[創作論]アイテム収納

 この世には無限収納という特性を持つ道具があるらしい。

 なんでも、そのなかに持ち運びたいものを入れると、劣化はしない、容量は無限。そして何より、いくら重いものを入れたとしても、入れたら重さは変わらないという、商人ならば、垂涎もののグッズであることは間違いないだろう。

 何をするか、といえばもちろん商売だ。生鮮食品から鉱石まで、盗まれないように運んでしまえば、損を決してしないというのだから、まさしく夢物語だ。

「で、それを私に語ってどうするっての?」

 身振り手振りを繰り返す目の前の彼に向かって、グラスを回しながら女性は口にした。

「それが手に入りそうなんだ、と言ったら?」

 静かな店内で、一組の男女が食事をしていて、

「まさか。商人は夢見るものだけど、幻を追い求めて身を滅ぼすのは、論外」

 二人の将来について、と男が切り出したかと思えば、

「いやいや、貴族並みの財産が手にはいるんだぞ? 君はなにしたい?」

 などど目を輝かせているのだ。

 現実にそんなものがあるはずがない。つまらなさそうに目を細めている女性は、なら実物を見せてよ、と至極当然なことを要求する。

「それがダメなんだ。これは道具の精霊との契約で、誰かに見せちゃいけないんだよ。噂程度なら共有してもいいんだけれどさ」

 ますます、深いため息が吐かれる。

「いい大人が精霊とか言っちゃって……もういいわ。ごちそうさま」

 ゆっくりと立ち上がった女性は、おい、と呼び止める彼のことなど無視して、姿を消す。

「言うたであろう? これを手にした者は自滅する、と」

 ぽかんと口を開ける男の耳元で、誰かの声が囁いた。


◆◆◆


 よくあるネタですよね。四次元空間にものを収納してヒャッハーするお話。あくまでもゲームだからこその資源管理方法であって、これをネタにしてわいのわいのするのはどうなのかなぁ……。


 では実際のところ、どうなんでしょう?

 質量無視、保存期間無限だとしてもまず家具とか家とかって入るの? 入ったとしてどうやって取り出すの? 第一おまえがそこに入れば寝床も何もいらないんじゃんって。

 んで無限空間があるとすれば、手をいれた途端、それはその無限の中をさ迷うことになって、目的のものなんて見つかるはずがないし。え、検索機能? ただの空間にそんなものがあるのか? ステータスオープンってか!?


 無限収納だヒャッハーって喜んでいる商人を、どんどん破滅させていく方が面白そうな気がする……方法としては簡単で、夢ばかりを見てると幻滅させる。物価を無視して販売するから命を狙われる。仲間だと近づいてきたやつに盗まれる。実は契約式で、契約を奪われるとか、対価に売り上げの半分を奪われるとか。

 最終的に国賊として終われて、自身を収納してしまうとか。で、契約は切れることがないからそれはただの袋として扱われて、いずれ朽ちるとか。

 んー、そっちの方が面白そうだなぁ。くふふふ。

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