[短編(オリ)]ConnectMyLife3
※暗い雰囲気のお話
それは帰ってきた。重い体をたくましい二本の脚と太い尾で支え、よた、よたと首輪を引かれ、眩しく輝く外の世界から帰ってきた。
第3被験体。屋外試験会場から、ゆらゆらと。
それは見えているのか、あるいは無気力なのか、歩く度に重そうに頭が揺れる。そして、引いていた者が立ち止まると一歩遅れて、立ち止まる。
「第3被験体、個体名XXX、指揮者XXX、ただいま戻りました!」
引率者が佇まいを正し、報告する。誰もいない、無駄に広い空間には声がこだますばかりで、これに応えたのは人ではなく、空間だった。ガコンと床が揺れたかと思うと、壁が、否、床が下方向へ静かに動き始めた。二人は無言で、停止している。
気がつくと二人は、さらに広い空間の中の、透明な檻に閉じ込められていた。床が制止したことを認めた指揮者は首輪を二回引いた。巨躯がゆっくりと床に伏せる。
すると檻の外の壁から、指揮者と似たような服装をした数人の人が現れる。1人は距離をおいてたたずみ、他5人が、檻の前で手にしていたスケッチブックをめくる。
透明な牢獄に示されたのは、問いかけと選択肢だった。私の名前は? 被験体から見て1番左の黒文字。
他のそれから他のスケッチブックを一つずつ眺め、最終的に、右から2つ目を見つめた。
君の名前は? 真ん中。
この式の答えは? 左から2番目。
今は何年? 真ん中。
昨日の食事は? 1番右。
今日の討伐数は? 右から2番目。
次々に答えていくなかで、被験体の動きが止まる。
君の指揮者の名前は?
目の前にいる者の名。ずるりと尻尾を動かしてから、ふっと視線を逸らした。
「8、か。惜しいね。まだまだ大丈夫そうだ。指揮者君、今日もお疲れ様。休みたまえ」
はい、と鋭く答えた指揮者は首輪を手放し、彼らのもとへと向かった。すると檻は一人分の穴を開けて、外へと誘った。
ぞろぞろとこの空間から人が去っていく。指揮者はふと振り返るが、それも一瞬。
元に戻った檻の中で、ペタン、ペタンと被験体の尻尾が床を打ち付けていた。
◆◆◆◆
今回のテーマは「理性」でした。
理性の定義も難しいですけどね。
ある研究所の生体改造兵器は、ベースとなった生物の理性を維持するという画期的なもので、この理性はどれほど持つのか、という実験の様子でした。
記憶と理性は別に語られるべきなのか、それとも理性が記憶を引き出すのか。そこは悩みましたが、思い付く対被験体の質問はこんなものでした。
まぁ、文字を読めている、という点でOKかもしれませんけどねぇ。
そしてこれが生体兵器として運用され始めると同時に、その廃棄規定とかも制定される、とかを考えると、胸が高鳴るのは私の性癖というやつでしょうか?
さて、次回、Connec My Lifeは来週にて暫定最終回となります。
お楽しみに。
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