-14度 仕事のスエオ
たっぷり睡眠をとった翌朝、ようやくスエオは狩りに行くことにした。
朝から満腹スープを三杯食べることも忘れない。
昨夜自警団の見張りと会話したのだが、この村に出入口は南北二か所あるそうだ。
北の方はスエオがやってきた方角であり、王都へと向かう道もスエオの産まれた村もこちら側だ。
南は逆にまだ道も無く、出てしばらく行くとすぐ森に突き当たるらしい。
南の方が魔物が多いため、そちらで間引きをして欲しいと言っていた。
クールを気取って「ふっ……おでに任せておくといいべ。」とか安請け合いしてしまった為、スエオは素直に南の出入口へと向かった。
ちなみにちっとも格好良く無かった。
南の門は北の門と違い、それなりに立派な門がつくられている。
こちら側からは時々魔物も来るという事で、木製とはいえ鉄で補強された門はこの村に似合わないレベルの大きさだ。
柵もこちら側は石と丸太を交互に立てて作られており、材料の節約と強度を考えた苦肉の策では無いだろうか。
「お疲れ様だべ、ちょっと魔物の間引きに行ってくるだよ。」
門を守っている自警団に挨拶をすると、赤い布を渡された。
本来は自警団の一員である証らしいのだが、スエオは着けておかないと普通のオークと見分けがつかないため、攻撃しないために着けておけとの事。
スエオは厨二病を発揮し、右手を包むように赤い布を巻いた。
もちろん封印の一環という設定であるが、この布はこの門番のお下がりであり、特に何の効果も無い普通の布である。
「ありがとうだべ。大事にするべよ。」
嬉しそうに右手を眺めるスエオに、門番は少しだけ新品にすればよかったかなと思ったが、すぐにどうでもよくなって仕事に戻った。
森の中に入ったスエオは、さっそく魔物を探すことにした。
あの屋台のご飯を腹いっぱい食べるため、ワイルドボアをまた狩りたいところである。
しかし、ワイルドボアは普通もっと森の奥に住む魔物であり、この辺にはいないという事にスエオは気づいていない。
調査不足、やっぱりスエオは少しばかり抜けているようだった。
とりあえず森の中で食べられる木の実やキノコ、果物や薬草を採取しながら魔物を探し続ける。
採取している内の半分が毒なのはスエオの運が悪いからではないだろうか。
……毒だと知ったら知ったで、なんか格好いいべと集めそうではある。
道具袋がそこそこに膨らんできた頃、これでは獲物を道具袋に入れられないと気づいたスエオは一度帰る事にした。
ちなみに持っている道具袋では、元からワイルドボアは入らないという事にも気付いていない。
──キンッ── ──ギャリッ──
村に帰る途中で、戦っているような音がする。
スエオはちゃんと学習していた。
このまま助けに現れると、魔物の増援だと勘違いされかねない事に。
気配を極限に抑え、陰に忍ぶイメージで音のする方へと向かう事にした。
そこで見たのは……
普通にゴブリンにトドメをさす武装集団の姿であった。
(あで?ここはおでが
学習していたというよりは、同じ事が起こると思っていただけだったようだ。
特に助ける必要もなく、素材を剥ぎ取るパーティーを見守るだけだった。
村に帰り、毒草の汁ですべての採取物がダメになっていると買取拒否されたスエオは、半泣きになりながら毒汁まみれの道具袋を洗い続けた。
浄化魔法を使えば早いと気づいたのは、洗った水を捨てようとしてギアテに怒られ、水の毒を抜こうと浄化魔法を使った時だったとさ。
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