[短編(妖魔)]陰から見守る
最近はどうだ、と尋ねれば、受診にくる人が増えてきたよ、と皺が深く刻まれる。
「また、変なやつが紛れてくるからしれねぇ。気を付けろよ」
もちろんだよ。幸のやつはいつものように、玄関から出ていった。
適当な妖怪を脅して、一応あいつを監視させているが、人通りも増えてきたせいか、見失ったという報告をもらうことが多くなった。
大抵は、幸は職場に到着しているため、見失ってもそこに行けば、無事であることは確認できる。しかし、仮にそこにいなかった場合、拐われたとかそんなことを考えてしまっていけない。
ここ数年は疫病のお陰で、人通りもまばらになって、見失うことは少なくなった。しかしこれが落ち着いてしまって、再び同じことが起こっている。
飛べるの監視役をつけるべきか? 幸いなことに、車通勤であるし、できなくはないだろう。問題は、いざ幸の身に何か起こったとき、迅速に動けるようなやつで、かつ気づかれないのがいい。
だが、妖怪たちも多種多様。正確に追うならば雑魚を使うのが一番いいが、対処できるようなやつが、果たしてその中にいるのか?
強い妖怪だと監視していることがバレるし、かといって弱いやつでもダメ。
どうしたらいいだろうか。あいつも、もう歳だしな……気に触ることはしたくねぇ。
◆◆◆◆
久しぶりの妖魔から、明下を見守ろうとする杉嵩でした。
どうでしょう、外を見てみて、人通りは増えていますでしょうか?
夏も近い空の下、じわりじわりと暑くなる中、時折戯れる乾いた風をシャツに通して涼んで。とても気持ちのいい日です。
来週には梅雨入りするんでしょうけれどねぇ。今のうちに、外回りのできることは、快晴のうちに終わらせましょう。
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