[短編(オリ)]自己犠牲の果てにあるもの
誰かが、何かを思って描いた一冊が、終わりを迎えて閉じられた。
「ねぇ、最終的に主人公とか、ヒロインとかが犠牲になって終わる結末ってあるじゃない?」
ここ図書館だよ、と注意されるが、ここには私たち以外、誰もいないから、続ける。
「どうやったら、そんなかっこいいことできるんだろって、考えない?」
だってそれはファンタジーだから、と答えてくれるけれど、
「例えば、恐竜を絶滅させたっていう隕石が、空から落ちていて、それを壊すのにあなたが必要なんです、なんて言われたら?」
ないない、と手がひらひら。
「じゃあ……あなたの開発した強力な爆弾が、今すぐに必要で、でもそれはまだ未完成で、誰かが手動で爆発させないといけない、とかだったら?」
難しいことですなぁー、とにやつく。
「多分、開発した人は生かされるだろうけど、発破役は、死なないといけないでしょ? それに選ばれた人は、できるのかな?」
英雄になれるかの瀬戸際だね。
「もし、回りもろとも、なんていう自殺願望のある人が選ばれたら、もしかしたら、隕石を壊してくれないかもしれないよね」
絶対に選んだらダメだね。
「犠牲がないのが一番いいのは、確かでも、どうすることもできなくて、やむを得ない犠牲なんだって言われて、恨みから、壊さないなんてことを起こりうるし」
自分は死ぬのに、のうのうを喜ばれたら、嫌だね。
「作り話だから、できることだよね。本当の自己犠牲って。どうかな、次の読書会のトークテーマに」
いいんじゃないの、とへらへらとしている彼女は、ピンクと白に彩られた本を、楽しそうに読んでいた。
◆◆◆◆
こう、バッドエンドかどうかは別として、主人公、ヒロインが犠牲になるパターンは多いですよね。
仮に、この二人以外の仲間がそれになったとしても、幼馴染みとかでもない限りは、読者やプレイヤーは、そうなのか、とスルーしてしまうことでしょう。
主人公と、ヒロインの特権ですね。
しかし答え、結末の分かっている場所に転生してあれこれっていう話があるじゃないですか。
自分が犠牲になってハッピーエンド、という展開の待つような物語を舞台にすると、どうなってしまうのでしょうか。
そうであると認識していて、自己犠牲を回避して世界が消滅するのか。史実通りにことを運ぶようにして、最後の最後まで台本を読み上げるのか。あるいは、自己保身と世界の守る道を模索するのか。
複雑にはなると予想されますが、気になりませんか? どんな道筋を辿ることになるのか。自暴自棄になってしまうのか……。
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