くだが・・数が多そうだな」

ハムラがふんどし姿で現れた・・


「ふぁ~・・夜中なのに寝かしてくれねえな」

トシイエも起きてきた


「ああもう、嫌な気配ね・・・」

シーナも起きてきた


まだ遠くにいる、こちらを窺っているのか・・・これだけの能力持ちが集まっている・・向こうもそれを感じているみたいだ。


「あ!感じた・・・敵意を向けてるね・・・向けてない気配もある」

俊太も感じたようだ


「逃げてるみたいだな・・・二人か」


「待っておくれ・・・今見ているから・・」

シーナはサーチ気配を広げる


「逃げてるのは人型ね・・人間よりは魔力は強いけど・・・女性2名」

シーナは目を瞑り、まるで見ているかのように話す


「怪我をしている・・・額に目がある・・・」


「三つ目族か・・確か集落があったはずだ」

ケンタウロスも話し始めた


やがてその気配は近づき俺らの元に近づく、逃げてる方も俺らの存在に気付いているようだ。


俊太とカエデがそばに行き声をかけた

「僕達は他の国からの使節団だ、君達は誰だい」


「た!助けて下さい・・村が・・・」


二人の少女の怪我をしていない方が大きな声で話す


少女の姿を見て真っ先に飛び出したのはトシイエだった。



トシイエは二人の少女を抱えて戻ってきた・・・何もしてないだろうな・・


トシイエに降ろされた少女、は降りるなり懸命に訴えてきた

「助けて下さい!貴方方は類まれなる力があると私の第三の目で分かります、村を助けて下さい・・」


「話は聞くが、まずその子の治療だ」


傷ついた子は瀕死であった

すぐさま治癒にかかる


「血を失いすぎている・・」

シーナは嘆く、魔女の魔術では血は作れない、他の生物の血入れる方法も体が拒否反応を起こし死亡する事がある。


輸血により確実に助ける方法は吸血鬼の血ならどの種族の血にもなじむ、しかしそれ以外は不安定な治癒になるのだ。

しかし、吸血鬼などここにはいないし・・・


「水と塩を用意してくれ」


俺はここにきてからの勉強だが輸血についても勉強している。

これは医療界でもタブーとされているが、輸血という行為は安全な治療ではない、同じ血液型であっても、赤血球の中にも遺伝子はある。違う遺伝子を入れる行為なのである、前世界の医療の進んだ日本であっても、大量出血には輸血が行われる、輸血が必要な治療はあくまで、赤血球不足を補うためで、血液量の1/2位を失った患者にのみ行うべき治療でもあるのだ。


では何を血の代わりにすればいいのか・・それが生理食塩水である、1%程の食塩水は血の代わりになる。

むやみに輸血するよりは生理食塩水を点滴などで血液に足してやる方が理想的といわれる論文も多くある。


第二次世界大戦の時、出血多量の兵士を血の代わりに食塩水で助けた話もある。

一概に宣言は出来ないが、輸血というのは先進医療ではないのである、感染症のリスクのほかに、将来的に癌の発生率も上がる論文もある。それに体が拒否反応を起こせば血液の場合すぐに死に至ってしまう危険もある、術死の何割かはこの拒否反応で起きているとも言われているのだ。現代医学の穴といわれている。


水の魔法で食塩水を瀕死の娘の血液に流し込む静脈にしみこませるイメージだ・・・

ある程度の量を流しこんだらシーナの魔法で血管の損傷を治し傷口をふさぐ。


後はこの子の生命力だ


「金ちゃん!肺に血液がたまってる・・私は水魔法は使えないわ・・押し出して、肺の穴はふさぐから」

シーナも治癒に必死だ


肺の血液・・これか・・液体を感じる・・ゆっくりと口に動かす


「ゴホ!ケホ!」

少女は大量の血を吐きだす


「よし!全てだした」


「私も肺の傷は治癒できたわ」


少女はうっすら目を開けて答えた

「おねえちゃん!寒いよ・・」


「ユミ!しっかりして・・お願い・・一人にしないで」


輸血用の食塩水の温度が低かったか・・・水の魔法と火の魔法の応用で少女の血液を少しずつ温度をあげて行く


「ああ・・温かくなってきた・・」


少女はそのまま眠りに就く


「ユミ!だめよ!」

もう一人の少女が必死にユミという少女を起こそうとする


「大丈夫だ!赤血球不足で貧血なだけだ・・後は体を温めて休ませる事だ、それと・・鉄分か・・」


「これを使いな」

トシイエが腕から血を流して皿に貯めている・・そうか血を飲ませるのか


「オワリの戦では血を失った奴には血を飲ませる療法がある」


確かに血液は完全栄養食とも言われる、輸血は人を選ぶが食材としてなら人を選ばないからな

とはいえそのままではまずいな・・グラスから持ってきた米で重湯を作りそして血を混ぜた、ちょっとグロいが我慢してくれよ


「ジュリちゃんムュイちゃんこの子に飲ませてやってくれ!」

重湯の中にはジーフが作った薬も入っている


「おい!金ちゃん、奴らが近づいてきている」


「みたいだな!シュン、カエデちゃん、ミュイミュイはこの子を守ってくれ!サモンお前は銃は使えるな銃で俺達の援護だ、他は奴らを迎え撃つぞ!」


「俺も混ぜてもらう!」


「気を付けて下さい・・あいつらはグラップラーアント、凶悪な大蟻達です」

もう一人の少女は俺達に言う この子の名は何だっけな?怪我した子がユミでこの子は?聞いてなかったな


「君名前は?」


「私は三つ目族ソノフ村のルミです、村がグラップラーアントの大群に襲われて、子供達は逃がされたのですが・・逃げる途中に多くの子が・・・」


「そうか・・後で助けに行こう・・だから妹さんをしっかり抱きしめてやってくれ」



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