[ネタ]ノットライズザサン
毎年、冬が近づくと貼り出される紙がある。
日喰らいの悪魔を退けるために、寄付をお願い致します。
しかもそれ、国の承認印つき。今年もきたのか、とやむを得ずなけなしの財産を渡して、早く立ち去って、いや追い払ってくれと願うばかり。
日喰らいの悪魔は、その名の通り、昼間を食ってしまう悪魔だ。彼らがいなければ、冬は一日中夜に閉ざされてしまい、ただでさえ厳しい冬に追い討ちをかけることになってしまう。
そのため、国が全力をあげて悪魔を退けている。いつも、冬が来る度に、国が組織している悪魔払いのエリートたちが、その軍資金の足しにするために町にでている。
いつもありがとうございます、と聞こえてくるくらいには、必要な存在なのである。
そう、これは必要なこと。
外界から閉ざされた、この孤立した国にとっては。
「冬は一日中夜になるだって?」
大きく笑うそいつは、なら酒盛りし放題だと紅潮した顔でおかわりを注文する。
「そんなとこ、あるのかい? だったら国民はバカに違いねぇ」
誰もがあるはずがない、と現実にある笑い話。
「だってよぉ、その組織ができる前、冬に陽が上るってとこを見たことないってことだろう? はっは! だったらそいつらがいない国は今頃真っ暗にちげぇねぇわ!!」
悪魔がいて、それを追い払うための組織がいる。その悪魔を見た者は誰もいないのに、信じられている。
「でも、あるんだろぅなぁ。世界は、広いんだから」
中空を眺めるそいつは、大きく喉をならす。
◆◆◆◆
太陽が出てる時間帯は昼間、だそうですね。日の出から日暮れまでの時間。
さて、冬の昼間が短くなる、ということに対して、あなたは説明できますか? 単純な話、公転による太陽との距離の変化ですね。
で、これを何者かが行っている、という話を展開すると、一種の宗教が出来上がります。善良なる民に責任はない。悪いのはそう囁く悪魔の仕業なのだ、と。
冬に寒くなり、恵みをもたらす太陽がすぐに隠れてしまう。それは悪魔がそうしているのです、と言われても、知識がなければ信じてしまいそうですよね。とくに広く共感が得られると、それが正しいことだと思うのでしょう。
ここから色々と広げられそうですよねぇ。でも結末が思い付かない。困りましたねぇ。
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