[短編(七日)]彼岸の迎えに怨霊退散5

「今年もきたねぇ、ハロウィン」

 うっすらと映りこむ自分自身になど興味を示さない猛禽が、窓にかかるカーテンを押し退けて夜の外を見下ろしていた。

 そこには大名行列ならぬ、魍魎行列が列をなしている。時折、瞳をぐぅと大きくしてうずうずと羽毛を逆立てるが、窓というしきりに阻まれて、じっと見送ってしまう他ない。

「何、万芽。もう私、そんな子供じゃないんだけど」

 その背後では、ノートを開いてカリカリとペンを走らせる少女。もうあとは寝るだけといわんばかりの服装だが、落とされている視線は真剣そのものだ。

「いやねぇ、怪異どもがのうのうと、子供や大人にまぎれてるのを見るのが、たまらなくてねぇ。どんな味なのかと思うと……」

 贅沢な食事を目の前にしたときの人間のような物言いに、今日は食べたでしょ、とそっけない。

「日向ぁ、昔はね、大変だったんだよ? あたしはそこらの餓鬼を食って生きてたんだけどね、そりゃあいつらも生きてるからさぁ、逃げるんだよ。ひもじい時は、唸る腹を抱えて眠ったんだよ」

 そう、と漢字を連ねる手は止まらない。

「おかげであんたたちの家と出会えたんだけどね。いやー、あのときは助かった」

 行列が途絶えたところで、猛禽は振り返ったかと思えば飛び立ち、止まり木へ。

「あんたにも出会えたしね……」

 丸くなっている背中を顧みながら、小さく、小さく呟いた。


◆◆◆◆


 選挙の日です。投票には行かれましたか?

 投票権をお持ちではない方もおられるでしょうが、今のうちに色々と知っておくのが良いでしょう。


 さて、ハロウィンといえば怪異ですね。非常に相性がいいのは分かってはいるのですが、安価なグルメ家の万芽は焼き鳥だけで十分ではあるのですが、外にいる怪異に舌鼓を打っていたようです。

 こう、地域の子供を集めて練り歩く、なんてイベントがありそうじゃないか。それを眺めていました。ああいうのは自治会で開催を決めて、予め打ち合わせしておいた家をまわるんでしょうね。そりゃ、急に来られてお菓子をせがまれても困りますからね。

 近年はどうなのでしょう? そういうことを面倒だから、としなくなってしまっているのでしょうか? そうなってしまっている場所は多そうですよね。

 けどそれくらいの騒音があった方が、なごむと思うんですけどねぇ。

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