[短編(七日)]三ヶ日終わり

 ピュウと吹く風のなか、防寒対策に終始した装備の人物が一人。

 丁字の棒を分厚い手袋で握りしめ、太く見える脚のことなんて歯牙にもかけない様子で、ペースを崩さずに歩く。

「日向ぁ、こんなんじゃ、帰りには日が暮れちまうよ」

 人通りもほぼない場所にて、声がひとつ。

「うるさい。寒いから仕方ないじゃない。万芽がひとっ飛び行ってきたらいいのに」

 答えているのは紛れもなく重装備の彼女だ。

「その願い、叶えてあげたいもんだけどねぇ、父上が黙ってないよー? 休みだからこそ成果を見せろってねぇ」

 彼女を茶化している声の主は、どうやらその装備の懐から聞こえてきている。胸部のふくらみにしては大きく、時折、もぞもぞと蠢いてもいる。

「父上だって、任せてるくせに、なんで私ばっかり……はぁ」

 年明けのあいさつ回りを終えて帰ってきて、その翌々日にはこうして妖ものの調査に出るよう命じられたのだ。しかもここ数日冷え込んでいるのだから、流石に凍えてしまうと断りもした。だがこれも鍛練だと、二人は見送られたのだった。

「いやー、それにしても寒いねぇ。野良に戻ったら、下手したら凍え死んじまいそうだねぇ。家があるっていいもんだねぇ」

 何それ、と彼女の視線が険しくなる。と同時にマフラーが緩められて、胸部から転がり落ちたのは、猛禽である。

「あ! 日向! 寒いんだよぉ。流石に勘弁しとくれ!」

 地面に着地する前に体勢を立て直し、見上げる神に、

「やーだよ」

 もうそんな場所はないとマフラーを隙間なく巻きす。身震いする神のことなど放って、歩き始めた彼女を、猛禽は飛んで追いかけた。


◆◆◆◆


 冷え込みもひとしお、いかがお過ごしでしょうか。

 三ヶ日も終わり、仕事が始まったと鬱々としている方や、冬休みの宿題に奔走していたり学生さんもおられるのではないでしょうか。


 寒いから、部屋に引きこもっていたいところですが、仕事があるのだからどうしようもございません。もう長期連休が恋しいです。

 作業やら、遊びやら、いつやっても楽しいものはいつまでもやりたい。それで稼げるならばいざ知らず、そうでもないのが辛いところ。

 自営業は自営業で面倒なことが増えるばかりで、どうにもなりませんねぇ。

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