[短編(オリ)]荒廃世界の転生生活3
そのドラゴンは、見るからに傷つき、弱っているようでした。
長い首の側面にはただれた、火傷らしい痕。おそらく斬られたのだろう、左右非対称な指。皮膜には矢が刺さっていて、点々と破けている。
誰がこんなことを、と思いましたが、少なくとも自傷行為でああはならないことでしょう。誰かに狙われたことは確実です。
鋭く小さな双眸はこちらから逸らされることなく、移動を始めました。柔らかい絨毯を踏み潰しながら、一定の距離を保ちつつ、よたよたと。
やがてうすら寒い穴ぐらにたどり着いたドラゴンは、ようやくこちらから視線を逸らして、姿を消しました。彼、もしくは彼女の巣穴なのでしょうか。だとしたら、警戒するのも当然ですし、タイミングが悪ければ殺されていたかもしれません。
それはそれで幸運でした。
しかしその幸運も、あたりを見渡せば草原ばかり。どこかへ歩き続けてみてもよかったですが、誰の姿も見えないなら、目的地も決めようがありません。せめて道があれば、人を待つこともできるのでしょう。
それに、空想上最強と呼ばれるドラゴンを負傷させる何かがいる。人であるならいいですが、そうでない可能性も否定できません。人であっても通じないこともあり得ました。
なので、あえて振り返ってみました。草原の丘にぽっかりと空いた洞窟へと戻ります。
グウゥゥ、グゥと先ほどまで聞こえてこなかったうなり声が聞こえました。イビキのようにも聞こえましたが、明らかに喉を震わせている音です。
進んでいけば、自分の倒れていたあたりで丸くなっているドラゴンが、じっとこちらを睨み付けいる姿がありました。しかし首をもたげることはありません。
一歩、近づくと、唸りが止みました。
もう一歩踏み込めば、先より大きい地響きのようなものが。
半歩下がれば、また止みます。
ここらへんならいい、ということでしょうか。都合よく解釈して、座り込みます。
彼、もしくは彼女は目を細めて数分、ついには目を閉じました。傷だらけなのですから、疲れていたのでしょう。
神様がおっしゃっていた
あちらの世界だったら、きっとありえない、と警察に連絡していたことでしょう。そういえば携帯電話とかもありませんね。あっても使えないんじゃ意味ないですけれどね。
さて、ドラゴンさんと仲良くなるには、どうしたらよいのでしょうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます