[短編(オリ)]依州 継人
どうこう考えていても、仕方のないタイミングというのは、生きていて必ず、存在するものなんだろう。
しかし今は、命の危機であるというのに、あれこれとこうなった経緯を巡らせないと、現実を直視できないのもまた、事実である。
ではその現実、というのは、何かといえば。
俺は、実質身動きのとれない人質状態で、その生殺与奪の権利はこの手になくて、それを持つのは目の前の大きな背中の怪物が睨み付けている、これまた怪物。
多分守ってくれている方は、俺が殺されると負け、らしい。対して殺そうとしている方は、当人の背後にいる、同じく人質状態の、多分女の子。
だが俺と同じ状態であるにも関わらず、拘束されたままじっとこちらを睨み付けていて、先ほど守ってくれてるやつの放った槍っぽいものが脳天に向けて放たれても、最小限の動作で避けたあたり、この状況を理解している、ということなんだろう。
いや、俺はなんで巻き込まれたんだよ。この珍獣バトルに。
ことの発端は、そう、数時間前、帰宅途中。
「我のヨリシロになれ」
拐われて、薄暗い路地裏にて。
「さもなくば、殺す。命ばかりは惜しかろう?」
この怪物がそう言うのだ。もちろん断ろうとしたし、俺である理由も聞いた。だが時間がないの一点張り。
数分粘っても食い下がるために、なんのために、なのかは聞いた。
いわく、霊界一番の猛者を決める大会に出るに当たって、命を賭けるものが必要だという。
怪物は霊であり、死という概念が存在しない。だが血の気の多いものたちに賭け事は必須事項。ならば彼らは正者の命を賭けて勝負事をすることにしたのだ。
時折現れる行方不明者というのはこの大会の敗北者だそうで、俺が、偶然こいつに選ばれた、と。
なんだよ、その理不尽。意地でも選択肢を与えない怪物に折れて、遺書を書くまでもなく俺はここにいる。
幸いにも格上の怪物なのか、俺には指一本も通らない。現実離れしたこの光景を見ながら、優勝者のヨリシロに与えられる報酬を思い出す。
この世界にあるものならば、なんでも与えられる。地位も名誉も、金でもなんでも。歪に、怪物はにたりと笑った。
◆◆◆◆
という新ネタを思い付きました。
タイトルはヨリス ツグヒト。俺こと主人公の暫定の名前です。
まだまだ草案段階ですが、ありがちながら、いいコンビにできればいいなぁ、とか思ったり?
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