[創作論]職業・芸術家
芸術家、という職をご存じだろうか?
富豪に胡麻を擂って肖像画を描き、高値で買ってもらう? はたまた、店のインテリアに数枚、買ってもらう? 果てには美術館に寄贈したりも……なんてことがあるにはあるが、しがない私には夢物語に等しいものである。
私は芸術家をしている。売れない芸術家、というよりは、売ることができない芸術家、だ。なんせ、無名だし、肖像画なんて描きたくないし。
四人パーティを組んで今は街道を歩いている真っ最中。仲間にいくつか荷物を持ってもらいながら、移動中だ。なんのパーティかといえば、もちろん魔物狩りだ。
しかし自分は、戦力にはならない。戦いとなれば、後衛であるマジシャンよりもずっと後ろで魔物を模写している。倒してしまうと消えてしまうので、これがまた面倒なことだ。
遠くて見辛い。近くで見れない。けど戦うのは専門外。こればかりは双眼鏡を使いつつ仕上げるしかない。
ではなぜ戦力にならない自分が、芸術家がメンバーとして居るのか、と言われれば、資料に価値がつくためである。
例えば食材。食べられる獣や茸、あるいは食べれたもんじゃない木の実と葉っぱ。これらを絵に起こして儲けようというのが、このメンバーの目論見だ。魔物も特徴や有効打が分かれば、後輩の育成にも役に立つ。
紙は資料と引き換えに提供してもらい、売上の一部はこちらの懐に入るという、簡単な商売だ。
さ、魔物の群れのおでましだ。下がっていろ、と一人が前に出る。
◆◆◆◆
ゲームにおける職業システムって、現実的に考えると戦いにしか能力のない脳筋マンだし、なんでもかんでも戦いに結びつけるし、それって職じゃなくて戦闘スタイルじゃね? とか思いつつ。
そこに登場することのない職業を登場させて真面目に生活させると、どんなお話を作れるでしょうか?
ということで芸術家でした。
富豪や貴族の自画像は指折りの芸術家しか描けないと考えると、その弟子以外はどのように収入を得ているのでしょう?
やりたいことだとしても生活の保証ができないなら、別の生活手段を持っておかないといけない。そうなると技術を磨くことができない。そんな現代にも通用する環境のもと、やむを得ずバイトのような仕事で収入を得ているのかもしれません。
しかし脳筋たちについて行って、それに関するものを売ればいいと目をつけた芸術家は、分け前と報酬を約束して、同行することができるわけですね。
もちろん、そこには画材費がかかります。紙、筆を初めとして、顔料のバリエーションを揃えるなんて、当時は貴重品ですから、そうそうできることでもないでしょう。なら利益を生むという信用のもとお金を前借りして、ものを揃えることも必要になりますね。
仮に無双とかのオプションをつけるならば、画材無限だとか、画材が武器よりも強いとか? 飄々と軽装で歩いている芸術家が敵を軽くひねってデッサンにいそしむ、なんてのもどうでしょうか?
絵というのは昔から価値がありますからね。今はむしろ、溢れすぎている感じもありますが、視覚というものは、やはり、人間の優れた感覚なんですね。
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