[創作論]無から始まる登場人物

 そこに一人の老人がいた。

 通りかかった主人公が、何を思ったか声をかけると、ちょうどいいベンチに老人は何用じゃ、と目を細めて睨み付けた。一瞬だけ怯む主人公だったが、彼は答えた。

 なんでも、ここらには初めて来たということで、雑貨屋はないかということだ。

 そんならそこじゃ、と持っていた杖の柄で、無愛想に示す先には一つの曲がり角。役に立つものなんてなんもないぞ、と一言添えるが、いいんです、と主人公はそちらへと行ってしまった。

 物好きなやつじゃ。老人はぼんやりとすることを再開する。

 その数時間後、主人公が再び老人の前に現れる。冷え込む前に、暗くなる前に帰ろうとしていたときのことだった。

 礼を言いつつ隣に並ぶ主人公に、かまいやせんよ、と歩を進める。いいものは見つかったかい、と問えば、まぁそれなりに、と答えるばかりだ。

 気をつけて帰るんじゃぞ、とほどなくして口にすれば、主人公もまた、お気をつけて、と別れるのだった。


◆◆◆◆


 やっぱ特異なキャラ付けよりも、こういう色がにじみ出てくるような書き方の方が好きですね。ステータス? スキル? いらんわそんなもん。

 強いていうなら書いただけお金がくるシステムと、書く力とネタがあればいいんだよ。


 さて、そういった特異要素がないとき、皆さんはどうやってキャラを立たせるでしょうか? そして私はできているのでしょうか(ルーネルとハインがちょっとぶれてる節があるのですが)

 正直、割りきって女性好きだとか、武器マニアとか、そういう気質をつけてしまえばいいのですが、ならそんな彼らには生きるための知恵はどうなっているのかと。

 ナンパして貢がせるのか、それとも仕事は真面目な建築業に携わっているのか。戦場跡に忍び込んで武器を手にいれて売り払うとか。付け方はなんでもありなんですよね。


 ではごく普通に生活している人たちはどう描写しますか? モブだから、はなしで。

 どうでしょう? 一般人として、名無しとして彼らは大根役者になれてるでしょうか? あたらないながらも、彼らとして生きてはいるでしょうか?

 そんな彼らは、主人公たちとどう接触するのでしょう? モブのいない世界に、主人公という影は落ちないのですから、たまにはそのあたりを練ってみるのはいかがでしょうか?

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