[短編]その身崩して、ある者2

 いつも済まないな、だなんて。喉が腐敗してないときに、その人が言った言葉。大丈夫よ、と答えた。

 人として形を保ててる。それだけで羨ましいのだから。腐敗病なんて、認知されているだけ、マシなんじゃないかって、ずっと思ってる。

 ……正直、記者さんの前に出たら、それどころじゃなくなると思う。だから邪魔しちゃいけないから、と二人を置いて、姿を隠しながら家事にいそしんでいる。

 髪を全て結い上げて、細長い指ではたきを握り、まずは埃を落とす作業から。そのまま雑巾をかけ終わったら、夕食の用意にちょうどいい時間だろうか。

 黙々と、二人の邪魔をしないように掃除を始めてしばらく、記者の人が声を張り上げた。静かに行われている会話に、無意識に耳をそばだてていたことに気づかれたのか。

「奥さまは、旦那様をどう思われていますか?」

 いや、足音が聞こえたんだろう。なら、まずは呼びつけてくれればよかったのに。ひとまず、嘘をついた。あなたは、あなたであることに変わりはないから、と。

 見られているってどんな気持ちなんだろう。好機の眼差しで、じろじろと。そこに自分を据えてみると……だめ。うなじがざわつく。

 あの人が腐食病になったから、この身体はこうなってしまったのだろうか。それとも、無関係なのか。ずっと悩んでいても、らちがあかないのは自明のこと。

 もしかしたら、初めからこうだったのかもしれない。蝶が芋虫から成るように、当たり前だと思っていた姿は幼虫だったのかもしれない。

 病。どこかに仲間がいると分かれば、気が楽なのに。

 きれいだよ。

 腐臭のする寝床で、夫は静かに言ったこと。それだけがここでの生活を繋いでる。


◆◆◆◆


 昨日500話だったよ!

 だから適当な話をするね!


 500、ですか。長いような短いような。でも半年前で一周年ですもんね。早いものです。つれづれ描いてはや1.5年、その道、3日にしてならずや、なんて。

 さて、皆さんは継続というものはできておりますでしょうか? エターナっていないでしょうか。

 これはいつ終わるんでしょうねぇ。どうせなら、切りよく終わりたいものですが。

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