[日記]水族館へ行ってきました

 ゴオォォォ……ゴオォォォ……

 全く規則正しくない波の音。行きと帰りが正面から激突して、バシャンと音をたてる。運命的でもない出会いがあったとしても、彼らは突き進み、岸へと押し寄せては、帰っていく。

 今日は海、もとい、海に面している水族館へやってきた。ここである理由は特にない。ただ、思い付きで行動する訓練がてら、やってきた。

 水族館なんていつぶりだろうか? 少なくとも中学以降は覚えがない。動物園と迷ったが、海も見たいと思い、こっちになった。

 まずは入り口すぐにあった場所で昼食だ。イクラと鮭のほぐし身の乗ったご飯。みそしる付き。わさび醤油を少しだけ回しいれて、頂きます。

 少し冷たいご飯を残念に思いながら、脇のオーシャンビューをちらちらと眺めながらいただく。日曜日だから子供が多く、微笑ましく感じる。

 食べてから少し休憩して、入場券を購入する。大人一人だと流石に高い。しかしこれからもこういう場所は続いてほしいと思えば、大した額ではないのかもしれない。

 データに価値を見いだしているからこそ、生物の珍妙さに驚くことも必要だ。

 まずは円柱の水曜をぐるぐると泳ぐ小魚たち。透明な稚魚、腹ヒレと背ビレが糸のようにたなびいている魚、口が上向きの目の大きい魚。

 そこを抜けると下へと続く闇をたたえる緩やかな坂道。ランプがこっちだよと客を誘っている。

 薄暗い中にある水槽を進むと、ここで初めての巨大水槽と合間見える。群れなす小魚が光を反射し、水中に水流を描いている。それを眺めるかのように平たい魚が遊泳している。

 ふと視界を外に向けると、胸をガラスにぴったりと張り付けてゆらゆらとしている者もいる。平和だ。

 さらに奥へ歩を進めれば、水槽を正面にたどり着く。

 ゆらゆら。すいすい。ぷかぷか。

 底の方で動かない個体もいるが、休憩中なのだろうか。

 そろそろ進もう。間もなく開催予定のショーまでに一通り見ておきたい。

 次は深海ゾーン。赤くぼんやりと照らされている水槽を眺めながら進む。甲殻類や節足動物、クラゲをみとめながら、進む。

 次にであったのは鮫である。狭い水槽を悠々と躍りながら、ずいぶんと長い尾で水を叩いている。食事でなければこんなに穏やかなのだろうか。

 そこを抜ければ生体の資料ゾーン、およびカフェテリアゾーン。時間も惜しいので先を急ぐ。

 泳ぐ。泳ぐ。くるくると回りながら、ぶつからないように、ぐるぐると。

 交わることなどあり得ない世界は、のんびりとしている。

「現在、立ち見ーのみとなっておりまーす。ショーの残りの席は、立ち見となっておりまーす」

 おっと、のんびりとしているわけにはいかない。声のする方へと向かい、会場に入ることに成功する。窓越しの海を背景とした、室内のショールームの真ん中すみっこに立ち、時間を待つ。

 やがて、開演した。イルカとアシカと飼育員たちの、ポップな音楽と水飛沫と、小道具の物語。かけあいと拍手のやりとりは、あっという間に過ぎていく。

 演目が終了し、会場から出てみると、どうやら館内の終着点はここらしい。邪魔にならぬところで時計を開いてみると、帰りのバスまで時間はまだまだある。もう一周して、お土産を見て回ってみるか。

 一周目では気づかなかった海に生きる鳥や、哺乳類を見て、館内の土産物を眺めてみる。相変わらず、欲しい、という感情は湧かないのだが、置物や、ぬいぐるみばかりだ。かわいらしさをに振るか、かっこよさに振るかを分けており、なるほど、これは記念になるだろうな、と眺めていた。

 結局、土産は買わず、外に出た。そして残りの時間は、海を眺めることにした。

 変わらない不規則な音。少し近づいてみれば、霧雨のような飛沫が襲いかかってくる。水平線の彼方には雲だけがぷかぷかと漂っていて、やはり世界なんてものはでかすぎる、と私は荒れ狂う風に息をつくのだった。

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