旅の途中で

勝利だギューちゃん

第1話

旅に出た。

目的地はない。

風の向くまま、気の向くまま、

好き勝手に旅をする。


好きな時に列車に乗り、惹かれて駅で降りる。


その日も、そうだった。


俺は、海のある村で生まれ育った。

なので、見飽きている。

珍しくも何ともない。


なので、逆に山に惹かれる。

俺は自然豊かな、山中にある駅に降りて、駅舎を出た。


「空気が美味しいな」

俺は伸びをした。


「さてと・・・」

俺は歩きだした。

あきるまで、この山を歩いてみよう。


時間だけは、腐るほどある。


田舎なのか、人も家もまばら・・・

でも、気さくなのか、見ず知らずの俺にも、声をかけてくれる。


こうやって、知らない村での、知らない人との出会い。

そして、何気のない会話。

それが、楽しみだ・・・


しかし、同じ事を考える人もいる。


すると、いきなり雨が降り出した。

少し疲れた俺は、村はずれにある小屋で、一休みすることにした。

すると、中には先客がいた。


以前に一度会ったことのある方だ・・・


「久しぶりですね。お元気でしたか?」

「ご無沙汰しております。そちらさまも、お変わりなく」

「はい。お陰さまで」


小屋の中にいた人物は、俺と同じで、気ままな旅生活をしている。

なので、交わる事は殆どないが、2度目の対面を果たすと、縁の不思議さを感じる。


ちなみに女の子だ。


「でも、よくご両親が許しましたね。女の子の1人旅を」

「『可愛い子には、旅をさせろ』だそうです」

「俺は、気ままですけどね」

「それは、私もです」


プレイベートな事は訊かない。

それが、マナーだ。


雨も上がり、疲れも癒えた俺は、小屋を出る事にした。


「では、俺はこれで失礼します」

「はい。では、私も出ます」

ふたりで、小屋を出た。


「では、私は駅に向かい、次の目的地へと向かいます」

「俺は、もう少し登ってみます」

「これで、お別れですね。いい旅を」

「あなたも、いい旅を」


こうして、軽く会釈をして別れた。


「さてと、行きますか」

俺は、山を登り始めた。


しばらく行き、ふりかえると、先程の女の子が駅に着こうとしていた。

その後ろ姿に、軽く手を振った。


2度ある事は3度あるではないが、また会えるかもしれない。

何かを期待しているわけではないが、もし会えたのなら・・・


「名前くらいは、知っておきたいな」

そう願わずにはいられなかった。

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旅の途中で 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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