[日記]異なるものに羨望を
差し出した手に、ポフ、と乗せられるのは、手。
人のそれではない持ち主は、ハッハッと舌を出してこちらを軽く見上げ、ぶんぶんと尻尾を振っている、わんこ。
手のひらを下げてから両手で頬の辺りをこねくりまわしてやる。軽く目を閉じてされるがまま、尻尾は勢いを増すばかり。
まるで幸せそうだなぁ、君は。
もっと、もっとと腹を見せてせがむ純粋なわんこに応じながら、もこもこふわふわと感触を楽しむ。全力で幸せアピールをするわんこを眺める。
もしこの体に、このような尻尾や肉球があれば、爪やマズルがあったならばどうなるのだろうか。いや、私の趣味的には彼らの肉体的特徴を反映した場合……考えても不毛なものだが、不思議と幻想にいる彼らに思いを馳せてしまう。
食事は何がメインか? 調理はするのか? 機会技術は発展しうるのか? 好まれない仕草とは、マナーとは。尻尾が邪魔だろうから、服はワンピースのタイプだろうか、穴が開けられているのか。もしかすると穴をあけるという発想がなく、後ろには切れ目が入っているのが一般的かもしれない。
お、もういいのか? 体勢を起こし、ハイテンション気味にどこかへと走り去るわんこを見送って、さて次はどこへいこうかとぶらつく。
それから数分、ぴたりと法枠に張り付いている鱗類が。じっとしているが、これは日光浴なのか、それとも休憩なのか。
ピントの合う位置ギリギリの距離で、じぃと動かない彼か彼女かを眺める。ちろりと覗く青い舌がかわいらしい。
身近にいる爬虫類といえば彼らだろう。ちょろちょろせかせかと壁を登り、茂みにこそこそと潜ってしまう。あるとき、歩道を横断する姿を見かけて、姿を消したところを覗き込んだら雑草に掴まりながらじっとしていたことが、あったっけ。
それにしても、彼らの尻尾のつけね。どうしてそこが気になるのか。いくら眺めていてもやはり分からない。
哺乳類とは異なる、背骨の延長線であることを明示する背中のライン。先にいくに従い細くなっていく先端。感情に乏しくとも、這って移動すると左右に揺れる。
うーん、どうしてそこに魅力を感じるのだろう。特段写真のコレクションがあるわけでもないが、不思議と視線が行ってしまう。
と、ようやくこちらに気づいたか、壁の上へと歩き始めた。器用に塀を登って、最後に尻尾を引き上げて姿を消す。
趣向、というものに首をかしげながら、そろそろ帰ろうかと歩を進めた。
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