第36話 怖い人と思ってもいい人だったりするよね

漁師からの報告で




南東の海上に小島が現れた、そこには何やら建物が建っているとのことだ。


先日まで何もない所だったのに いきなり現れたのだ


ポチとクリスとハムラで早速現地に行ってみる




クリス


「迷宮だね、まさに」




ハムラ


「オニガシマの穴と入口が同じだ」




小島の岩場を登るとそこには小さな洞窟の入り口が見える


その入り口は石の柱で左右を飾り、ガーゴイルの彫像が上からこちらを睨んでいる


石板に文字が彫られている




「この文字は何処の文字だ?」




クリス


「これは妖精文字だ迷宮は妖精の管轄だからね」




ハムラ


「妖精族といえばクリスもその末裔だろう?」




クリス


「ノームは洞窟や鉱脈が始まりの場所さ、しかし迷宮となると。コボルト族の仕事なんだ」




「コボルト族?」




クリス


「迷宮を掘る坑夫だ、迷宮は地上世界とも違う一つの世界とされる、コボルトには管理人がいるはずなんだが」




ポチ


「隠れている奴がいるワン!」




ポチが唸りだした




「ポチ、ゴー!」




真っ先に飛び出す




「なんだなんだにゃ~、おっかない犬がオイラを見つけるにゃ~」




ハムラ


「クー・シーか?」




「何をいうか 我は偉大なケット・シー様だ、あんな犬ころと一緒にされたくないにゃ」




ポチはさらに威圧のうなりを向ける




「ああ お主じゃないにゃ・・お主は、聖獣様じゃろ・・我は聖獣様とは争いたくないにゃ」




クリス


「猫の王か・・」




「いかにも我は猫の王ケット・シーそして・・・お前らも現れろ」




周りに次々と醜い集団が現れた




「この者達はコボルト、我の配下にゃ」




ハムラ


「ゴブリンみたいだな?」




「ゴブリンはクー・シーの配下にゃクー・シーはオニガシマの迷宮の主にゃ」




「アウウアアウアアア」




コボルト達はケット・シーに語りかける




「我ら迷宮の管理者はここの守護者に用事があるにゃ」




「俺がここの守護者だが」




ケット・シー


「ニャに~?ただの人間じゃにゃいか?」




「それはそうだろ」




ケット・シー


「いやロロはもっとこう・・まがまがしいものがあったにゃ」




「ロロというとフランシス・ロロか?」




ケット・シー


「そうニャ、我らはロロの元で暮らしていたが・・デスアーグが現れたので、ゴムズラを逃げてきた


迷宮ごとにゃ」




ハムラ


「ゴムズラが魔王に落ちてから既に17年たつぞ?」




ケット・シー


「隠れることに関しては我らは天才だにゃ」




ケット・シーが手をかざすと迷宮の入り口もケット・シーもコボルトもみんな消えた




ポチ


「そんなんで隠れたつもりかワン!」




ケット・シー


「ひゃ~ 本来はこれで完璧ニャのだ、聖獣様が異常ニャ」




ポチ


「異常だと!なんだと!ワン!」




ポチは再びうなり始める




「ポチ・・待て」




ポチは物足りなそうに下がる。




ケット・シーもコボルトも再び現れた




ケット・シー


「改めて守護者グラスよ頼みがある」




「いや俺はグラスさんじゃない」




ケット・シー


「なんじゃって!? グラスという強い守護者がここにいるからここに来たのにゃのに」




ハムラ


「おいおい・・金ちゃんはそれなりに強いぞ、ポチを手なづけるぐらいだからな」




ケット・シー


「確かに・・並の人間ではこのクラスの聖獣様を呼べるはずはない、ならば金ちゃんとやらに頼みがある」




「どんな頼みだ?」




ケット・シー


「ここではなんだ、我らの町に案内する」




ケットシーは手をかざしたすると辺りの風景が変わった 海に囲まれた島だったはずだが




そこは普通に明るい陸地だった




ケット・シー


「ここは迷宮の最下層 我らの町だ」




確かに町だ空は明るいが太陽は見えない、巨大なドーム状何だろうか・・・




先ほどまで醜い姿だったコボルトがここでは人の姿になっている




ケット・シー


「この者達はロロの配下の子孫だ・・ロロの家族もここにはいる」




「ここはつまり・・・」




ケット・シー


「ゴムズラの住民たちとロロの子孫たちの町だ」




ハムラ


「こんなところが・・・・・迷宮の最下層にあるのか・・」




ケット・シー


「迷宮は好きなように作れる、我はここの男衆に力を与えているから、なその代わり


ここ以外では我の力を持った者はコボルトに姿を変えるのにゃ」




クリス


「コボルトもゴブリンも元は人間というのは本当だったんだ・・」




ケット・シー


「その力を与える事が出来るのは我とクー・シーくらいだ」




