[短編(市場)]Present For You epsode2

 彼が次に訪れたのは、市場の草原への出入口。きょろきょろと者々の顔を見て回っていたが、いつもは出店のある空間にいた人物二人を見つける。

 師匠、と声をかけた弟子に、くるりと振り返った彼らは、片手を挙げて応じた。

「おぅ、ヴルムの青年。元気か」

 明るく笑う男の土竜、バーンはギルを輪に加えた。

「ああ、特に何事もなく。店じゃなくて、こんなとこに呼び出して悪いな」

 ギルが手にしていた硬貨の詰まった袋を見せると、女の土竜、フィレアがそれを奪い取る。驚くこともしないギルは、中身を確認する彼女を横目に、腰に下げていた袋に手を当てる。

「で、なんで店じゃなく、ここに呼び出したんだ、青年。人の少ない場所の方が取引は楽だろう?」

 不思議そうな彼に、宝石店の主が、悩みを打ち明ける。


 土竜三人が客入りの少ない店へと入り、各々が好きなものを注文する。

 椅子のないテーブルを囲みながら、フィレアが口にした。

「つまり、あの子にそれを渡したいけれど、受け取ってくれない。どうしたらいいのか、分からない、と」

 ああ。いたって真剣な眼差しは、フィレアに向けられている。バーンはどこか、楽しそうだ。

「いいなぁ、青年は。そうやって悩めるというのは、滑落しないよう山を登るようなものだ」

 用意されていた水を一口。

「どうすれば安全か、気を付けることはできるだろうが、落ちないとは限らないのだぞ?」

 堂々と語る師に、テーブルを爪で叩く青年は視線を送る。

「ギル、分かってるだろうけど、こいつの言うことは半分聞いとけばいいからね? 何言ってるか意味分からないし」

 そうだっけな、と呟くギルに、ひどいぞ、とバーンは抗議する。

 ふと、ギルがテーブルの上に置かれた二人の右手に目をやる。手首に、おそらく同じ模様の施されている銀に輝く腕輪がはまっている。

「師匠、そんな腕輪、してたか?」

 当然の質問に、あぁ、とフィレアがよく見えるように差し出す。

「わたしがあげた。両腕につけるものらしかったんだけどね」

 誰も、市場への客人二人の尾がわずかに大きく振れていることなど気づいていない。


◆◆◆◆


 悩めるギルの贈り物作戦その2


 フィレアとバーン、コンビに見えて準夫婦設定。なぜかと言えば、特に深い理由もなく結ばれました。当人たちに自覚はない感じで。

 贈り物といえば、おみやげもこれに該当しますよね。おみやげを購入して、ちょっと座りながら書いています。

 けど、やっぱり絆というか、そういうのって唯一の贈り物の方が関係性が深く見れていいですよね。じっくりと観察していたい。

 一方で、おみやげって、数だけはあるお菓子の詰め合わせが多いわけですし。あっさりと渡して終わってしまうのが残念ですよね。

 ギフト券なんてものもありますが、受け取ったことがないのでなんとも言えないですね。贈り物には変わらないですが。

 さて、ギルの最高傑作はシェーシャのもとへと届くのか? エピソード3で完結です。お楽しみに?

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