[短編(混合)]火之神様もこきつかう

 だらだら。この言葉がこの上なくふさわしい。

 炬燵の半身浴を味わいぐうぐうと眠る赤と青の二人、その反対側では黒の和装の妖怪に、隣には緑の恋人に身体を預ける茶。

 ただ、のんびりと過ごす。最低限の家事をこなす以外は、起きて、食べて、寝てを繰り返す。これを食っちゃ寝、あるいはこの時分に限り寝正月、というのだが、彼らはまさしく怠惰をむさぼっていた。

 静かな時間。間もなく就寝にうってつけの時間となるというのに、彼らはまだまだくつろぐ。

 そのとき、ピシャリと杉嵩の方向のふすまが開く。

「台所借りたよー。ほれ、食え食えー」

 姿を現したのは腰まで長い黒髪の女性と、大型犬。ずかずかと入り込んだ彼女たちは天板に、お菓子が雑にのせられた盆を乱暴に置く。

 皺だらけの服で残りの一角に入り込み、最初の一口をものにする魔女。さらに隣で首を伸ばして数枚のクッキーを一度にゲットした獣はバリバリと器用に噛み砕く。

「さっき食ったばっかなんだが」

 彼女の正面にいる彼が冷たく盆を見つめるものの、ひらひらと手を振ってデザートデザート、と笑う。

「デザートは別腹っていうでしょー? ほら、食え。頑固な傭兵」

 口は止まっても手は止まらない魔女。口は動くが声はない獣。どちらも持ち合わせていないその他複数名。

 残り半分近くになって、いざ手を伸ばしてみたギル。だが手が運んできた大きめのマフィンに、眉を潜めるばかりだ。

「シェーシャ、欲しいか?」

 だがすでに触れたもの。戻すわけにもいかないと、隣で鼻を利かせている彼女に問えば、欲しい、との答えが。天板の上で紙を剥がした彼は、そっとシェーシャの目の前にマフィンを持っていく。

 まるっと、大きな口で、一口。

 口のなかで転がしているのだろう様を眺めながら、彼は指についた脂を嘗めとるに止まった。

「このイチャラブカップルめ」

 その様を眺め、にやりとする魔女と

「おまえもさっさと相手を見つけろ」

 もそもそと口を動かす獣は、歯も磨かずにゆっくりと横になった。


◆◆◆◆


 魔女は神様の休暇である正月であってもお菓子を作るとか。


 彼女の話も書きたいなー。お菓子の魔女って聞いて、多くはヘンゼルとグレーテルを思い出すことでしょうが、彼女はお菓子を作って愛犬(魔物)にひたすら食べさせるだけの平和な魔法使いです。

 魔王討伐より、こっちの方を先に済ませた方が良かったのかも……とかおもいましたが、後悔先に立たず。

 今のうちにネタを粛々と貯めておくのが、良さそうですねぇ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る