[日記]面を上げて、手足を振って

 ふと気がつく。

 いつからだったっけ、顔を上げるようになったのは。

 たしか、生活環境が変わったとき。うつむきがちだったことを止めて、顔を上げよう、前を向こうと、どこかで思ったのだ。

 変わらぬ道を見つめて歩くより、同じ道を景色として眺めて歩くことを選んだ。

 アスファルトに溜まる、白く光を弾く水溜まりも、あそこを通れば濡れないだろうと足を踏み入れる。

 眠くとも、無意識に背を伸ばして、軽く空を見上げる。曇り空も、晴れの日も。雨の日だけは、少し俯かなければ危ないが。

 それがきっかけかは分からないが、それきり胸の内が軽くなった気がする。悩むことも、不満なこともある。だが歩いているうちに、いいことを手繰り寄せられている気がして、自然と足が弾む。

 妖魔もその頃にごりごりと進めることができた、だろうか? 退屈なテストと勉強を繰り返して、その合間に白蛇がぬらりと現れる。


 少しだけ顎を引いて、前を向くだけ。たったそれだけ。それだけなのに、それ以来は、鈍行であろうとも進めている気がする。

 なぜなのだろうか。

 きっと学者さんが調べていることだろうが、別にいい。知ったとして、前を向くことは変わらないのだ。


◆◆◆◆


 普段歩くとき、視線は、姿勢は、どうしていますか? ぼんやりと、しかししっかりと、私は顔を上げて歩いてます。

 ふと思い出しましてね。学生時代の半分くらいは、アスファルトの砂利の数を数えてたなぁ、って。不満をぼやきながら歩いてたなぁって。

 どこかで区切りがついて、前を向くようになりました。切っ掛けは、思い出せませんが。

 事故も怖いですし、外を歩くときは前を向きませんか?

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