[短編(オリ)]自己犠牲なんて断固拒否します2

 どうしてこうなったのか。それは理解できる。

 主人公が、自分が、どうしてここまでして、こんな世界を守りたいなんてこと考えていたのかは、十二分に分かる。

 だが、かといって、どうして、ここまできて、自分なんだよ、と足がすくむ。

 彼は、雄叫びを上げながら、魔法の中心へと駆け抜けていった。だが、自分は、そうではない。勇気なんてこれっぽっちもなくても、生き写しの仲間を立ち去らせて、いよいよ独りで、立ち向かうこともできない。

 なんでこうなったんだ。

 どうして自分なんだよ、と。

 結末は分かっていて、どうにかねじ曲げようとした。この手元にある、ヒロインの形見がその証拠だ。だがこの通り、勇者は勇気をもってこの脅威に立ち向かい、散ることは確定だったらしい。

 ここへ来ることになったきっかけは、何もかも自然だった。敵がいて、仲間がいて、正義であれと勇者は持ち上げられていった。

 どうしてここに、独りで立たなければならないのか。

 なぜ散るのは自分だけなのか。

 手に汗握る覚悟のシーンは、こんなあっけない、虚しいものなのか。

 風が激しくなぶってくる。悲鳴のようなものが耳朶に突き刺さる。

 それでも踏み出せてしまう勇気は、ここにはない。

 さようなら、この世界。守ろうと思ったけれど、無理だったよ。


◆◆◆◆


 昨日のまま、進んでしまうとこうなるんでしょうねぇ。拒否はしたものの、結果が、結末が変わるわけではなかったようです。

 ものによっては、主人公が生還してハッピーエンド、というものですが、このゲームはそうでもなく、巻き込まれた自分はそれを強いられることになりました。


 あなたならどうしますか?

 そこまで旅してきた仲間に助力を乞いますか? 恐れを振り払い勇者の代役を演じますか? それとも語り継がれぬ英雄として消えますか?

 死というものは、恐れるものです。恐れるべきものです。これに自ら立ち向かうことを強いられる、というのは、あまりにも酷なことです。

 主人公は強いから、とかそういう理由でわいわいするのはいいですが、その犠牲者は、犠牲になるべき存在だったのでしょうか?


 さて、この話は、明日も続くでしょうか。お楽しみに。

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