-48度 たいじのスエオ1
「そのような豚の姿で戦う気か?
それじゃあ間違って攻撃してしまうかもしれないなあ。」
スエオが威圧を弱めたからか、すかさず嫌味を言うプレモ。
直前まで青い顔をしていたはずなのに、その素早い変わりよう。
ある意味その根性は大したものかもしれない。
「おめえ鏡って見たことあるべか?
やっぱり都会でもなかなか鏡って見る機会ないんだべか。」
遠まわしに樽体形のプレモに皮肉を言うスエオ。
ここ最近は少しばかりイライラしているようである。
「それにそこのツカツとかいう奴が、鑑定か看破を使わなければ人の姿でも戦えるだよ。
でも関係あるんだべか?
おでは人間にとっては
そう言い残すとその場から移動するスエオ。
いつまでも喋っている時間は無い。もうそこまで魚人達が来ているのだ。
スエオが部屋を出ようという時になっても、動こうとする人はいなかった。
「あ、魚人のいる場所はどこだったべか?」
一度立ち去ったものの、すぐ部屋に戻ってきて伝令の人に聞くスエオ。
最後の最後で締まらないスエオであった。
王都から海の方へ少し行った平原に、スエオは一人で待ち構えていた。
王都からそう遠くもない距離にある港町は既に占拠されているらしい。
港町から王都へは今いる平原を通ればすぐである。
他の兵士たちは街壁の中で籠城する気で待っているようだ。
「……なしておでは一人でここにいるんだべ?
他の兵士たちが誰も来ないのはなんでだべ?
このままじゃ畑が荒らされちまうべ!」
スエオの待機している場所より後方、王都側には畑もあるのだ。
少しばかり早いようだが、敵の糧食になりかねないというのに。
「
魚人がやってきたようだ。
やばい。八千人がいる事とかじゃなく、主にルビを振る労力的な意味で。
スエオは短期決戦を狙う事にした。
畑に被害を及ぼさない事も大事だが、何よりサクっと終わらせる方がクールでかっこいいと思っているからだ。
「我が前に
──アブダ・ニラブダ・アセッタ・カカバ・ココバ・ウバラ・ハドマ・マカハドマ──
戦略級地形魔法!アイシクルブリザードフィールド!」
呪文を唱え、魔法名を叫ぶスエオ。
その瞬間すごい速さでスエオより前の地面が凍っていき、魚人達の足を止める。
半数ほどには水の盾で阻まれるが、軍事的に考えると半数が行動不能というのは全滅と同じ扱いである。
たった一発の魔法で敵の半数の動きを止め、平原一面を氷漬けにしたスエオの実力に、敵の魚人達だけではなく王都から見ていた人間たちも恐れ
ちなみに呪文も魔法名も無意味であり、その気になれば無言でほぼ同じ魔法が使える事はスエオ以外誰も知らない。
スエオは満足げである。かっこいいと思って呪文を唱えたのだから。
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