「ロロは、自分の子も部下も殺して死兵にしている、恐ろしい男と聞いていたが・・」




ケット・シー


「ははは!確かにロロはそのような力を持っていたな、しかし女は大事にしていたにゃ。


ロロの娘を守る為に、たまたまゴムズラにいた我を守護する事と引き換えに娘達の住む場所を


作る事をお願いされた。ゴムズラの住民達はこの迷宮に隔離される事で、ゴムズラには死兵しかいなくなったようだがな」




ハムラ


「つまりロロは住民を一番安全な場所に避難させていたということか」




ケット・シー


「ただし狭い空間だ・・人間は増えるからな だから選ばれた物は死兵となり


島を守る存在となった、それにロロ自体が息子をわざわざ選んで死兵にした。


そんなことをする王を恨む住民などはいにゃいぞ」




そうか・・・恐ろしき守護者ロロも住民を守る王であったということか・・・




ケット・シー


「迷宮は難攻不落だからな・・作った我らでさえわしの力で転送しないとこの場所にはこれない」




ハムラ


「オニガシマの穴は沢山の宝物が出るが・・ここも出るのか?」




ケット・シー


「出る、各階層を守る守護魔物を倒せば、宝物を出す ロロと作った迷宮ではロロの能力を使い


迷宮で死んだ挑戦者は死兵となり。地下100層のロロの死兵の間での守護者となる。


ロロは各地で強者を募ってはこの迷宮に送り死なせ死兵を増やしていた、まあ財宝だけ持って帰った者もいたが。それがかえって、新しい挑戦者を呼んだ。


迷宮が完成してから300年・・もはやこの迷宮は難攻不落といえるにゃ」




「それならなぜ我らに保護を?」




ケット・シー


「ロロが殺された様だからにゃ・・・ロロの伴侶のミレーザが消滅した、それはロロの死を


意味する、地上を守っていたロロの死兵はみな戻ってこなかった


しかし迷宮のロロの死兵はそのままニャ、それは迷宮内の魔物は我の配下にゃ


迷宮からは出れないがニャ」




「あなたでも到達できないのに配下なのか?」




ケット・シー


「迷宮の魔物は迷宮を守る事だけを考える魔物にゃ、それは我でも変えられないにゃ


我はさほど闘いが得意ではないのにゃ・・・だから作られた迷宮に力を与えるだけにゃ・・」




「で、我々がここを保護して得られる利益は?」




ケット・シー


「迷宮の運営権を与えるにゃ、迷宮にはロロの財宝の他に挑戦者の装備 


貴重な鉱物などが宝物として現れるにゃ、各階層の守護魔物を倒せればニャ」




「この最下層は何階なんだ?」




ケット・シー


「ここは地下300階層にゃ」




「300階!?」




ケットシー


「そうにゃ、299階の守護魔物は既にゴルゴンの原初の魔物にも劣らない強さにゃ」




「しかし・・挑戦者に死なれても困るが・・・」




ケット・シー


「ここは火山があるので迷宮は挑戦者の魔力がなくても成長するからそれもいいだろう


迷宮で死んだ者の魂は100階層で守護死兵となるつまり魂は残っているにゃ


ならば死体を地上に転送して魂を戻せば生き返るにゃ


我はそれを行う事が出来る」




ハムラ


「悪い話じゃない、オニガシマの穴も鍛練用の穴だ、それに不思議な力で死んだら地上に現れて蘇生する」




クリス


「うん・・オニガシマの迷宮は有名だね、鬼が強い理由の一つになっている」




いい話だが・・・不安もあるな・・・




ケット・シー


「もうひとつお願いがあるが、ここの人間の住人を何人か。ここの町で保護できるか?


狭い空間にゃから、子供が大人ににゃると誰かが死にゃにゃくてはにゃらない。


しかしロロがいにゃくにゃった今 死兵ににゃる事も出来ぬ、にゃらばどこかの町で余生を


過ごせにゃいだろうかと・・・」




「それは大丈夫だ・・ここには学校もある、教育も受けられる」




ケット・シー


「ならば、小さな子がいる家族を何組か移住させてほしいにゃ」




「そこは保障しよう・・ここは移民も多くいる、すぐになじめるはずだ」




ケット・シー


「我はゴムズラの町の人々が好きにゃ・・・ロロ亡きいま、我らの力を使ってほしい


お願いにゃ・・・」




ケット・シーは俺にひれ伏した・・・


ポチがケット・シーを舐めた




ポチ


「わが主、この者は嘘はいってないワン 保護するワン」




ケット・シー


「聖獣様~」


ケット・シーはポチに抱きつく




「分かりました・・ケット・シー様!是非この島にいてください」




ケット・シー


「本当かにゃ? それはよかったにゃ~」




ケット・シーはごろごろ言いながらすり寄ってきた・・・






こうして島に迷宮が生まれた

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