-40度 とうそうのスエオ3

 スエオが首の高さで水平に振った角材は、説教男の短剣で切り飛ばされた。


「なんでただの角材がそんな強度なんだよクソ豚がぁ!」


 スエオは直ぐに後ろへと下がると、ゴミの山から棒状の物を引き抜いた。


 ──スエオは孫の手を装備した!


「てめぇふざけてんのか!その腰の剣は飾りかよ!」


 孫の手を構えたスエオに突っ込んで行き、孫の手を切り飛ばそうと短剣を振るう説教男。

 しかし、その孫の手を切り飛ばす事は出来ず、わずかに刃が食い込むだけだった。


「おで程の強者なら棒切れで十分だべ。

 剣を抜くときは相手を殺す時だけだべよ!」


 ぶつかったまま孫の手を力づくで振りぬくと、短剣ごと吹き飛び距離をとられてしまった。

 あれだけの力でも短剣を手放さないのはさすがというべきだろうか。


「てめえ何をやってやがる、さっきより力が上がってんじゃねえか!」


 距離を開けたまま懐から投げナイフを取り出し、スエオに投げつける。

 黒く塗られたナイフは、日が沈んだ暗闇での視認は難しく、今まで数多の命を奪ってきた物だった。


「……近接戦は終わりだべか?」


 スエオが左手を上へと振るうと、氷の壁が現れた。

 説教男の投げたナイフは全てその氷に阻まれてしまう。

 スエオがそのまま氷の壁を蹴り飛ばすと、破片になった氷のかけらがナイフごと飛んでいく。

 慌ててゴミの裏へと姿を隠すが、いくつかの氷はゴミを突き抜けて説教男の手足に小さな傷を作った。


「豚ごときが魔法なんて使ってんじゃねえよ!クソがぁ!」


 説教男は狙い撃ちされないように即座にゴミの影を移動すると、スエオの後ろへと回り込もうとする。

 しかし気配を察知できるスエオにより、行く先に氷の壁を作られ、どんどん逃げ道が失われていく。


「くぅるなおでは魔法も剣も一流じゃないとダメなんだべ!」


 さっきまでは鑑定対策でほぼ枯渇状態だったスエオの魔力も、戦ううちに徐々に回復し、既に全力で魔法を使っても問題のないレベルにまでなっていた。

 氷魔法を連発し、逃げる先に透明度の高い氷の壁を作ると、説教男は視認できずに激突してしまう。


「クソがっ……こうなったら仕方がない!」


 追い詰められたと思いきや、空へ向かって何かを放った説教男。

 空へ上がると、大きな音と共に火花を散らした。


「これで応援の騎士が来るはずだ。

 お前みたいな魔物でも数が集まればどうにもできまい!」


 スエオは焦った。

 てっきり人身売買組織だし、騎士を呼んだりするとは思わなかったからだ。

 ここで逃走するか、このまま闘争を続けるか。

 説教男の鼻にできた凍瘡とうそうを見ながらどうしようと悩むスエオであった。


 そして三話同じタイトルで引っ張っておいてダジャレ落ちとか本作力ねえなと思う今日この頃であった。

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