[短編(市場)]あ、行き倒れだ4

 あ、ラクリだ。一緒にいる竜は誰だろう? 僕とおんなじでこっちに来たばかりだし、ヴィークさんの知り合いかもしれない。

 うん、多分そうだろう。目付きも鋭いし、なんか、隙がない感じかする。

 あっちもこちらに気がついて、何でもない言葉を交わして、二人ともどこかに行ってしまう。あっちは、さっき僕たちが来た方角。帰るんだろうか、とも思ったけど、樹海以外にも色々あるし、それに限らないだろうし。

「リィー、お待たせぇー」

 僕の方も、待ってた子が戻ってきた。思う存分腹ごしらえができたらしいシェーシャは、隣にやってきて、ごちそうさまと口をぱくぱくとさせる。

 少し前に見つけた、生肉専門店。樹海からこちらに来るときに、そっちの方が好きだと聞いていて、まぁ、奢るしかなかったんだけど。

「僕は、リエード、ね。で、聞かせてくれないかな、ギルって人のこと。探すんでしょ?」

 でも、僕と同じくらいの体格だし、市場を歩き回るには邪魔になるのは間違いないよね。どうしよう?

「うん! まだあそこにいると思うんだけど……」

 見やるは樹海の方向。いわく、自分は飛んでやってきたけど、彼は歩いてやってくるはずだと。

「うーん、でも森だしなぁ。また迷ったら危険だし……ギルは、方向音痴だったりする?」

 なにそれ、と目を丸くされて、

「えー、っと、よく道に迷ったりする? 君と一緒にいたときに、地図をぐるぐるしたりとか」

 少し上の空になって、たまにあったよ、と答えるので、極端な音痴ではないらしいことは分かる。

「そうだなぁ……じゃあ、君たちは市場、ここにきて、どこに行こうとしてたの? どこの宿に泊まるとか」

 それさえ分かれば、既に到着している可能性だってある。

「んー? わかんない! でもどこかで泊まろうって、言ってたよ!」

 元気なことはいいことだけど、手がかりが一切ないのは、どうだかなぁ。

「うん、じゃあ、一通り宿を回ってみて、見つからなかったらうちに来なよ。お金もないみたいだし」

 彼女は体格のわりには、あまりものを身に付けてない。鞄のひとつやふたつ、獣でもつけてるもんだけどなぁ。

 いいの、と目を輝かせるシェーシャに、怖いやつがいるから、しずかにね、と念を押しておいて、ギルの捜索を開始する。

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