春と衣服の鍔迫り合い

[短編(市場)]裏仕事

「黒犬には気をつけて、と注意しましたのに」

 ごめんなさい。受付担当様。

「しかし、当該依頼を黒犬が関わっていると見抜けなかったギルド側にも非はあります」

 私は今、狭い部屋の中で怒られている。

 何があったかと言えば、私は先日、物を輸送する依頼を引き受けた。その中身が、最近見つかった遺産である銃だと判明したのだ。

 剣槍と比較すると小さく強力なそれは、現時点では使用できるものは騎士が全てを管理することとなっている。しかしどこからか密輸したらしいそれを運搬し、騎士ではない届け先に運ぶ途中、それを落としてしまうミスをしてしまった。その際にこぼれ落ちた中身に驚いた私は、来た道を戻って彼女に申し出た。

 結果、それは黒犬、もとい市場の闇で生きる者たちに流れていると推測されたのだ。そして、このミスによって銃の存在を知った私の身に危険が及ぶとして、進退について問われている。

「とりあえずは、あなたの身の安全を確保するため、しばらくは謹慎してください。当面の生活は大丈夫ですか?」

 微妙だ。言語教育の頃のような極貧生活をすればギリギリ大丈夫かと思うが、減るばかりの懐事情に不安を隠しは切れない。

「必要とあらば、外に出ず稼げる依頼を提供します。もちろん、融資を希望することもできますが、これ以上は、と以前、おっしゃってましたよね?」

 折角の提案、受け入れるしかないよね……。


◆◆◆◆


 裏のある仕事。少なからず紛れ込んでいることでしょう。それは単なる個人的なものから、組織的な、社会的なものもあることでしょう。

 仮に斡旋所で問題なしと判断された依頼が、そんなものを抱えていた場合、どのような対応などが予想されるでしょうか?


 依頼そのものの失効は当然のことながら、それを受けてしまっていた受注者の身の安全を守る必要があるかと思います。報復に来る輩はいないとも限らないし、もしかすると組織への勧誘するかもしれない。ここに法があれば受注者を庇護する義務などが定められることでしょうが、残念ながらこういうファンタジーの発展途上の法ではまかないきれないことでしょう。

 この場合、自己責任という一言で依頼の提供を打ち切る可能性も。

 ああ、ここから始める復讐劇なんてものもいいかもしれませんね。

 高ランク冒険者が受けた依頼をこなした結果、反権力組織に加担したとして登録除名。名声を一瞬で失った主人公はこれまでのツテを頼りにしつつ、自分を貶めた組織を追い詰めるために活動を開始する。

 こうなると、バックボーンを詰めておく必要がありそうですね……ネタのひとつとしてストックしておきましょうか。 

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